先輩の佐々木さんに全てを話す
次の日、朝一で佐々木さんを捕まえ
「おはようございます!佐々木さん、ちょっと話があるんですけど、休憩時間に一緒にご飯食べてくれませんか?」と声を掛ける。いつもと違う真剣なノアを見て
「どうした?うん。いいよ。近くのファミレスに行こうか。」
「はい!ありがとうございます。よろしくお願いします!」頭を深々と下げ、それぞれの持ち場についた。
昼休み2人で近くのファミレスに入りランチメニューを頼む。ドリンクバーを取りに行き、戻ってすぐランチが運ばれてきた。
「早い!ランチメニュー選んで正解だったね。さっさと食べてゆっくり話し聞かせて。」佐々木さんの気遣いが本当に嬉しかった。
食事中はたわいもない話しをしてくれたおかげで、かなりリラックスする事が出来た。食後のコーヒーを一口飲んだところで佐々木さんに
「話しって?」と聞かれた。軽く咳払いをしてから
「実は…どこから話せばいいかな…えーと…まずは報告があります。私、彼氏が出来ました。クリスマスに告白して付き合うことになりました。」
「えっ?例のお友達?」コクリと頷く。
「おめでとう!やったじゃん!何も言ってこないからこっちからは聞きにくくて聞けなかったんだよ。鈴木さんも知ったら喜ぶよ!」
「あの…その…実はですね…その彼氏…人間じゃないんです。」キョトンとする佐々木さんに
「えっと…幽霊なんです。」と小声で告白する。
「えっと…ちょっと待って!えっと…ノアちゃん正気?」
「ちょっと長くなりますが最初から話します。」
ノアが自らの手でこの世を去ろうとした事、それを斗真が止めてくれた事、今までの出来事を隠さず全て話した。佐々木さんは一言も質問や否定の言葉を発する事なく最後まで真剣に聞いてくれた。
「ノアちゃん…鳥肌と手汗がすごいんだけど。体は寒いのに手は暑いとか…私どうしちゃったんだろう。ノアちゃん…話してくれてありがとう。そんな事があったなんて…改めて本当に本当にごめんなさい。斗真くんだったかな?斗真くんが止めてくれなかったら、ノアちゃん今ここにいないって事だよね。そこまで追い詰められてたなんて…助けてあげられなくて本当にごめんなさい。」深々と頭を下げた。
「いいんです。もう終わった事ですし、今思うと…こうならなかったら斗真の存在に気付くこともなかったし、こんな関係にもなれてなかったので…結果オーライです。」
「本当に生きててくれて良かった。斗真くんに感謝の気持ちしかない。ノアちゃん!私はその話し信じるよ。鮫島くんが言ってた悪い男の霊が斗真くんなのかな。」
「鮫島さん、悪い霊って言ってたんですか?たぶん斗真の事だと思います。ずっと鮫島さんの事睨んでたって言ってたから。」
「睨んでたの?それで悪い霊って言ってたのか。それにしても命の恩人を悪い霊なんて…失礼しちゃうね。」
「斗真はあの部屋で自ら命を絶ったんです。それで苦しんでいて…私にそんな思いをさせない為に必死で止めてくれたんです。」
「本当に斗真くんは優しい人…優しい幽霊さんだね。自ら命を絶ってしまった事、物凄く残念に思う。生きてノアちゃんに出会えてたら…。」ハンカチで目頭を押さえる。
会った事もないのに、信じられるような話しでもないのに、斗真の為に涙を流してくれる佐々木さんの事をノアはさらに大好きになった。
「それで佐々木さんにお願いがあるんです。斗真が天国に旅立つ日、家でお花見をする予定なんですけど、どうしても本物の桜の花びらを使って桜の木を作りたいんです。それで毎日仕事の後、落ちている桜の花びらを少しずつ拾って帰ろうと思ってたんですけど、斗真との貴重な時間が減ってしまうのが嫌で…無茶なお願いなんですけど、1人より2人のが早いと思って…。」
「あっ!私と2人で花びらを拾うって事?」
「はい。仕事の後、疲れてるところ本当に申し訳ないのですがお願い出来ますか?」
「ノアちゃん、私に任せて!ノアちゃんは拾わず毎日真っ直ぐ帰って斗真くんと思い出たくさん作って。」
「それはダメです!佐々木さん1人にそんな事させる訳にはいきません!」
「うん?私は拾わないよ!私ね〜こう見えても結構世話焼きだからさぁ〜いろんなスタッフに貸しがあるんだよね。こういう時に貸しを返してもらわないとね!」とウインクして見せる。
「もちろん!ノアちゃんと斗真くんの事は一切口外しないから安心して。」
「佐々木さん…本当に感謝の気持ちでいっぱいです。佐々木さんに頼りっぱなしで…。今回の件で私も佐々木さんに大きな貸しが出来ました。頼りにならないかもしれないですけど、佐々木さんが困った時は全力で助けます。」
「おっ!心強い後輩だ!その時は遠慮なく声掛けさせてもらうね。」と言ってノアのコーヒーカップに自分のコーヒーカップを当て
「取引成立!」と言ってノアのランチ代まで出してくれたのだった。
仕事が終わり、佐々木さんの言葉に甘えさせてもらい真っ直ぐ家に帰った。斗真に佐々木さんとのやり取りを漏れる事なく一部始終話した。
「佐々木さん、信じてくれたんだ。信じてもらえると思ってなかったから嬉しい。本当に良い人だね。感謝だよ。ノアの周りにはノアを助けてくれる人がいてくれるから本当に何の心配もなく天国に行けるよ。ノアは良い出会いが出来て本当に良かった。」
「今になってあの時斗真に助けてもらえて本当に良かったって思える。自分が変われば周りも変わるって事も学べたし、この先もたくさんの出会いがあると思うけど、斗真先生の教え通り自分の気持ちに正直に生きていくからね。」ノアの前向きな気持ちが聞けて、斗真は何の心配も不安もなくなった。ただノアに会えなくなる寂しさだけは、心の奥にくすぶって消えることはなかったが。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
ノアと斗真が過ごす2人の時間も残りわずかとなってきました。
最後まで見守って頂けたら幸いです。
次回もよろしくお願いします!




