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辺境の錬金術師  作者: 木偶の坊
勇者降臨編
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勇者と錬金術師。その八

「国王陛下に会う前に、ちょっと会ってほしい人物がいるっす」


 ルルリアは玉座の間とは反対の廊下を歩きながら告げる。


「グレイフィア様ですか?」


「グレイフィア様にも会って欲しいっすけど残念ながら違うっす。でも国での重要人物っす」


 ケルトはある噂話を思い出す。


「勇者ですか?」


「ご明察っす。勇者京一郎様っていうっす」


 歩いてしばらくすると金属同士がぶつかるような甲高い音が廊下にまで響いている。


「……この先は訓練棟か何かですか?」


「そのまんま訓練棟があるっすよ。勇者様もそこにいらっしゃるはずっすから」


 何をさせるつもりなのかと嫌な予感を感じながらもルルリアについていく。ケルトの予感があまり外れたことがないことにやや頭を抱えたくなるが、ひとまずついていくしかない自分を恨みたくなる。


「俺は戦えとか言われないことを祈るしかないないな……」


 一人静かに項垂れるケルトだった。



 訓練所に到着するとそこには異国の服、黒に統一された飾り気のない服を着た黒髪の女性受けしそうな優男に、極東の神官服を纏った少女。


 ケルトは二人に視線を向けるがどうやら二人は気づいていないようだ。


「あれが?」


「勇者と巫女っすね。勇者様は剣術と魔法を、巫女様は回復中心の魔法の習得中っす」


「勇者は普通よりも習得速度が早熟だと聞くが……どれくらいで戦えるくらいに?」


「最低でも五年と言われてるっす、人間相手ならもう二年は短縮出来るっすけど……相手が相手っすから」


 人間相手なら三年で戦争出来るほどに力を付けられる勇者の性能に内心驚愕を覚えつつも、一通りの剣術を覚え始めている勇者がどれほどできるのか見てみたいという気持ちも少なからずある。


「勇者の世界・・には魔法はないと聞いてますが、正確には書物にそう書いてあったのですが……あのイメージを具現化する速度を見るとそうは思えないんです」


 王国の騎士相手に魔法を使っているところをみる限りでは魔法の扱いに長けているとは言わないがそれでも魔法の構築速度は才能の差があるとはいえ、召喚されて数か月の人間のそれではない。


 そのためケルトには魔法ではないにしてもそれに近い何かがあったはずだと推測する。仮に錬金術師という名の研究者であるケルトからしてみれば未知との遭遇だった。


「竜胆様の話だと異能力があったそうっすよ。魔法とは違う力らしいっすけど結局見せてもらえなかったっす」


「その竜胆っていうのは勇者の名前ですか?」


「自称一般人っすね。勇者様とは別人っす……これはあってはいけないことっすけど、勇者様よりも断然強いっす」


「そのリンドウって人はどこにいるの?」


 ティアの言葉で僅かに視線を逸らしたことにケルトは気付く。


「脱走、というか居なくなったわけですか?王女様の護衛が嘘を付けないというのは考え物ですね……どこへ行ったかは分かっているんですか?」


「勇者様の話だとかなり汎用性の高い能力を持っているようっすね。見せてもらったわけじゃないっすから感想は求めないで欲しいところっすね。ただ誰にも気づかれずに王宮から消えたとなると無視出来ないっす」


 ケルトは何かを考える素振りをしながらこれから人類の希望となるであろう自分の様子を見ることに専念した。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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