鬼之の過去2
「鬼之さん? 喉の調子は良くなったんかい? ワレタコ!」
『結婚してくれ 彼にそう言われた♪ 親には ブスだから 受け入れろって言われた♪』
「え? ちょ!」(また来た……どうして? 今のは法則からずれてない?)
「口が悪いですねえ。まあ一週間待たせてしまったストレスですよね? ん? 法則? ずれる?」
「そ、そうね……心を読むなっての……」
「すいません。どうしました? 具合でも悪いのですか?」
「違うって……」
「そうですか? おかしいですね。私はお陰様で楽になりました。では続きを行きますね」
「はいっ」
ーーーーーーーーー1年後ーーーーーーーーー
ジン゛ジア゛が一人の男の子を出産する。鬼と人間のハーフである。
『よく頑張ってくれた!』
『とうぜん』
『さあ私達のベイビイだ見てごらん』
『と、もだち』
『生まれたばかりなのに喋った? 将来凄い子になるぞ!』
生まれたばかりの子供。色黒の赤ちゃんだ。頭がとがっている。だが、緑一本角鬼の血を引いている事から緑色の皮膚に次第に変わっていく筈である。
因みに鬼の色の種類により性格や特技は異なる。赤鬼は気性が荒く、青鬼は冷静、緑鬼は優しく黒鬼はめっちゃ悪い。桃鬼は博愛の心を持っている。
『この子だ。さあ!』
鬼之はジン゛ジア゛に生まれたての赤子を見せる。すると!
『え? き?』
『え? え? だ、だってこの子の顔は君の画像、そして私の顔とも全く同じ物なんだよ? 私の場合それを色味補正で茶色から
R (赤)16 G (緑)175 B (青)16に調整し、緑色に変化させ、いらすとやさんの緑鬼の体を使わせていただき、首を上から重ね挿げ替えた物が私という存在なんだよ? だから、基本は同一とされる。故にこの子が汚いという事は君自身、そして私に対しても汚いって言っている事なんだよ?』
しかし、彼女は続ける。
『み?』
『ジン゛ジア゛……君は……何て、何て酷い事を言うんだああああああああ』
バキィ!
鬼之はジン゛ジア゛の顔に右ストレートを打つ。例え酷い事を言ったとは言え、人間よりも遥かに力のある鬼が出産直後の人間の女にする事ではない。まさに非人道的な事で周りの皆も鬼之を睨む。
ところが
『まだまだ』
『え?』(む、無傷?)
キィィィイイイイイン……カッ
『どすこい』
ボギィ
『うわあああ』
ヒューン
鬼之はジン゛ジア゛の張り手を喰らって、下顎の歯が全て砕ける音を立てつつ産婦人科の壁をぶち破り、50m程吹き飛ぶ。
『な、んで……鬼よりも強いんだ? このお方は』
そう言いつつ我が子を奪い取り段ボールに入れ始める
『な、何を?』
無言で我が子の入った段ボールを運ぶジン゛ジア゛。
『お、おい? どこに行くんだ? 止めろおおお』
彼女を止めようとしがみ付くがものともせずに歩き続ける。
『アイーアイー』
これから自分の身に起こる不幸など分かる筈もなく、無邪気にはしゃぐ赤ん坊。
『止まってくれええええええ』
ブゥン
彼女は、足に纏わり付く五月蠅い旦那を一蹴し、40mほど吹き飛ばす。
『うっ? うわああああああああああああああああああああ』
ドゴォ
そして、目的の場所に箱を置き、彼女は何処かへ去って行った。そして、最後に聞こえた」
『さよなら』
とね」
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「ふう……これで終わりです」
「酷い話……でも子供の名前たかゆきなの? ……まさか隆之? んな訳ないか」
「何もかもが唐突で……いつの間にかバツイチで子供も失い……どうしていいか分からなかった。でも確かにそう【言われた】んだ」
『だけども そいつは人間じゃなかった それでもいいよと投げやりに言われた』
「来たか。恐らくこれが最後のフレーズね?」
冷静沈着に分析を始める。もう1回2回ではないのだ。最早慣れてしまっている。
「どうしたんだい?」
「ええと」
害怒仏苦を見直しつつ
「言われた♪ 言われた♪ 言われたからやった♪ 言われた言われた言われたんだから言われた×2
机の、上が かたづいてないって言われた♪ だけども なにも せずに明日を迎えた♪
そしたら言われた 片付けろって言われた♪ その時 やっと 片づけを始めた♪
言われた♪ 言われた♪ 言われたんだから言われた×2
店の 商品を 買って来いって言われた♪ だけどその時 金が1円も無かった♪
そしたら言われた 払わないで良いって♪ 自分の心に言われたから盗んだ♪
結婚してくれ 彼にそう言われた♪ 親には ブスだから 受け入れろって言われた♪
だけども そいつは人間じゃなかった♪ それでもいいよと投げやりに言われた♪」
「こ、この歌は?」
「今までに私の脳内に響いたフレーズを思い出してみたの。順番にね。そしたら歌になったわ。意味の繋がったね。その歌詞の意味は自分の人生を自分の思い通りに生きることが出来なかった女の子の悲しい思いが込められた歌詞が浮かび上がってきたわ。そして今響いたワード。これが最後のフレーズ
【♪だけどもそいつは人間じゃなかった】
この、人間じゃなかったの部分を鬼と考えて、次の
【それでもいいよと投げやりに言われた】
ここは、親と相談したけど、
「お前みたいなブスは鬼ぐらいにしかお嫁にいけない。だから断る必要はない。いつまでも家にいるな。さっさと出ていけ」
とほぼ投げやり気味に言われた。だからそう感じた」
「確かに……」
「これはシ゛ン゛シ゛ア゛の心の叫び。そして【言われた】という単語が引き金で流れる、1フレーズずつ順番に。仕組みは分からないけどね。因みにひとつ前に響いた歌詞は、
【結婚してくれ 彼にそう言われた♪ 親には ブスだから 受け入れろって言われた♪】
これは、喉の調子が良くなったんかい? ワレタコと鬼之さんに聞いた時に響いたの」
「このセリフの後、動揺していましたね」
「ええ、でもこの中にも【言われた】が入り込んでいたのね」
「どこです?」
「何回か言って見ればわかるよ」
「調子は良くなったんかいワレタコ……カイワレタコ……か【言われた】こ……本当だ、だが、なぜ?」
「分からない。でも彼女は4文字以上喋れないでしょ? でも心の中で思っていた事。それを記憶具現して忘れ去った後崩れ去り、地獄を彷徨うメロディになったのかも……誰かに指示を
【言われ】
従った。そう、誰かの人生の為に、自分の人生を使った事を後悔し、
【本来四文字しか喋れない彼女のスペックを凌駕し浮き出た魂の叫び】
「うう……」
鬼之から涙が……
「私の様に赤の他人に言われた事で自分の意思を無視し、自分の人生を台無しにしないでと言う思い……それが込められた歌」
「グスッ……やはり私と結婚したのは言われたから……親の言う通り結婚しただけだと言うのか……」
「記憶具現で出したって事は彼女にとって忘れてもいいって内容だったのかもね」
「ジン゛ジア゛……」
膝を地面に落とし、落ち込む鬼之。
「気を落とさないで……言いすぎちゃったかなごめん」
「ううっううっ……」
「じゃあ私報告してくるね」
火車鬼を呼ぶ。
「一丁目にお願い」
「はいカシャ」
一丁目には数分で到着する。
「さて、閻魔の所に行くか……ん?」
すると後ろを向いてぼうっとしている年老いた亡者がいる。
(あっあの人後ろ向いてるwよし、買ったものの結局使わずじまいだったこれを使ってみようw)
そう思いつつ、ある物を構えるアリサ。
「えい」
にゅうう。こちょこちょ
マシーンは1mほど伸び、亡者の脇を擽る。すると? おや? 何だこの音楽は?
てーてってって てーてってって てーてってって てーてってって てーてってって てーてってって てーてってって てーてってって てれれれれれれれ
「おひえええ絵えええeええEeええええええEeぇえぇえええぇえぇ江ええええええあららばらららああーらあああらーああらああー」
「ちょっと待って? 私ほんのいたずらあごころおおでえ擽っただけなの。なのにどうして、そんな大きな声でーさーけびだーすうののお?」
「おひえええ……おひええええ……おひいいええええ」
「確かに私、後ろから気付かれないように擽ったけれども♪だからと言って、そんな長く叫び続けるのはちょっとおかしいよ? てんてんてん ほんの少しくすぐった♪ただそれだけの事で。必要以上に長い時間叫んじゃだめだよ?」
「ええええぇええろろーなああろーええええEeeEええええEeeeEEえええEEええEeeeeえeeえeeえええええ恵えぇ? あららあららりあろろあららあららりあろろひいいいええひいええええ」
「ちょっと待ってまだ叫ぶつもりなのすごい肺活量ね? だってさあもうとっくのむかしに擽ったくなくなってるよね?」
「おひええ……おひええ……おひいいええええ」
「擽ったくなって叫び出した筈なのにもはや惰性で続けているようにしか見えないのは私だけかな? てんてんてんそのエネルギーを別の場所で使えれば素敵なことが起こりそうなのにそれだけは絶対にそれだけは絶対にそれだけは絶対にやらないのよね?」
「おひぇえぇえええぇろおおおなああああろおおおなああああららららりららりらりあろろあろおりろりろEeeeEEえええEEええ」
「そうかわかったよ。叫びたいだけ叫びなさいって……あれ? やっと終わったか?」
おおw物凄い稼ぎっぷりだ、美しい……誰なのだ? この素晴らしいお方は? たった二回擽っただけでこれだけのエネルギーが生まれるとは……何という効率の良いお方なのだ。それに素質が……ある!! ぬ? 何の素質かであるだと? ぬう、私の心の内に秘めておきたかったが、そこまで知りたいと仰るのならば致し方ない。彼に秘められた素質は、
【稼文字学】
の資格だ。平たく言えば、小説を引き延ばし、文字数を自然に稼ぐ手法である。ありがてえ……! 彼は、彼だけは大切に保護していかなくてはいけない。
「おひぇ? おひぇえ、おひぇえ……」
相当驚いた様で息切れもしている。大切に保護しなくては……巨体だが、それにそぐわぬ素っ頓狂な声で振り向きながら叫ぶ男。その表情は、正に恐怖の真っただ中にいる様な怯え切った目である。
しかし、あの長さ。正に即戦力!! 名前もまだ知らないが、大切に保護して行きたいキャラクターである。
「ちょ! なんでそんな驚くの? 普通に声を掛けただけなのに……しかも一回息継ぎしたよね? で叫び直していたわ。わざとなの?」
「そんな事言われても突然擽られちゃこうなりやす!」
「そうかしら?」
「そうでやす!」
「ごめんね。でもたったの200ヘルの物でこんなにも楽しい体験を得られるなんて……なんかすっごい得した気分w」




