前代未聞のカップルとなったノアと斗真の新たな生活が始まる
彼氏、彼女になってからお互いを「斗真」「ノア」と呼び捨てで呼ぶようになっていた。外でデートが出来ない事と触れる事が出来ない以外、なんら人間同士のカップルと変わらない生活を送っていた。毎日一緒にご飯を食べ、たくさんお互いの想いを伝え、相変わらず家の中で外でのデートをしている雰囲気作りをして楽しんでいた。以前と違うのは未来…来世の話しをするようになったこと。来世はどっちが男に生まれてくる?来世はどんな職業に就く?来世はどうやって出会う?など来世が自分達の思い通りになると勘違いしているかのような、前向きな話しで盛り上がる事が多くなった。
そんな中、斗真にとって不甲斐ない気持ちになる事も増えた。それはノアの帰りが遅い時、心配でも連絡を取る事が出来ないことや迎えに行く事が出来ないこと、そしてノアを守る事が出来ないこと。彼氏としての役割が出来ない事が、こんなにも苦しいことなのだと気持ちが塞ぎ、自分を責めることも多くなった。それでもノアと一緒に部屋で過ごしている時は、幸せすぎてネガティブな気持ちを忘れることが出来た。ノアの存在は斗真にとって日に日に大きくなっていった。
年末になりノアの働くカフェも年末年始で1週間お休みになった。1週間も毎日一緒にいられるので、2人とも嬉しくて仕方がない。
年末という事で一生懸命部屋の大掃除をするノアと、それを応援する斗真。
「応援しか出来なくてごめんね。」申し訳なさそうな顔をする斗真に向かって
「側にいて声を掛けてくれるだけでやる気出る!」と雑巾を振り回す。
今まで辛いことも沢山経験してきただろうに、いつも相手を思いやる心を持っているノアを見ると愛おしくなる。もっともっと自分もノアの力になりたい。そんな事を考えてボーっと立っていると
「斗真!応援忘れてるぞ!」と言われ慌ててノアの側に行き
「ごめんごめん。ノア!ファイト〜!」と大声で応援し、
ノアの動きもテンポ良くなり、夕方には無事に掃除を終える事が出来た。
今年もいよいよ残り30分。年越し蕎麦をすすりながら、どうやって新年を迎えるか話し合っていた。
ジャスト0時にジャンプしようか?それともジャスト0時に変顔しようか?それともジャスト0時に万歳三勝する?などどうでもいい話しをしているうちに
「3、2、1、明けましておめでうございます!」テレビの中で花火が上がっていた。普通に新年迎えちゃったね!と顔を見合わせ笑いながら
「明けましておめでとう!今年もよろしくお願いします!」新年の挨拶をした。と同時にノアが大きな欠伸をする。無事に新年を迎えた安心感と、大掃除の疲れが一気に出たのか睡魔に襲われ、そのまま眠りにつくことにした。
目覚ましの音で目が覚める。ウーンと伸びをし、しばらく天井を見つめ今日の予定を頭の中で立てる。決まると素早く起きて着替える。斗真に
「ちょっと出掛けてくる!」と声を掛け家を出た。
行先は近くの神社。小さい神社だが元旦ともなると結構な人で溢れていた。ノアの目的は参拝ではなく、お札とお守りを買いに来たのだ。参拝待ちの人程ではないが列が出来ていて最後尾に並ぶ。15分程だったが寒い中で待つ15分は1時間も待ったような感覚に陥った。無事に買う事ができ、帰り際に神社に向かって一礼し足早に家に帰る。
帰って来て早速お札を棚の上に飾る。ひと段落したところで斗真とお雑煮を食べた。
「お餅、喉に詰まらせないように気を付けて!」とノアに言われ斗真は吹き出した。
「ノア!子供じゃないから大丈夫だよ。ってそもそも僕は喉に詰まる事ないから!」
「はっ!そうだった。」冗談ではなく、いつも本気で斗真が生きている人として言葉を掛けてくれるノアに、感謝の気持ちと大好きな気持ちでいっぱいになった。
食事の後部屋を綺麗にし、ノアは着物に着替えた。(佐々木さんから譲って貰った着物)いつもと違う装いに斗真はドキッとし顔を赤らめる。
「斗真!初詣に行こう!って言うか初詣しよっ!」斗真はすぐにノアの考えている事をキャッチし
「うん!しよう!」と飾ったお札の前に2人で並んで立ち、二礼ニ拍手し長いこと手を合わせる。参拝客を気にすることなく、長く長くお願い事が出来る意味では、家での初詣は最高だった。最後に一礼し顔を見合わせる。
「何お願いした?」と同時に聞き合う。
「これって言っちゃってもお願い事叶うのかな?」
「お願い事言っちゃいけないなんて聞いた事ないから大丈夫だと思う。」
「本当に?」「たぶん…。」迷いながらも聞きたいし言いたいしで…結局神様の前でたった今お願いした事を復唱する2人。お願い事はほぼ一緒だった。「来世で出会う事が出来ますように。来世で結ばれますように。」違ったことと言えば、ノアは「斗真の罪が1日も早く許されますように。」斗真は「ノアの夢が叶い幸せな人生を送ることが出来ますように。」とお互いを想った優しいお願い事だった。
一年で一番寒い2月に入り、朝も布団からなかなか出られないノア。布団の中から
「この寒さを感じないでいられるのいいなぁ」羨ましげな目で半袖姿の斗真を見る。
「そう思うよね。でも感じなくなると寒いのや暑いのを経験したくなるもんだよ。ノアが布団から出られない程の寒さを感じてみたいって思うもん。」
「斗真が半袖だから余計に見てるだけで寒くなるのかも。」
「確かに!夏にこちらの世界に来たから半袖なんだよね。四季に合わせて着替えることが出来たらいいのにな。」
「着替えが可能だったら着せ替え斗真をして楽しむかも。」クスクス笑う。そして時計を見て飛び起きる。
「ダラダラし過ぎた!用意しなきゃ!さむ〜い!」朝から大騒ぎ。きっと隣の住人は1人で住んでいるとは思っていないだろう。
今日も元気に出勤。最近は鮫島とも上手く話せるようになって来た。あんなに怖いと思っていたが、ノアの態度も変わり周りの態度も変わると、人は自然と変わるものなのかもしれない。
今月はバレンタインがあるので、感謝の気持ちも込め、ノアはスタッフ全員にチョコを渡す予定だ。もちろん、態度が変わった鮫島にも。
バレンタインの前日、節約の為手作りチョコを配ることに決めたノアは、夕食後せっせと作り始めた。斗真も興味津々で見に来たので
「一番最初に作るのは大好きな斗真のチョコだから見ちゃダメ!」両手でバツをする。大好きと言われた斗真は照れながら
「了解!」と答えくま太の横に座る。(正直な気持ち…自分以外の人にも手作りチョコとか…ちょっと嫌だな)と悶々としながらチョコを作るノアを見て、初めて嫉妬している自分に気付き恥ずかしくなった。
バレンタイン当日の朝、起きて一番に斗真にチョコを渡した。
「斗真、この世で…あの世も含めて一番大好きです!ずっと仲良しでいようね!」大きなハートのチョコに(大好き♡)とメッセージが書かれていた。嬉しくて今すぐノアを抱き締めたくなった。
「ノア!ありがとう!今までで一番嬉しいプレゼントだよ!今すぐノアにハグしたい気分…愛情表現出来なくてごめんね。」照れずに本音を伝えた。ノアの顔が夕日のように見る見る赤く染まる。
「いや…ごめんなんて…そんな…私に対してそう思ってもらえたことが嬉しい。」実際にハグなんかされたら失神しちゃう!と心の中で叫んでいた。
「来年は手作りチョコケーキ作るから楽しみにしててね!」
来年…来年もこの状態でいられるのだろうか。ノアとの幸せな生活を送るようになってから、先のことを考えると不安がよぎることが多くなった。ネガティブになるのはやめよう。今の幸せな時間に集中しよう。
「手作りケーキ!楽しみだな。あの…ノア…一つお願いがあるんだけど…。」
「何?何でも言って!」
「来年のバレンタイン…手作りは僕だけにして欲しいかな。」ノアの反応を見るのが怖くて下を向く。
「斗真ごめんね。そうだよね。手作りって特別な人にだけだよね。うん!分かった!来年は斗真にだけ手作りにします!」いつも平静な斗真がやきもちを焼いてくれた。好きな人にやきもちを焼かれることがこんなに嬉しいなんて。
ノアは過去最高の幸せを感じていた。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
次回、斗真と鮫島にまさかの出来事が…。
いつも読んで頂いている読者の方には本当に感謝の気持ちでいっぱいです!
今後ともよろしくお願いします!




