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村人だけど、わけあって追放令嬢を破滅から救うにはどうしたらいいか真剣に奔走することになった  作者: 礼(ゆき)
10万字版

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25/49

24,14歳

 王太子の言う通り、婚約の知らせはなかった。

 それだけではとどまらず、王太子や大臣家の令嬢との交遊も深まった。

 交互に互いの屋敷に呼び合い会うようになった。

 大臣家に呼ばれて、談笑する。招いては、庭でくつろぐ。

 付き添いのラルフも交えて、4人で時間を過ごす。

 それが至極当然となるのに時間はかからなかった。

 

 フェリシアから聞いていた未来とはかけ離れている。

 幼馴染に、二人の友達。屋敷内だけだった世界が徐々に広がっていく。


 笑いの絶えない、あたたかな人々に囲まれた日々が繰り返される。

 本当に殺される未来がくるのだろうか。

 疑いたくなる。

 こんな日々がずっと続くといい。

 このまま楽しく学園生活まですすめばいいのに。

 淡い期待を引き裂く記憶がよみがえる。


 レオンとしての最期の記憶。

 

 俺は長剣で切られた。

 雨にうたれ、血はとめどなく流れ出た。地面に伏したまま、動けなかった。

 フィーは投げられたナイフに倒れ、長剣でとどめを刺される。近づいた男はためらいなく、胴と首を切り離した。

 男の手に髪を握られ持ち去られていくフェリシアの生首。

 黒いフードを被った男が、俺の横を通り過ぎた時、生気を失った蒼白な顔面を見たのが最期。 


 あの記憶だけは今も生々しい。

 意図が分からない出来事。その背景がとらえられない以上、未来は形を変えて襲ってくるかもしれない。

 

 不安と恐怖を記憶の片隅に宿しながら時を数える。

 日常は穏やかで、未来の恐れこそ幻のように感じさせる。

 月日だけがいたずらに経過した。

 フェリシアの肉体は大人への成長を始めた。

 身長が伸びた。

 体つきが女性らしい丸みを帯びる。

 幼さが消え、胸も膨らんだ。

 アリアーナが好んで形容する、妖精のような雰囲気に、あでやかさが添えられる。

 柔らかく、線が細い小柄な女性へと羽化した。

 変化を来るものが来たと、案外すんなりと受け止めている自分に驚く。

 急に女性になったわけではなく、幼少期から徐々に育っていったからかもしれない。

 

 フェリシアとして産まれ生きて14年目を迎えた。


                  ☆


 城下町の中心にある広場。

 二本の大道が伸びている。

 一本は王城へ通じる一本道。

 以前夜会へと呼ばれた王城が美しい。

 もう一本は城下外へ出る門へ向かう一本道。

 数本の行動が四方に通じており、市民生活の重要な公道になっている。

 王城へ近い側に貴族や商家の者が、門へ近い方に平民が暮らしている。


 広場に構える一角のカフェ。

 晴れの日には、店外にテーブル席を並べる。

 行きかう人々を眺めながら、一番はじにあるテーブル席に、俺はラルフと座っていた。


 手元のグラスを両手で包み込む。

 氷が入ったはちみつ入りのレモン水。中にベリーが沈殿しており、それをすくって食べながら飲む。商家の娘さんたちに、肌にもいいし甘酸っぱくておいしいと流行っている飲み物。

「おいしいね」


「それは、よかったですね」

 愛想笑い。

「うん」

 ラルフは定番の紅茶。

 この四年間で、彼の身長はぐっと伸びた。

 少し抜かされたわね、と笑っている間に、みるみる見上げるほどとなった。

 細くしなやかに逞しく。立派な青年へと成長しつつある。


 おいていかれた。

 そんな風に思うこともあった。

 フェリシアの身長からしたら仕方ないことでも、ずるいとふてくされたくなる。

 元のレオンだったら、ラルフより大きかったろうか。同じくらいだろうか。


 二人掛けの小さなテーブル席は今のラルフには小さい。 

 俺がテーブルの下に足を投げ出せばラルフの長い脚は収まる場所がない。

 テーブルに対し椅子を横向きに置く。体を広場側に向け、組んだ足を無造作に投げ出している。

 一緒にいても、向かい合っても、ラルフの横顔を眺める距離感は変わらない。


 幼馴染で、友達で。世話役で、勉強仲間。執事。彼を評する言葉はたくさんある。

 好んで使うのは、最高の友達。


 ラルフの横顔を凝視していたからか。

 真横からそっと伸ばされた腕に気付かなかった。

「わっ!」

 背後から抱きすくめられる。

 肩に感じる柔らかな感触。

「お待たせしてごめんなさいね」

 耳の後ろからそっとささやく声。

 振り払うように振り向く。真正面にアリアーナの顔。

「アナ、驚かせないで」


「驚いてくれてうれしいわ。

 私、フィーの慌てふためく姿を見たかったのですもの」

 涼やかな流し目。

 色気はすでに大人のよう。


「人の婚約者によくそんな堂々とできるな」

 呆れて横に立つのは、王太子。

 グレイの髪色。使用人に頼み、髪を分けてもらい作ったかつらだ。

「まだ、決まってなくてよ。

 図々しいわね」

「っだああ!」

 下を見ると、彼の片足にアナが履く靴の踵が乗っていた。。


 こちらの関係も、変わらず4年間この調子だ。 

 

最後まで、お読みいただきありがとうございます。


続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、


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