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焦熱地獄 獄炎スズシロを求めて 

焦熱(しょうねつ)地獄に到達。火車は早い。物の数分で看板の前に止まる。


「ここでは獄炎スズシロだっけ? それさえ終われば最後の八寒地獄の氷結ゴギョウだから頑張ろう!」


「しょうがないオニ。しかしよく覚えているオニ」


「記憶力は結構高いからね。それにこれにもメモしてあるからね」

害怒仏苦を見せつつ得意げに話す。亡者にとっては喉から手が出るほど欲しい地獄の取扱説明書だが彼女にとっては少々高めのメモ帳だ。


「しかしやっぱり熱いわねえ……どうなってるのよ!!」


「ここは亡者達に熱い思いをして貰う地獄ですオニ。ほら、あそこを見てくれオニ」

鬼の指差す方向を見ると、炎が立ち上がっていてその中には生物らしきものの影が……


「ひいい」


「もっと熱くなるよ……熱い血燃やしているよ……亡者が熱くなった時、本当の自分に出会えるんだ。だからこそ、もっと、熱くなるよおおおおお」

松谷修造の様な亡者もいるな。


「苦しいいいい」

沢山の魂や亡者達が炎に焼かれている。


「大変ねえ。ここでも暑いのに直に炎の中って滅茶苦茶苦しそう……あらあら、みんな汗だくでところどころ火傷してるじゃない……水は無いの?」


「無いオニ。で、6時間程苦しみ、一旦家に帰り、再びも同じ苦しみを味わうオニ」

ひえー


「そんな日が毎日続くの? 生きた心地しないねえ」


「これも生まれ変わる為の修業オニ。まあ焦げても再生しますし、それが永遠に続くと言う訳ではなく、ここで一日……正式には6時間過ごす事で、この地獄の場合ピッタリ1000戦力が上昇するオニ。そこら辺の上昇条件を探すより確実オニ」


「これを終え、各自で見つけた上昇条件を全てこなして一日を終える。って言うのが亡者の一日の流れなんだね?」 


「そうオニ。この後上昇条件を探しに行く積極的な亡者も一部はいるけど、ほとんど家に帰ってぼうっとしているオニ」


「18時間もぼうっとしてるんだ……眠れないもんね亡者って」


「はいオニ」


「まあそんな面倒な事をしなくても、脳死でここで千日責め苦を味わえば、卒業条件の100万に到達して王者の階級が貰えるって事だもんね? 無理する事は無いやって諦めちゃうんだねえ」 


「そうオニ。でも、階級が上がれば責め苦の時間が少なくなり、貰える戦力が多くなるオニ。でもそれを上げる事すらせず、更には、責め苦だけやって後は何もしないぐうたら亡者が多いオニ」


「でもここにいる亡者達って魂型と亡者型の奴がいるよね? それは一体どんな違いがあるの? 元々同じ魂でしょ?」 

それは確か見回り鬼が話していなかったか? まあ忘れてしまったのだろうな。私も忘れてきた頃なので再度説明を受けようか。 


「ああそれはね……階級を上げて行くと戦力と共に肉体を獲得し、亡者の様な体が得られると言う事オニ。魂はここに来たばかりの姿オニ」


「へえ、じゃあ途中の経過みたいな……例えばヒヨコの場合、黄色い綿毛にトサカが生えてきた様な……魂と亡者の中間状態の発展途上の亡者が居ないのは何故?」


「それは自分の意志でポイントが一定値に達成した時に姿を変えるかどうかの選択肢が出ますので、その時に変わると選択した時点で魂の姿から一気に変わります。途中経過はありませんし……あ、魂のままでも階級は上げられますので豪傑の魂もいます。まあ魂の姿の方が空中を移動出来るし、亡者の様に醜くない。ですが、亡者の先に人型があるので、そこまで貯めて一気に亡者バージョンを飛ばし、人型になる魂もいますね」


「確かに亡者は気持ち悪いよね。魂の時は食事も必要なさそうだし」


「そうですね。ですが最終的に亡者の先の人型になってから人間に生まれ変わる手続きが行われますので、遅かれ早かれそうなります。それに装備も出来ませんので、魂の方が圧倒的に責め苦の苦しみが大きいというのもあります」

ふむ、前に同じような説明があったかもしれないが、おさらいという事で聞いてみよう。


「へえ、じゃあ生まれ変わる条件は二つあるって事? 戦力100万と、人型に進化している状態と言う事でしょ?」


「はいオニ。それに亡者の時は魂状態よりもメリットもあります」


「何?」


「地獄から給金が出ます。地獄を味わった時間に比例した量の」


「ああ、そんな事言ってたね。まあ魂の姿じゃ買い物出来ないもんねえ」


「その通りですオニ。魂は戦力しか貰えず食事も出来ません。お金が多ければ多い程、買い物で責め苦自体が楽になるオニ」


「ああ、この着物みたいなのも装備出来る訳ね?」


「え? それ、店を回ったんじゃないかオニ? そこで何か買い物をしてないオニ?」


「ああそういえば地獄の擽りマシーンを買ったわ。他にも武器とか防具やスキルの巻物も売ってたわね。でも擽りマシンと筆記用具ぐらいしか買っていないわ。今私が装備しているのも売っていた気がする。でも買ってはいないの。これ私の初期装備よ!」


「擽りマシーンですか……あれは地獄の鬼に使う事で、仕事をしている鬼なんかを妨害出来るオニ。貴女様に必要なアイテムではないですねえ」


「でも他にも誰かに使えないか試したいし持っておくよ」


「それはいいのですが……それは本来6時間の間苦痛のみを味わうのではなく、せめてささやかに私達に報復が出来るチャンスが亡者達にも得られるアイテムですオニ。それの上位で刀や防具を装備すれば、6つある地獄のどんな責め苦でも私達に対し威嚇出来、有利になり、妨害しずらくなるから快適に6時間を過ごせる様になるオニ」


「そんな効果が……確かに刀とか持ってたら邪魔しにくいよねえ」


「そうですオニ。それにイベントで刀があれば有利ですし、着物を着れば固くなるし、火や氷にも耐性が付きますし……積極的に装備を購入している亡者は関わりたくないですオニ。それに明言はされていませんが亡者が地獄で責め苦中の鬼に歯向かっても処罰されないオニ。知らないから手出ししてこないけれどやはり刀を持っている亡者にちょっかいは出しにくいオニ。それに、買い物で得られる私達への報復を我慢し、只管お金を貯めて生まれ変わると選択すると、残金に比例し、生まれ変わった時に潜在能力が高い個体として生まれ変われる可能性が出てきます」


「へえ、お金はこの世界ではかなり重要になってくるのねえ……貰える額は決まっていて、資産運用とかで増やす事も出来ないんでしょ?」


「はいオニ」


「なのに閻魔はなんで私にこんな大金をくれたんだろう?」 


「周回ボーナスでしょう。確か七回目にそんなのがあった筈オニ」


「ああ、あれか。何週まであるのかしら?」


「15周まで用意されている筈オニ。でもその前に消滅する可能性もあるオニ」


「だよね……ずっと同じ魂を使い続けるのも大変よね。因みに15周目はどんな効果?」


「ええと……確か、自分の分身を生み出す事が出来るという効果だった筈オニ」

ぬう?


「え?」


「詳しくは分からないオニ」


「そうなんだ……気になるわね……ま、いっか。でも鬼も装備は買えないの?」 


「亡者専用装備オニ……オイラ達は装備不可能オニ。鬼専用の金棒とかもあるけれど、最高位の鬼しか貰えないオニ」

この鬼は素手だな。


「鬼も結構大変なのねえ」


「鬼は亡者をいじめる事で戦力が貰え、いい食料が得られるオニ。装備は一切貰えないオニ」


「鬼も結構大変なのねえ」


「亡者には恨まれるし、戦力が上がっても別に何か変わるという訳でもないオニ」


「鬼も結構大変なのねえ」


「3回も言うと辛さも3倍増しだオニ」


「私って語彙力高い系幼女だけど、これに関してはそれ以外の言葉が出てこなかったわ。これ珍しい事なのよ? 3回も言ってあげたんだから心に刻んどきなさい?」


「はいオニ」


「しっかし魂のままじゃ給料が貰えない。だからその分生まれ変わる時に不利になると言う事ね。でも醜い姿になりたくないから魂のままの子もいたわね」


「その通りオニ。あなた様は何故か完全に魂なのに装備までされてここに来たのですよ。不思議でなりませんよ」


「こっちのセリフよ」


「不思議オニ」


「魂って喋ったりできるのよね?」


「はい?」


「会話した事あるからさ」


「まあ喋れるオニ」


「じゃあ魂って心と口しかないって事なのね?」


「さあ、そこまで深く考えた事は無いオニ」


「魂のメリットは浮遊移動出来て醜い姿ではないと……デメリットは買い物が出来ず装備も出来ないし責め苦のダメージが大きく責め苦の後に金銭が貰えないという事か……デメリットの方が多いよね」


「そうですオニ。でも、責め苦を敢えてやらず、毎日の日課を増やしていきそれだけで卒業という道もあるオニ」


「1日に120とか上がるやつを沢山探してそれだけをやるって事か……それならお金もいらないし責め苦のダメージもないから気楽ねえ」


「まあそうなんだオニ。だけど亡者の状態の方が見つけられる日課は圧倒的に多いオニ」


「ああ、例えば飯屋でニワトリに餌を上げると上昇するって事を聞いたけど、それは魂の状態じゃできないもんね」


「小麦位の軽い物なら運べるオニ」


「あ、そういえば食事やの店主さんは魂の状態であげてたわね」


「でも、魂で出来る事なんて、鬼と会話、魂と会話、何メートル浮遊移動したとかくらいしかパッと思いつかないオニ」


「他にも探せばあると思うけど醜くても肉体を持っている方が有利ってのは覆しようないよね……」


「だからさっさと素直に亡者になって、お金で装備整え、耐性を付け、責め苦のダメージを減らし、どんどん階級を上げて早く終わらせて、沢山稼いだ後、自分が見つけた日課をこなして1日を終える。これが正しい亡者生活オニ。まあ亡者には絶対に教えてあげないオニ」


「俺はこの本に書いてあるって事か」

そう言いつつ害怒仏苦を取り出す


「それを持っているオニ?」


「うん。でもメモ帳として使ってるだけだけどねw」


「贅沢なメモ帳オニ」


「考えてみれば一匹の亡者が犠牲になってこれを買って、他の亡者にシェアすればここでの暮らしも楽になるのにねえ」


「そんなギブの心を亡者が持てる訳ないオニ」


「そうよね」(でも、針山の亡者さんは自分だけが持っていた情報をシェアする事を私と約束してくれた。まあ私が階級で脅したのが原因だけどね。それでもそういう心の変化があったって事実を目の当たりにした訳だし地獄も捨てたもんじゃないと思ったわ)


「いつかは人間になれる可能性があるオニ。真面目に毎日くればいいだけオニ」


「もう何かそれサラリーマンじゃん……死んでもこんななのかあ。悲しいよ」


「そして蘇っても結局大多数はサラリーマンになり人生を終えるオニ」


「ひええ……」


「まあそうなりたくなければ100万で卒業せず、居残り勉強をして高い階級で卒業するしかないオニ」


「でもここって1000しか貰えないの? 日課の1つで120とか上がるんだよ? 8個やればそれくらい貯まるんじゃない?」


「ああ、ここのせいですオニ」


「え? ここのせい? どういう事? もしかして地獄によって貰える報酬が違うとか?」


「鋭いオニ」


「って事は……ここに連れてこられた魂達は相当現世で悪い事して居たっぽいよね」


「ここは2番目にキツイ地獄オニ。一番の悪行を積んだ魂は八寒地獄に飛ばされるオニ」


「ここも結構きついのにねえ」


「きついけれど貰える戦力とヘルは下から二番目に低いオニ。血の池とか針山の方が戦力上昇も給料も高いオニ。軽い罪でここに来た魂の方が戦力上昇も早く、人間になるスピードも早いオニ」


「そうなんだ。その辺は良く出来ているのねえ。因みに一番楽な地獄は?」


「賽の河原オニ。4000戦力と4000ヘルが貰えるオニ」


「へえ、4倍じゃない! 次は血の池?」


「そうオニ 次が釜茹で所、針山、焦熱、八寒と続くオニ。血の池は6時間で戦力が3000上昇するオニ。で、どんどん下がって行って、八寒は500オニ」


「500かあ……大分変わるわねえ。一番キツイところって賽の河原の8分の1かあ。あの子達大した苦しみでもないのに沢山貰ってるのねえ」


「え? 折角積み上げた石を崩されちゃうんですよ?」


「ここに比べりゃ遥かにましじゃない!」


「そうなのかオニ?」


「何でそんな事が分からないのよ! まあいいや! で、それぞれの場所で様々な苦しみを味わい鍛錬された魂は、人の心を取り戻し、良い人間に生まれ変われますって事なのね?」


「そうオニ」


「大体分かったわ。熱いので早く終わらせましょう。獄炎スズシロどこー」


「あっ灼熱地獄のど真ん中に生えてるオニ」


「今は地獄の責め苦中だから営業時間外に行かなきゃダメって事お?」


「察しが良いオニ」


「じゃあ分かった。先に八寒地獄の氷結ゴギョウからにしよう」


「面倒オニ……」


「これで終わりだから安心よ」


「了解オニ」(またここに戻らないといけないオニ……)


「じゃあ火車呼びましょう」


「おーい火車アア! ここに来てくれオニいいいいい」

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