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第12話 公開展示日のざわめき
北辺収蔵庫での公開展示日。雪国の町から集まった人々が、修復途中の絵まで熱心に見上げていた。
私はあえて母の下絵帳や裏書の写しも並べた。正面の美しさだけではなく、絵がどこから来て、誰の手で守られてきたかを見てもらうためだ。
「この百合紋、王都で見た婚礼案内の紋と違う」
客の一人が呟く。ざわめきが広がったその時、展示台の脚元で鋭い音がした。何者かが小刀で修復中の額布を裂こうとしていたのだ。
だが一歩早く、ルーファスが犯人の手首を掴んでいた。
「ここは市場ではない。証拠を切り売りする場でもない」
捕まったのは王都から来た下働きで、懐にはバルテルの署名入り通行証が入っていた。ヘルミーネがそれを押収し、淡々と告げる。
「局の監査に切り替えます」
私は割かれかけた布を見つめた。正面の絵だけを見せたい側は、裏面の話が出ることに焦っている。その事実自体が、新しい証拠だった。
展示を終えたあと、ルーファスが裂け目の入った布を私へ渡す。
「怖かったか」
「少しだけ」
「なら次は、私のそばで説明しろ」
それは命令のようでいて、妙に温かかった。




