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第7話 万能翻訳 再び

「春野さーん」

「はいはい 清水さん どうしました? 」


金貨草と満月草を納めたあとのいつものけだるい昼下がり。

俺は春野さんの手をがしっとつかんだ。


「春野さん、先生紹介してください」

「なんです、突然」


春野さんは 俺の手を振り払った。


「先日の話の貴族なまりを覚えたいんです。んで貴族相手の商会に就職したいんです」

「それはいい心がけですね。ただ、言葉の先生、高いですよ」

「高い…金貨草の稼ぎでは無理? 」

「無理ですね」


しょんぼりとした俺に春野さんはにっこりと笑った。


「でも、私が教えられますよ。正式ではないですけども、私、貴族なまり話せますから」

「おおー ありがたい。ってか 春野さん、貴族出身? 」

「まさか。違いますよ。ここで働いていれば貴族とも接触しますから必要なんですよ」

「へー ちょっとしゃべってみてよ」


コホンと咳をして春野さんはしゃべり始めた


「初めまして。春野一郎です。」

「違いが分かりません!」

「いつものは 初めまして。春野一郎です。で、貴族なまりだと、初めまして。春野一郎です」

「同じに聞こえます」

「全然違うでしょ! 」


俺はいやな予感がして春野さんの口元をじっと見つめた。


「もう一回、いつものと貴族なまりお願いします」

初めまして(平民なまり)。春野一郎です

 初めまして(貴族なまり)。春野一郎です」


口元の動きが違うぅぅ

万能翻訳(ポンコツ)うぅぅぅ


「春野さん 俺も言ってみます。後について言うので、『初めまして。清水要です』って言ってください」

「初めまして。清水要です はい、同じように言ってみて」

「初めまして。清水要です」

「うーん 平民なまりのままですねぇ」


俺は目をつむって精神統一した。

貴族なまり 貴族なまり 貴族なまり 繰り返し自分に言い聞かせる。

かっと目を開いて言い放つ。


「初めまして。清水要です」


パチパチと春野さんが拍手した。


「できてます。清水さん」


おおー でかした万能(やれば)翻訳(できる子)


「わかったような気がします」

「それもできてます。すごいです清水さん」


ひとしきり春野さんと会話して 合格をもらって冒険者ギルド(ハローワーク)を後にした。

帰る途中で おいしそうなリンゴを売っている露店があったのでそこに寄る。

鑑定を使って一番おいしいリンゴを選ぶ


「おばちゃーん これ頂戴」


びしっとおばちゃんが固まった。

「は、はい ただいま これでごじゃいますね」


ぎくしゃくとした動きのおばちゃん

あ…

万能翻訳(ポンコツ)

平民なまり 平民なまり 平民なまり 呪文のようにつぶやく


「おばちゃん 貴族なまり 習ったんで使ってみたけどどうよ」


おばちゃんの体から力が抜けた。


「やだよ あんた びっくりさせないでよ。てっきりお貴族さまかと思って緊張しちゃったよ」

「ごめん。ごめん。でも上手だったでしょ」

「ああ。お貴族さま相手の店で働けるね」

「そうなったらいいなぁ」

「がんばりな」


リンゴを買って 歩き出す。


翻訳といい、鑑定といい、ポンコツだけれど、俺の異世界生活は まだまだこれからだ!





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