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修羅場②

 よってらっしゃいみてらっしゃい。犬も食わぬ夫婦(?)喧嘩。

 いやぁ、俗人なら仕方ねぇってもんですよ。他人の不幸は蜜の味。

 みんな大好き、修 ☆ 羅 ☆ 場 ☆


 レサンさんの、双方の心を抉って傷つける言葉。

 赤の他人じゃないな、一夜寝た仲……カーチさんにバレないように気をつけないとな。あとでキーやんにもキツくいっておこう。

 俺が死ぬ。なんとかカーチさんに勝っても、カーチさん殺したらエルフたちと戦争になりそう。どのみち死ぬ。


 一夜だけの仲の俺でも、グッと刺さって再起不能になる一言なんだろうなって分かる。そんな言葉を受けたカーチさん。ちょっと首を傾げただけだ。

 レサンさんの手を離さない。

「……っ」

 レサンさんは、カーチさんの手を振り解いた。

 そのまま、カウンターを飛び越えようとして、カーチさんにすがられる。

 レサンさんのカウンターの飛び越え方ってあれだからな。両足でジャンプ、そしてカウンターに両足ついて、すっと降りるってやつだからな。

 ジャンプのタイミングを邪魔されたら、仕方ない。

 カーチさんが全体重を後ろにかけることで、レサンさんが倒れないように防ぐ。


 カーチさんは大体、170くらい?

 まぁ、俺と同じくらいだが。レサンさんが2m以上あるんじゃね?

 だから、体格差があるんだよな。

 レサンさん、体格もいいからな。しかも、レサンさんが変態して女になるんだろ? 背丈とかは変わらないだろう。


 ちょっと想像した。

 そのまま柔らかい曲線を持つ身体になったレサンさん。多分、スキンシップ過多なところは変わらないだろうから、胸は小さくても大きくてもどっちでもドキドキさせられそう。

 でも、カーチさん小さいからな。うーん。レサンさんは、好き好きってモードに入ったら、普通に抱き上げてそうだな。

 で、髪ももふもふってハグしていく感じで。白いレサンが黒いカーチさんを抱きしめる。

 なかなかにエモいな。


 カーチさん、病んでるのは兄貴のことだけっぽいぞ。

「レサン、僕は絶対に諦めないよ。絶対に。いつまでも待つもの」

 前言撤回。ヤンデレだな。


「僕が待つの、得意なの、レサンは知ってるでしょ?」

 お?

「まぁ、待っていられなくなって、こうして近くにきちゃったんだけど……」

 あれ、意外と受け身でらっしゃる?

 長寿族だからな。レサンさんいなくなって20年くらい待って、追いかけてきたとかありえるよな。

 いや、やべーな。レサンさん出ていった理由によるけどよ。

「冒険者になっても結局、待ってばっかりだよ。でも、レサンがいない生活なんて考えられないから」

 あ、元から冒険者じゃないんだ。生き方変えてまでレサンさん追いかけてきたの? 頑張るじゃん? 20年(仮)かかってるかもしれない可能性はあるけどよ。


 めっちゃ口説くなー。

 ヤンデレなのは否めない。否めないけど、何も答えないレサンさんに対して、ちゃんと一呼吸おいて、聞いてるか確かめて話してる。

 レサンさんの後ろから縋り付いてるから、その顔は見れないんだが。

 コミュニケーション取れない感じじゃないんだな。


 キーやんがちょっかい出しに行きたいらしい。

 飛び出そうとするので、こう、胸の前で腕をぐるぐるしてる。

 飛び出そうとするキーやん。それを止めるために、俺が右腕で抑える。キーやんは諦めないので、また飛び出す。それを左腕で抑える。エンドレス。

 ぐるぐるぐるぐる。

 いや、いい加減諦めろよ。


 そして、動じないソレナさん。

 カウンターでバランス崩しかけた時とかな。ちょっとは作業止まっても良さそうなのに、全然。全然止まらない。

 集中してたら全く周りの音が入らないタイプなのかね。

 それとも、この二人のこのやりとりってそんなに、しょっちゅう発生するの?

 うーん、まぁ、毎日やってるわけじゃないだろうし。カーチさんも人がいなくなるまで待って戻ってきたんだろうし。

 って、ことを考えたら、俺、別のところで暮らして冒険者として自立したら、そんなにみないで済むはずだよな。な?


 カーチさんはガチだな。本気でレサンさんのこと好きっぽい。愛してるなー。いいなー。俺も愛されたいなー。

 それを振り解かないレサンさんもなかなか。気がないってわけじゃなさげなんだよな。

 レサンさん、本気で興味なかったらスルーしそう。いないものとして扱いそう。偏見だが。


 口説く。ひたすら懇願するカーチさん。

「レサンの好きな柚子茶、いつでも入れられるようにしてるからね」

 好物を把握。これは高得点だな!

 まぁ、気遣いとかできてレサンさんが出ていく理由が謎なんだが。レサンさんの髪がちょいモフッとして動揺してるから、柚子茶が好物なのは合ってる気がする。

「それから、僕と一緒に寝たくないだろうから、ちゃんと毛布を用意してる。僕は居間で寝るよ」

 うわーそれでも喧嘩中の夫婦だけどな。別居状態よりマシってことか。気まずくても一緒にいたいとか……重症だな。レサンさん病。分からないでもない。もふもふあったかいしな。


 カーチさん、もう言えることがなくなったらしい。

 ただ、レサンさんは離さない。ね、粘るな〜。


 レサンさんも振り切ればいいものを、そのままだしな。

 これ、レサンさん全然俺の見張りになってないぞ。ここで出ていっても絶対に気づかれないと思う。ソレナさんは一心不乱に仕事してるしな

 いや、まぁ、俺に逃げる余力はない。

 なぜか知らないが、キーやんが二人にちょっかいかけたくして仕方ない。これを止めるのに必死だ。

 瞬間移動されたら止められないんだが? キーやんどうした?

 遊んでるだけならやめてほしい。ハムスターの回し車的なな。

 俺は腹が減ってるんだ。お前に構っている体力はない。


「僕は……僕はレサンに選んでもらえて、本当に嬉しかったんだよ……?」

 あああああああああああ。

 俺が代わりに叫んでおく。

 レサンさんに、レサンさんに選択権あるんだ。分かる? 誰でも選べるわけよ。

 で、歳の近い、長寿族だから歳の近いっていっても半世紀くらい離れててもおかしくないが。

 何人いるか知らないが、その中からカーチさんをレサンさんは、一旦は選んだんだな?

 一旦は同居とかしたけど、何かうまくいかなくて別居状態になってると。


 そうだよなー。カーチさんの兄貴? 一卵性の双子みたいだし。

 兄貴も候補にいる中で、自分選んでくれたら、それは嬉しいだろうな。

 そりゃレサンさん病にもなるわー。


 レサンさんに選択権がある。だから、さっきの「ジジイどもの子を孕んだ方がマシだね」発言だろ?

 それでレサンさんも傷つくって大概レサンさんもカーチさんのこと憎からず想っているってことになるんだが?

 何が、何が恋路の障害なんだ?


 最後の一押しはレサンさんの琴線に触れたらしい。

 レサンさんの髪がボフッと大きく、大きく広がる。

 カーチさんはレサンさんの髪に完全に埋もれた。

 あれだな。有名アニメ映画で見たことがある。ボフって広がるやつ。あれは灰色だが。

 あ、でもなかなか、戻ってこない。

 ボフっじゃないな。ボっだな。

 静電気で広がって元に戻らない毛玉みたいな。


 何見せられてるんだこれは。

 流石に異常を察したキーやんが止まるレベルだぞこれは。


 カーチさんはレサンさんの髪に完全に埋もれたままだ。若干息苦しいだろうが、ご褒美だろうなー。あったかいしなー。

 レサンさんはしばらくして理性を取り戻したらしい。

 髪が戻っていく。おい、レサンさんおい。

 俺は見ました。カーチさんの身体をさりげなく撫でながら戻っていくのを見ました。

 あーなんだそれ。

 なんだこの二人?

 

 レサンさんがカーチさんの腕を優しく振り解く。

 そして、向かい合って、

「だって、だって、カーチ、勃たないじゃん……!」

 ちょっと理解してないキーやんを抱いたまま、ギルドのドアをちょい開ける。

 大丈夫、大丈夫。誰もいない。オッケー。

 万一、ギルくんとかが近くにいたら事故だからな。絶対に近隣に聴かれるくらいの声量だからなこれ。


 あー。

 なるほど?

 カーチさんの病みの理由、兄貴のせいかな? すごくショックなこと、カーチさんが記憶を歪めてしまうような出来事があって。

 それで、そういう、そういう問題が起こってしまったと。

 レサンさんが変態するのは子ども産むためだから、レサンさんが二人でいる理由を見失ってしまったと。


 キーやん、そういうことだ。わかったか?

 わかってないなーこれはわかってない。

 虹色になってるわ、キーやん。

 人型の子作りから説明しないといけないなこれは。


 そして、ソレナさん。

 動じない、全く動じない。

 どうなってるんだこの町は……。

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