王女と錬金術師。その二
何日か放置してました。
泊まり込みえぐい。
「ケルケルはどこかみたいところあるっすか?ないならそのまま離宮にいくっすよ」
ルルリアは王女の護衛のはずなのに一人、先行している。それを咎める様子もなく王宮内の案内は順調に進んでいる。
「ケルト様、退屈ではありませんか?」
あまり楽しそうな表情をしていないケルトを見て王女グレイフィアが尋ねる。別に楽しいとか楽しくないとかそんなの関係なしに生まれつきの顔なのだが、王女にはそう見えたらしい。
「そんなことはありませんよ、俺はあまり表情が変わりませんから」
「ケルトお兄ちゃんは普段ムスってしてるもんね。いつも笑っていればいいのに。そうすればみんなきれいな笑顔が見れてハッピーだよ」
「いつも笑っていたら腹黒い人みたいだから俺はしないよ。それにここぞって時に笑顔を見せると笑顔にありがたみがあるからね」
「お兄ちゃん、あざといね」
「……どこでそんな言葉覚えてくるの?」
「ギルドにいるエルフお姉ちゃん」
ティアの言葉に首を傾げるケルト。ケルトの記憶ではエルフがガルムにいるという話を聞いたことがない。普段自分の家に引きこもりがちのケルトは世間の変化に疎い。
そのせいもあるんだろうなと一人で納得する。
「羨ましいです、ケルト様」
二人の会話を羨ましそうに見つめるグレイフィア。
「何がですか?グレイフィア様」
「二人の関係が、と言いますか。楽しそうに会話をする姿がとても」
「俺とティアは兄妹みたいなものですから、一般的な兄妹はこんな感じだと思いますよ。昔、姉だったか妹だったかいたような気がするんですよね」
「確か、ケルト様は記憶が」
「ええ、半月より前はほとんど覚えてません。最近少しずつ思い出したこともありますが……その一つが俺に血を分けた存在がいたということです。と言っても顔も思い出せませんが」
ケルトは乾いた笑いで遠くを見る。
「お兄ちゃん、初耳だよ」
「そりゃあ、今初めて話したからね。当然初耳のはずだよ」
「ケルト様の血族ということはその方もダークエルフということですか?」
「そこのところは思い出せない。両親が魔族とエルフだから当然血を分けているからダークエルフなんだろうけど……ダークエルフという印象じゃなかったような気がするんです。ただ、記憶があいまいなだけなのかもしれませんが」
「湿っぽい話はその辺にしておくっす。それよりもついたっすよ」
浮かれ足で先行した彼女はくるりとこちらを見ると話しを断ち切った。
「記憶はいつか思い出すときがくるっす。それは明日かもしれないし、十年後かもしれないっす。そればかりは魔法では治せないっすから、無理に思い出そうとしても精神が疲れるだけっすよ、ケルケル」
「そうだね、それよりもここが?」
離宮と聞いていたケルトはもう少しこじんまりした建物を想像していたのだが、目の前にあるそれは一国の城と言ってもいいくらいの大きさがあった。
「あんまり面白いところではありませんが、どうぞ中へ」
グレイフィアが中へ入るとそこにはメイドが何十人と列をなし、ケルトたちを出迎えた。
「ようこそいらっしゃいました、シエルハイム卿」
「シエルハイム卿?俺はそんなに偉い人間じゃないんですが」
「もしかして、ケルケル聞いてないっすか?この国で誰も治せなかった病を治した功績で治癒師名誉顧問って称号もらうって話っすよ。貴族の仲間入りしたって国王陛下が言ってたっすけど」
ケルトはとりあえず歓迎してもらえていることに安堵することにした。
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