賽の河原 亡霊ハコベラを求めて
賽の河原へと走るアリサ。
「賽の河原に着いたみたい。立て札あるし覚えておこっと……フムフム焦熱地獄があっちで……八寒地獄がその反対? 大体分かったわ……ん?」
すると子供の泣き声のような物が響き渡る……
「もう嫌だあ」
「うえーん」
泣きながら何かをやっている様だな……頭に初心Ⅰや初心Ⅱの階級が輝いている。比較的ここに来て間もない亡者なのだろう。
そして姿は小さい。子供の様な亡者だ。何かを苦しそうにやっているな。
賽の河原は親より先に死んでしまった子供が連れてこられる地獄である。極悪人がここに来る事は無い。そして幼いながらに死んでしまった事もあり、早く生まれ変われる様に考慮されており、上昇する戦力が6つの地獄の中で最高の4000である。地獄の中ではエリートと言える上昇率で、そこで毎日積み重ねているせいか戦力も覚醒、中には豪傑まで成長している者もいる。皆腹が出た醜い姿ではあるが、達人の鈴木と比べても引っ込んでいる。戦力上昇に伴いスリムになっていると言う事だろうな。そして、それぞれの顔は微妙に違う。魂は死んだ時の姿に反映されるのか? 亡者に変わっても死んだ時に近い形から腹が出た醜い姿に崩れるようだな。そして生まれ変わるまではその姿からは成長しないと思う。成長するのは戦力のみだろうな。
「たすけてー」
つみつみ
ぬ! 子供の亡者達は石積み作業をしている。
「うるさいオニ! 早く小石を高く積めオニ。出来るだけ芸術的になあ」
お? この鬼は……頭上に豪傑Ⅰと輝いている。豪傑Ⅰの青鬼だ。ついに野草を採る事の出来そうな戦力に達している鬼を発見。しかし青鬼と言うだけあり、非常に非情で冷徹な性格の様だが……
「はいいいい……しくしく……あっ」
つみつみ ぽろり
「勝手に落とすなオニ!」
ばきい
金棒でひっぱたく。
「すいません……痛いよお……しくしく」
これは……まさに地獄絵図である……確か親よりも早く亡くなってしまった子供達が、その罪を償う為に、石を自らの意志に反して石積せざるを得ない。何もしなければ鬼にいじめられてしまう。こんな無意味な作業を強いられている場面か……しかし、いつ見ても意味不明であるな。積んだ事でどうせ鬼に崩される。
その繰り返し……鬼も虚しくないのか? そんな単純作業を見守り、永遠にこの場所で子供の魂に無意味な作業を指示し続ける鬼。
「お、この塔は壊し時オニ……たあっ」
がらがら
「わああ……折角積んだのに……」
「じゃあまた積めばいいオニ」
ピキーン
ぬ? 何やら戦力の上がる音が聞こえて来た?
「はい……」
がらがら
「また強くなってしまったオニwやはり賽の河原は成長しやすいオニw」
何を言っているのだ? この鬼……まさか? 亡者をいじめると戦力が上昇するという事なのか? 賽の河原にいる亡者は全て子供。それをいじめると戦力が上昇する様である。前回の針山の鬼が言っていた通り、戦力が高いな。そう、賽の河原は戦力が高い亡者ばかり。それをいじめる鬼の戦力も上昇しやすいのだろうな。
「酷い光景……そういえば私もママよりも先に死んじゃったのよねえ……親不孝者のアリサ様って事か……」
そうなのだ。まあアリサ様ではないがな……何故臆面もなくさらっと言えるのだ……だが本来彼女は賽の河原に初心Ⅰの状態で送られる筈なのだ。恐らくな。だが、何故2500000もの戦力で虚無平原に飛ばされた。これはおかしい事だと感じる。それに装備もかなり強い状態で、亡者にならないと装備出来ない筈の装備を身に着けた上で魂の状態でここに飛ばされた。何か理由があるとは思うが今のところ分からぬ。これこそが主人公特権と言う事なのか? まあ確かに地獄に落ち、ここの子供たちと一緒に石を積む作業を延々と語るのは辛いし、見る方も嫌であろう。そして1000000到達し、復活したらアリサではない別の赤ん坊として生まれ変わってしまうだけ。そうなってはこの小説は本当に終わりだ。だからこれは、アリサだけは地獄でもアリサで居られるという
【何者かの】
強烈な力が働いている。そう、それでいいではないか。そういう事にして置こうよ。
「多分私、ここで作業している筈なのに、気付いたら虚無平原に居たのよねえ? 何でかしら? ……よし、聞いてみよう!」
「ねえ」
「何だオニ! 今子供たちが必死で積み上げた物を壊す喜びを満喫しているオニ。更にはそんな簡単な作業で戦力がモリモリ成長している瞬間も堪能しているんだオニ。邪魔するならこの成長し切った肉体から振りかざされる金棒でひっぱたいて……」
豪傑程度で成長し切ったとぬかしておる……狭小な視野だ……
「へえ……最悪の趣味ね。そういうの聞いてると虫唾が走るんだ。ひっぱたく? 本当にお前如きに出来るのかしら?」
「何がだオニ? お前如きだと? 生意気な……くらえええええい」
ブン!! スカッ ゴン
金棒はアリサに当たった? いや、ブン!! と、ゴンの間にスカッという祇園が……ぬ!! 間違えた! 擬音が響いている。という事は振りかぶり、アリサを通り過ぎ、地面にぶつかったという状況をこの3つの擬音で上手い具合に表現しているのだ!!!
「ん? え?」
「思った通り、霊体に物理攻撃は効かないw」
にやにや とことこ
ニヤけながら青鬼に近づく。
「わ、わああああこっち来るな! 近づくなああああああ! こいつ霊体だったオニ? 装備しているのに……え? ええええ? し、神裔? 4? な、なんで? この階級になると魂でも装備が可能という事オニ? そんな仕様あったのかオニ? 初めて知ったオニ……こんな所にそんな化け物が……そんな奴……手に……負える訳がない……」
最後は語尾を付けるのも忘れ、アリサの強大な圧力に地面に膝をつく青鬼。
「え? 神様が助けに来てくれた?」
「神様……」
「神様……」
「僕達」
「私達を」
「ここから解放してください……」
「ここから解放してください……」
子供亡者も卒業式の練習の様にアリサに懇願する。
「ええ、勿論そのつもり。全く意味の無い事だし、みいんな助けてあげる」
「本当ですか?」
「うれしい!」
「やったあ」
「ブオオオオオオオオ」
ぬ? ほら貝の様な音が鳴り響く。それを聞くや子供亡者達の目の色が変わる。
「え? みんなどうしたの?」
「獄内領主が現れましたオニ」
「お姉ちゃん! 行こう! 早く」
「え? え? どうすればいいの?」
「えっとね、6つの地獄のどこかに無作為で獄内領主って言う大きい鬼が出るんだよ」
「え?」
「そいつを一回でも攻撃する事が出来れば6000ヘル、トドメを刺すとなんと75000ヘルと7000戦力上昇するんだ。お姉ちゃん神裔様だからトドメめ狙えるよ! 僕と後三人で5人組を作ろう」
「手を繋げばいい感じ?」
【アリサが亡者のパーティーに参加しました】
「よろしくね」
「よろしくお願いします! これでこの5人は同じ報酬が貰えるんだ」
ガシッ
「ありがとうお姉ちゃん。じゃあ賽の河原付近をまず探そう……」
「ええ……」(そういうのもあるのね……これはソシャゲで言う特定の時間に登場する
【ワールドボス】
っていう奴でしょうね。でもそれだとしたら今の私には全く必要ないんだよね。だってお金も力も要らないんだし……まあこの子達にも還元出来るならいいか)
「あっ丁度ここに来てた! いそげ!」
ダダダダダ
運よく賽の河原に出現していたようだ。
「オニーオニーー」
ブンブン
領主と言っているが、ただの赤鬼が5倍に膨れ上がっているだけで、金棒を振り回しているが、誰にも当たってない。あさっての方向を殴っている。倒される為だけに作られた張りぼてのような討伐イベントだな。こんな無抵抗のサンドバッグを攻撃しただけでお金が貰えるなら誰でもやるだろうな。恐らく地獄の責め苦に従事している亡者も一旦中断し、死に物狂いでその鬼を殴っている。鈴木も参加しているな。
だがそうすると何か罰を課されないのだろうか? 責め苦は6時間ぶっ通しの筈だが……途中抜けはどうなのだ? まあいい。
「あいつだよ! 殴って見て! 早くしないと誰かに倒されちゃう」
「そうか、早い者勝ちかぁ。よし、アリサダッシュきいいいいいっくうううう」
ドガッ
「やられたオニ―」
バッターン
鬼は倒れると消滅してしまう。
「す、凄い」
「え? もう終わり?」
ピキーン『日・獄内領主最終一打 7000』
アリサのみに75000ヘル、パーティーメンバーにはそれぞれ6000ヘル獲得!
「わーいわーいありがとう小さい神様! これで美味しい料理が食べれるよ……」
「へへへ! まあ小さいは余計なんだけどね!」
「おーい早く戻ってくるオニ、出歩いていいのは獄内領主間だけだぞ」
オニが連れ戻しに来る。成程この期間だけは責め苦から中断してもお咎め無しの様だな。
「散々いじめてる癖にまだ仕事させるの……お前の快進撃もそこまでよ!」
「いや、でもその……強くならなければ鬼も別の部署に飛ばされてしまうオニ。だからいやいや涙をこらえてこんな事をしているオニ。心からそんな事したいとはこれっぽっちも思っていないオニ」
「さっきのあの表情を見たばかりの私にそんなウソが通じる訳ねえだろ!」
「くそ! 後2時間積めば帰れるオニ。それくらい我慢するオニ」
「でも明日も同じ事をするんだろ? もう、卒業させてやれ」
「止めろ! そんな事したら秩序が乱れるオニ! しっかり最低100万までは貯めないと許せないオニ!」
「黙れ! そんな無意味な事やらんでとっととハムスターに……おっと、人間に戻してやれよ。十分やったろ? それにこの子らが人間になればお前の仕事も減るだろう?」
確かに大多数の人間は同じ教育、同じ仕事を死ぬまで続け、まるでハムスターの様に同じところをくるくる回っている内にまたここに来るかも知れぬ。だが、生まれる前からそんな事を言ってはいけないぞ?
「駄目オニ! それにここは6つの地獄の中でも比較的早く卒業できる地獄オニ。6時間で4000オニ。地獄の中で最高に戦力の得られる地獄オニ。それに暑さや寒さ、痛み等もなくただ石を積むだけでそれが得られる。言わばこの子供達はエリートだオニ」
「まあ子供の内に死んじゃった訳だから早く生まれ変わらせてあげたいという優しさなのかな? でも精神的にくるわよ。この地獄を経験して生まれ変わっても、あの時積んでいた石の様に積み上げてきた人生が崩されちゃうんだって怯えながら毎日生活しそうじゃない?」
「そんなの忘れているオニ! 記憶は残らない筈オニ!」
「でも、前世の記憶が残っている人もいるって聞いた事あるわよ! そういう人は、地獄に居た時の記憶も残っているかもしれない」
「そんなの一握りの筈オニ。そんな少数派の為にこの地獄のルールを変える訳にはいかないオニ!!」
「もうその無意味な事をしてる場合じゃないのよ? さっきね、閻魔が死んだのよ。何者かによって殺されたのかもしれないのよ。あんた犯人が誰だか知っている?」
「ええ? なんでオニ? 嘘オニ……知らないオニ! 神王Ⅳがそこら辺の雑魚にやられる訳がないオニ」
「まあコイツが知ってる訳ないか……でも死んだのは本当よ! 実際に優秀な現役の鑑識が死亡診断を口頭で発表していたし……その犯人を今、名探偵の曾孫である私が捜査しているのよ! でも捜査だけじゃ駄目になったわね。正義のハートが目覚めちゃったよ。この、河原にいる全ての亡者を開放なさい」
「そ、それだけは無理オニ」
「そ れ は こ っ ち の セ リ フ だ!!」
<神> <裔>
「ひええ……」
「冷静になってよ! 閻魔が居ない以上いくらここで積んでも先に進めないでしょう?」
「た、確かに……閻魔様が亡者の出処進退全てを管理している筈オニ……でも、じゃあ俺達はどうすればいいオニ?」
「自分で考えろ! まあ今は特別休暇と考えてゆっくり休んでいればいいんじゃない?」
「休んでいいと言ってもPSⅤもスッイチもニンゲンドー4DSも何もないオニ。ここでぼうっとするしかないオニ」
「贅沢な悩みね……」
「カルタがあるよ」
「え?」
子供亡者がそれを持ってくる。
「オイラはそれ嫌いオニ」
「そうなのね? そういえば店で売っていたなあ。これで時間を潰すの?」
「そうだよ。毎月一回大会があるんだよ。そこで優勝するとヘルとレアアイテムが貰えるんだよ。持っている人しか参加資格がないけどね。その大会今日なんだよ。神様も行こうよ」
「へえ、じゃあそれで優勝目指しなさい。大会前もしっかり練習するのよ?」
「神様は来ないんです?」
「私は虎ちゃんが腐敗するのを防止する為に薬草集めないといけないの。ついでに閻魔の死を調べる仕事もあるから。私は参加できないけど練習頑張りなさいね」
「うん! 頑張るよ」
「その前に石積みオニ!」
「しつこいわね……まてよ? ……この鬼……一応豪傑Ⅰね。なら採れるのかしら……暇ならちょっと来なさい」
「どこオニ?」
「この辺に薬草が生えていない? 賽の河原には亡霊ハコベラってのがあるのよね?」
「ありますオニ」
「ちょっと聞きたいんだけどそれを採取可能?」
「ええと一応出来るオニ」
「よし! 亡霊ハコベラの所に行きましょう!」
「ええ? 何でおいらが?」
「暇つぶしになるでしょ? それとも子供亡者達とカルタやる?」
「ううっ……分かりましたオニ」
とことこ
そしてその植物の目の前に到着する
「これが亡霊ハコベラかあ。花がまるで化け物の顔みたいになってるね。ちょっと怖いわ……でも健康に良いんだっけ? じゃあ採取して。2本ね」
「了解オニ……ぬん!」
ポン、ポン!
「おお! ナイスよ! よくやったわ!」(この私ですら採れなかったのに……でも、私が採れないという事は秘密にしとこっと。もしばれたら弱みを握られ、主導権が逆転されかねない。こいつだけであと5種類集め切る!)
【亡霊ハコベラ×2獲得!】
「これくらい平気オニ。じゃあこれで帰っていいオニ?」
「いいえ? これから後5つの薬草をそれぞれ2枚ずつ取ってもらうわ」
「面倒オニ」
「たったの5か所だから。さあ行くよ!」
ダダダダダ
「あーれーオニ」
「もう着いちゃった!」
「はあはあ、走っただけオニ……疲れるオニ……ここは? 針山オニ!」
「じゃあここでは包丁ナズナを2本ね」
「よしさっさと終わらせるオニ」
とりとり
「終わったオニ!」
【包丁ナズナ×2獲得!】
「ありがとう! じゃあ、次は血の池ね」
ダダダダダ
「ちょっと休憩……」
「大丈夫。私は平気だからさ」
鬼の体力は一切気遣う事はない。これが子供なのだ。
「はあはあ……やっと血の池に……もう疲れたオニ……」
「ここは悪魔セリだったわね。お願い」
「はいオニ。ぬううう」
【悪魔セリ×2獲得!】
「ありがとう。じゃあ次は釜茹で所よ!」
「と、とんでもない事になったオニ……これが子供を一方的にいじめていた事に対する罰なのかオニ?」




