勇者VS錬金術師。その四
「れ、錬金術師!!錬金術師ってあれですよね、あの真理を追い求めるとか」
迫りくる斬撃の攻防をしながら、勇者はケルトに尋ねる。
「あながち間違いではない」
「錬成陣もなしに錬成するのってやっぱ、どっか持っていかれてたんです?」
「持っていかれた意味が分からないが、そんなに喋っていていいのか?体力が続くのか?」
勇者を見ると明らかに肩で息をしている、疲労が限界に達している証拠が目にとれた。剣に動きを任せている勇者は無理な動きが続き、ケルトの攻撃を封殺している。いくら性能が優れていても使い手が未熟では生かすことができない。
「シっ!!!」
己の限界を知っているのか勇者は防御を捨て、残りの体力を全て攻撃にまわす。ペース配分なんてものはないしこれで倒れてもいいという気概が感じられる。
「僕の世界では戦いがずっと続いていたんです。ずっとずっと、僕が生まれるずっと前から」
ケルトが長剣を上段に構えた瞬間に一歩早く懐へ飛び込む。
「そうか、でも残念だ」
「え」
「戦いがあるのはお前の世界だけじゃない、それに考えが甘い。血塗られた歴史が今を作っているのはこの世界も同じだ。だから兵士は日々、鍛錬をし、治癒師は日々人を癒す。鍛冶師は日々剣を研ぎ、冒険者は日々命がけでその日をつなぐ」
言葉を終えると勇者の足元がぐにゃりと歪んだ気がした。
「お前は日々訓練していると言いたそうな顔をしているが、所詮血でその身を汚していない素人だ」
「足がっ!」
勇者の足は泥沼にでも沈むかのようにみるみると下半身を地面に食われる。
「性質変化させるのは錬金術じゃあ、常套手段だよ。だから錬金術師と戦う際は術を発動させてはいけない。これは常識だ、覚えておけ」
勇者は全身に魔力を循環させ身体強化の循環効率をさらに上昇させなんとか抜け出そうとする。
「……砕け!」
地面とは逆に放ったボウガンの矢。天井に放ったそれが光を放つと勇者の頭上に数十を超える石槍が針天井を思わせる。
それはケルトの言葉に反応するように一斉に、勇者に降り注いだ。
「全てを耐え忍べ!!アイギス!」
勇者の使っていた剣は言霊に反応し、その姿を白銀の盾へと変化させる。
「これは……さすが勇者といえばいいか。だが、満身創痍じゃないか」
「そうですね、……正直能力を連続使用は体がきつい、です」
「なら、休め。俺からお前にいえることはそれだけだ」
全身全霊を使って泥沼かとした地面から切り抜けた勇者は、ケルトの言葉を聞いてからそのまま地面に倒れこんだ。
「勇者様っ!!」
周囲で見ていた兵士たちが一斉に勇者に駆け寄り、治癒師をすぐ呼ぶように叫んでいる。
「見事。流石じゃよ、おんし」
ケルトが少し離れたところで地面に腰を下ろすと背後から声をかけられる。
「……誰、ですか?」
「しがない老人じゃ、老い先短いからの。こう言った戦いを見るのが好きでな。それにしてもその耳本物じゃろうか?」
「ええ、本物ですよ。でも触らないでくださいね、たぶんエルフとかもそうだと思いますけど、敏感なんで」
「女子なら大歓迎じゃが、男で楽しむ趣味は残念なことに持ち合わせておらんよ。それにそんなことをすれば後ろがうるさそうじゃ」
老人の後ろにはルルリア、ティア。そしてグレイフィアの姿があった。
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