勇者と錬金術師。その六
本日二話目。
やや、遅い更新ですけど。
「王都はたぶん初めて来たけど、広いですね」
「それはそうっすよ。人間界で最も大きい国っすから、当然その王都ともなれば広いに決まってるっす」
胸当て越しからでもわかる豊満なそれをこれでもかというぐらい張りながら、嬉しそうに歩く。
「あれれ、胸の大きな女性は嫌いっすか?」
ケルトの前を歩くルルリアは、視線が釣れなかったことに驚く。普通なら視線を釘づけに出来てるはずなのにと首を傾げる。
それをケルトの後ろで見ていたティアはあざといなと思いながらも特に何をするというわけでもなくてくてくとついていく。
今、三人がどこを歩いているかと問われれば、王都の中心地である王宮が目と鼻の先にあるところまで到着していた。
「剣舞祭は明日っすね、間に合ってよかったっす。ケルケルは出るんすか?」
それを聞いたティアも期待を込めて師匠であるケルトを見る。
二人を交互に見たケルトは肩をすくめながら、出ないと告げる。
「出ないっすか……残念っす」
「俺は戦いが専門ではないですから、出ても一回戦で負けますよ」
「ケルトお兄ちゃん、負けないと思うよ」
「それは買被りだよ、ティア。俺はそこまで強くないし、自分を守ることがぎりぎりできる程度の実力しかないよ」
「相変わらず、ものすっごい嫌味に聞こえるっすよ。謙遜も過ぎれば嫌味になるって知ってるっすか?うちのとこの団長を息を切らすことなく無傷で倒したのはどこのどいつっすか。戦いに立ち会った人間はケルケルが強いってことはみんな知ってるっすよ」
第二王女であるグレイフィアの治療とは言っても簡易的な術を施しただけ(ケルトにとっては)のケルトは治療の合間に近衛団長からの手合わせをしてほしいといわれ、それに応じている。
国王立ち合いのもとの試合で、最初は押され気味に見えていた戦いだが結局、ケルトが無傷で疲れることもなく試合が終わり蓋を開けてみれば圧勝の一言で片付く試合だった。
おそらく近衛団長の誇りを傷つけたであろうその試合は国王のもと他言無用としている。
ただ、当の本人。つまり近衛団長はケルトが自分と同じ土俵、剣術で勝負し負けたことで剣を教えてほしいというほど心酔していたりする。
これが女性ならと思わなくもないケルトだが、特に無下に扱うことはなくケルトが教えられる範囲で教えており、王都を訪ねた際はまた稽古という名の試合をすることを約束している。
そのこともあってか試合を直接見ていた人間からすればケルトの実力は確かなものだと認識している。
「謙遜をしているわけではありませんけどね、俺が強かったのではなく、記憶を失う前の俺が強かっただけと俺が言いたいです」
「でも、お兄ちゃん。記憶を失う前も今もお兄ちゃんはお兄ちゃんだよ、その言い分だと自分は最強だって言ってるようなもんだよお兄ちゃん」
妹分兼弟子であるティアに言われ、逃げ道を失うケルトだった。
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