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生きて会えたら  作者: みりな
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11/20

神様の秘書的存在、田中氏現れる。

ノアが東京に来て一年。大好きな桜が咲く春を迎えていた。

その頃には鮫島も斗真の事に関して何も言わなくなっていたので、ノアもすっかりあの出来事を忘れていた。

それよりも斗真とお花見をする計画で頭がいっぱいだった。

家でお花見となると桜をどう表現するか…どうせだったら作り物の桜より本物の桜がいい。けど…桜の木を折って持って帰って来る訳にはいかない。「そうだ!」良いアイデアが浮かび思わず大きな声を出してしまった。

「びっくりしたぁー!」近くにいたスタッフが目をパチクリさせ

「何?どうしたの?」と聞いてきたが、ノアはニンマリ笑顔で無言で立ち去った。

そう!枝を折ったりするのはいけない事だけど、落ちてる花びらなら持ち帰っても問題ないのではないか?むしろ掃除の手間が省けて感謝されるかも。例えば大きな画用紙に木の幹を描き、その周りに(のり)を付け切り絵のように花びらを貼ったらどうだろうか。そしてそれを壁いっぱいに貼ったら…我ながらナイスアイデア!でも…花びらを拾うのは大変かな。鮫島さんに手伝ってもらおうか。いやいやダメダメ!鮫島さんに頼っちゃダメ!最近になってやたらと世話を焼いてくれるからと頼る癖がついてないか?そんな自分に喝を入れる。斗真との楽しい時間を過ごす為の手伝いを、鮫島さんが加わっていたと知ったら…斗真もいい気持ちはしないだろう。私一人で頑張って集めてみせる!毎日少しずつでいいから袋に入れて持ち帰ろう。


家に帰り斗真に花見の話しをした。

「一週間後、お花見する予定だから楽しみにしててね。」

「お花見?桜を見るって事?」

「そう!斗真、桜好きって言ってたよね。私はお団子が好きだけど。」

「アハハ!ノアは花より団子か!とっても楽しみにしてるよ!」

一週間もあればかなりの桜の花びらを集める事が出来る。絶対満開にして見せる。


その日の夜ノアが眠りについた後、斗真は花見を楽しみにいろいろ想像をしていた。ノアのアイデアを生み出す能力は凄いと思う。いつも驚かされそして楽しませてくれる。

楽しみだな…と思いながら時計を見ると深夜2時になる5分前だった。あと5分でベランダに向かう時間だ。恐怖の時間から気を逸らす為に、今までの楽しかった行事を振り返る事にした。 

楽しかった思い出に浸っていた斗真だが、ふっと我に帰り

「あれ?5分ってこんなに長かった?」と時計を見ると2時15分になっていた。

「えっ?この時計狂ってる?」他の部屋の時計や給湯器のデジタル時計を確認して回るが、狂っている訳ではないようだ。

「えっ?どういう事?必ず2時には体がベランダに向かうはずなのに…。」飛び降りなくて済むならこんなに嬉しい事はないはずなのに、いつものルーティンが崩れるだけで不安になる。怖いけど自らの意思で初めてベランダに向かってみる。窓際に立ちどうしたものかと悩んでいるとベランダに1人の男性の姿が現れた。

「うわぁー!」叫んでから慌てて口に手を当てノアの寝室の方に目を向ける。しばらく様子を伺っていたが、ノアが起きた気配はなく安心し、再び窓の外に目を向ける。50代前後くらいの紳士的な男性が斗真に会釈をし、窓をすり抜け部屋の中に入ってきた。戸惑いながらも斗真も会釈し

「僕と同類の方ですか?」と聞いてみた。男性はニコッと微笑み

「同類と言えば同類かもしれません。正式に言いますと、私は神様の秘書の田中守と申します。」

「神様の秘書?えっ?神様に秘書なんているんですか?」

「いえ…人間界で言う秘書的な存在の者です。」

「秘書的な方が何故ここに…あっ!もしかして…僕…本来の寿命が来たと言う事ですか?」どちらにしろ若くしてこの世を去る運命だったのかとしんみりした気持ちになっていると

「そうではありません。斗真さんは正式には89歳まで生きる運命でした。なので23歳でこの世を去り、今現在生きていたら25歳という事なので、本来であれば残り64年間この罪と向き合わなくてはならなかったのです。」

「うん?本来であれば?ならなかった?どう言う事ですか?」

「ここからが本題です。斗真さんは赤木ノアさんという人の命を救いました。そしてノアさんに生きる気力を持たせ、前向きな気持ちになるまで見守り支えてきました。いわゆるノアさんにとって斗真さんは命の恩人という訳です。その様子を見続けていた神様が人の命、人生を助けた斗真さんの罪を免除すると決断されました。」

「罪を免除…。」

「はい。と言う事で私が一週間後、斗真さんを天国に案内させていただきます。」

「一週間後…待って下さい!急すぎます…えっ…天国に行ったらここに戻ることは出来ないってことですか?」

「もちろんです。もう罰を受ける必要はないのですから。」

普通だったら…ノアに出会う前だったら一週間も待てない、すぐにでも天国に行きたいと喜びを感じていただろう。でもノアに出会ってしまった今…一週間は短すぎる。それどころか天国に行く事さえ拒否したくなってしまう。黙っている斗真に田中氏が問いかける。

「斗真さん、天国に行くこと迷っていますか?」斗真は黙って頷く。

「斗真さんは頭の良い方なので既に分かっていると思います。このままずっとこの状態でいられないこと…この状態でいてはいけないことに。最初はどうであれ今のノアさんは斗真さんがいなくてもしっかり生きていけるほど成長しています。ノアさんは生きているのです。ノアさんのこれからの人生を邪魔してはいけないことにずっと前から気付いていたはずです。斗真さん…よく考えて下さい。2人にとってどちらが良い選択なのかを。」

斗真の目から涙が溢れ出す。そう…ずっと前から気付いていた。このまま自分の欲でノアの人生を縛ってはいけないことに。でもノアと会えなくなると思うと気が狂いそうになる。でも…でも…。頭が上手く回転しない程動揺してしまっていた。田中氏は、そんな斗真の気持ちを受け止め、結論を出すまで焦らせる事なく黙って待ち続けた。


30分程たったころ斗真が顔を上げ田中氏を見た。穏やかな表情になっている斗真を見て

「結論が出たようですね。」と田中氏が一言。

「はい。長く待たせてしまって申し訳ありません。一週間後…僕は有難く天国に旅立たせていただきます。」

「本当によろしいのですね?」

「はい。僕が天国へ行く選択が、お互いにとって良い事だと納得ができ、受け入れる事ができました。」

「では、一週間後の午前2時にお迎えに参ります。ノアさんに話し納得していただき、気持ち良くお別れ出来るようにしておいて下さい。もちろん、斗真さんの決断も揺るがないよう気をしっかりお持ち下さい。」

「はい。残りの一週間ノアにも納得してもらい、楽しく過ごしたいと思います。もう後悔しないように。」

「もう心配はないようですね。斗真さんの揺らぐことのない真の思いを聞くことができ、安心して神様に報告する事が出来ます。」

「本当にありがとうございます。あの…1つだけお願いしたい事があるのですが…叶えてもらえますか?」

「内容によりますが…どんなお願いでしょうか?」

「ノアは僕がいなくても大丈夫だって分かっているのですが…それでも最後のお別れをした後にノアの記憶から僕の存在を消して欲しいのです。」真剣な表情で答える斗真に田中氏は

「記憶を消すですか…承知しました。お別れをした次の日の朝には、ノアさんの記憶から斗真さんの記憶がなくなるようにさせていただきます。」意外にもすんなり承諾してくれた。

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」深々と頭を下げる。

「では。」とベランダに向かう田中氏が不意に足を止め斗真の方に向き直った。

「今まではマニュアル通りの答え方しか出来ませんでしたが、ここからは私情を挟まさせて頂きます。斗真さん…この1年間2人で楽しく過ごして来た斗真さんとの記憶を、なかった事にしてしまって本当によろしいのですか?2人の楽しかった思い出があるからこそ、それを支えにノアさんはこれからの人生を前を向いて生きていけるかもしれないのですよ。この1年間をノアさんの人生から消してしまう事が正しいとも思えませんが…。」

「田中さん…僕みたいな罪人にそこまで寄り添って意見を言って頂けること、本当にありがたいです。でも…いいんです。ノアには前を向いてしっかり生きて欲しいって思うし、僕のこと好き過ぎてこの先恋愛出来なくなってしまうのも心配ですし…うぬぼれ過ぎかな。」照れた笑みを田中氏に向ける。田中氏も優しい笑みを斗真に向け

「承知しました。斗真さんの願いは叶える事にします。あなたは本当に人思いの優しい方だ。天国に行ったら人気者になりますよ。ではまた一週間後…いや念の為に1日前に気持ちに変化がないか確認に伺います。」

一礼し今度こそ窓から外に出ようとしたが

「おや?」と再び足を止める。

「どうしました?」不安になった斗真が聞くと

「どうやら斗真さんをこの部屋から追い出そうとしている人がいるようですね。」

下を見るよう促され窓際に行き見下ろす。ノアの部屋は6階だが人の姿を確認する事が出来た。鮫島ともう1人の男性がこちらを見上げている。とっさに窓から隠れるように離れ

「1人の人は知っている人だと思います。ノアの職場の人で僕の事が見えるようです。もしかして…もう1人の人は能力のある人ですか?」

「そのようですね。なかなかの能力を持っている方なので、このままだと斗真さんをこの部屋から追い出し二度と入る事が出来ないようにガードされてしまいそうです。面倒なので斗真さんが天国に出発するまで、あの方の能力をおさえておきますね。」

「そんな事出来るんですか?」

「はい。簡単ですよ。あの方には申し訳ないですけど。」と言いながら男性の方に向けて指をパチンと鳴らす。

「はい。これで大丈夫です。安心してノアさんと一週間お過ごし下さい。では。」と言い、外に出た瞬間すぐに消えてしまった。斗真は慌てて深々とお辞儀をする。そして鮫島達の方をチラッと見てホッとする。タイミング良く田中さんが来てくれて本当に良かった。田中さんが居なかったら今頃部屋から追い出されていたかと思うとゾッとした。

明日ノアにどう話そうか…考えるだけで胸が苦しくなる斗真だった。


その頃、外では鮫島と男性がノアの部屋の方を見上げていた。

「どうですか?あの男の霊…追い出せそうですか?」

何度も手を合わせエイ!エイ!と念を送っている男性に不安そうに問いかける鮫島。

「どうした事でしょう…まったく反応しません。これは…私の手に負えない程の悪霊かも。恐ろしい…すぐにこの場から去らないと危ないかもしれません。」

「えっ?そんなに強い霊なんですか?手に負えないって…じゃあノアは…職場の友人はどうなっちゃうんですか?」

「今の今まで何もないなら大丈夫ですよ。その友人の方はかなり強い者に守られてると思われます。あーおそろしい!早くこの場から去りましょう!さあ!早く!」と言うと猛ダッシュで走り出した。

「えっ!ちょっと待って下さいよ!」慌てて後を追いかける。男性が振り向き

「絶対にあの部屋には近付いては駄目ですよ!」と叫びながら鮫島を引き離し走って行ってしまった。鮫島はついて行けずハアハアと立ち止まる。

「あの人めっちゃ体力あるじゃん。ハアハア…マジか…大丈夫かな…あの人がそう言うならノアは大丈夫かもしれないけど、少しでも早く新しい部屋に引っ越すことを勧めないとな。」

鮫島は走る気力もなくトボトボと歩いて帰って行った。

悪霊扱いされてるとは思ってもいない斗真は、2人が走って去って行くのを窓から見ていた。田中さんはどんな魔法をかけたんだろうか?と首を傾げ、とりあえず安心し窓から離れたのだった。

最後まで読んで頂きありがとうございます!

大好きでいっぱいの2人は本当に離れ離れになるのでしょうか?

次回もよろしくお願いします!

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