12 燃える相馬内裏
その時、屋敷の外から、鐘や太鼓を打ち鳴らし、法螺貝を吹く音が聞こえてきた。
続いて、人々のあげる鬨の声もけたたましく響いた。
驚いて外を見る瀧夜叉。
するとそこには、向こうの山からこちらへ連なる数千の松明の明かりが見えた。
その灯に照らされて、様々な旗差物も見える。
「戦さの用意だ!」
そう叫ぶ瀧夜叉。
そこへ走り寄る荒猪丸。
「我々の企みが朝廷に露見し、討伐軍が送られてきたようです。その軍勢の数は、今の我々ではとても敵わないほどです」
そこで一息ついてから、荒猪丸は落ち着いた声で言う。
「悔しいですが、ここは一旦お逃げになって下さい」
そう言われて瀧夜叉も、応戦することは諦め、逃げる準備をする。
そして、かねてから準備してあった脱出用の地下道へ向かう。
しかしその時、激しい爆発音がして、地下道が崩れ落ちる。
敵は、既にその地下道に気づいていて、逃げ道を塞いだのだ。
それを見た荒猪丸は言う。
「これはもう逃れることはできない」
荒猪丸の声は、一段と落ち着いて聞こえた。
「かくなるうえは敵に捕まる前にご自害なさって下さい。私はひと足さきに逝ってお待ちしております」
そう言うが早いか、自分の腹に刃を突き立て、十文字に切り開き、荒猪丸は自害した。
これを見て、他の者たちも次々と自害した。
そこへ乗り込んで来たのは敵の大将、源頼信。
堂々と名乗りを上げ、観念して自害しろと瀧夜叉に迫る。
これを聞いた瀧夜叉の顔は、怒りで鬼のようになり、その髪の毛は天に向かって逆立っていた。
「残念ながら命運尽きたようだ」
そこで不敵に笑いながら言う。
「ここで死んでも、私の一念は悪霊となって、必ずやこの世を乱すことだろう」
そう言うと、女ながらも、武士のように自分の脇腹に刀を突き立てて自害した。
すると、瀧夜叉の胸から妖気が立ち昇り、蝦蟇の精が空に向かって逃げ去る。
瀧夜叉の顔は急に穏やかになり、経を唱えると、そのまま息を引き取った。
その後、光国は、妻の唐衣を助け出し、「陰の太刀」も探し出して頼信に渡した。
これを受け取った頼信は、唐衣が、かつて自分が手打ちにした藤六の娘であることに気づく。
頼信は唐衣に詫びる。
また、光国の父が頼信の父の怒りを買っていたことも、今回の光国の働きをもって許すと言う。
そして頼信は、光国を連れて良門の討伐へと向かった。
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