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07 光国と唐衣

挿絵(By みてみん)


 同じ頃、大宅の太郎光国という武士が、京都の知り合いの所に向かって旅をしていた。

 ところが途中、滋賀の山奥で道に迷ってしまう。

 そこで光国は、新しい墓を掘り返している老婆を見かける。

 老婆は、暴いた墓から出た女の髪を切った。

 そして、経帷子を脱がせ、棺桶の底の鏡を奪い取った。

 「おおかた、死人の持ち物を売り飛ばして金にでもするつもりだろう」

 光国は、そう考え、酷いことだと思いつつ、その場を離れた。


 少し行くと、古い寺があった。

 今夜中に山を越えられるとも思えないので、光国は、そこに泊めてもらうことにした。

 そして玄関先で声を上げると、なんと、先ほど墓泥棒していた老婆が現れた。

 老婆は、こんな荒屋でよかったらどうぞ、と言い光国を家に上げる。

 光国は、油断できないと思いつつ、泊まることにする。


 しばらくすると光国は、外で何やら物音がするのに気づく。

 そっと外を覗くと、そこいたのは老熊だった。

 老熊は、金になりそうな女をさらって来たと言う。

 唐衣のことだった。

 これを聞いた老婆は言う。

 「ちょうど良い所に来た。こっちも金になりそうな男が転がり込んで来た。今晩襲って金を奪うから手伝え」

 これを聞いた光国は、逃げずに、逆に待ち構えて締め上げてやろうと企む。


 そして深夜、光国が寝たふりをしていると、そこへ包丁を持った老婆が忍び込んで来る。

 待ち構えていた光国は、老婆の襟首を掴んで投げ飛ばした。

 すると老婆の体は、壁を打ち破って庭に転がった。

 光国が外に飛び出すと、そこに老熊が襲いかかってきた。

 光国は、身をかわして老熊を蹴り飛ばした。

 すると老熊は井戸に落ちた。

 包丁を持った老婆は、懲りずに光国に襲いかかる。

 光国は、近くにあった地蔵菩薩の石仏を両手に持つと、それを老婆に向かって叩きつけた。

 老婆の頭は石仏に潰されて即死した。

 振り返ると、井戸から這い上がった老熊が慌てて逃げていく。


 そこで光国は、老熊がさらってきたという女のことを思い出す。

 家の中を探すと縄で縛られた女を見つけた。

 そして、その顔をよく見る。

 「そなた、藤六殿の御息女ではないか?」

 なんと、光国の父の妹は、唐衣の母の綱手だったのだ。

 驚いた二人は、部屋の中を見回す。

 するとそこに唐衣の見覚えのある鏡があった。

 光国は、老婆が墓泥棒していたことを話す。

 唐衣は、その墓が母の綱手の墓であったと気づく。

 そして、一旦は母と共に埋めた鏡だったが、形見として持ち続けると言う。


 こうして光国と唐衣は、一条桟敷屋の唐衣が住む家に向かう。

 一条桟敷屋の知り合いは、唐衣の無事を喜ぶ。

 そこで、光国と唐衣は、二人で光国の家に行くと言って旅立つ。


 唐衣を連れて常陸の国に戻った光国。

 光国は、父の光雅(みつただ)に、光雅の妹の綱手とその夫の藤六の悲しい最後について伝えた。

 光雅は大変悲しんだが、光国が唐衣を連れて帰ったことは大いに喜んだ。

 そして、二人に結婚するように言った。

 光国も唐衣も、そう言われてまんざらでもなかったので、すぐに結婚することになった。


 しかし二人が結婚してしばらくすると、光雅は病に倒れた。

 そして、自分の先が長くないことを悟り、「陰の太刀」と呼ばれる宝剣のことを光国に伝える。

 この「陰の太刀」は、光雅のかつての主君の源満仲から与えられたものだ。

 名刀ととして名高い「膝丸」を作る際に同時に作られたもう一つの名刀なのだと言う。

 光雅は、その後まもなくこの世を去った。


ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

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