勇者と錬金術師。その五
行商人からの買い物を経て、王都に到着したケルトとその弟子であるティア。
二人は関所で王族からの書状を見せると簡易的な検査のみで関所を通ることが出来た。一緒に来た行商人はもともとこの町の人間であるためか関所にいる兵士と知り合いだったためか同様に簡易的な検査のみで通ることが許された。
「では、これで」
行商人のマルリアは一礼するとおそろく自分の店の方へと歩み始める。ケルトは前に貰っていた手紙を確認するとそこにはルルリアが向かいにくることが書かれている。
正門からさほど遠くないところにある噴水広場で待つよう指示されていたため、二人は他愛もない話をしながらルルリアの到着を待っていた。
しばらくすると見慣れた女性軍人がこちらに向かって歩いてきていることに気づく。
「お待たせしたっす。ケルケル久しぶりっす、ティアっちもおひさーっす」
相も変わらずに軽い、軽過ぎる女軍人を前に二人は慣れているのか特に疑問に思うこともなく挨拶した。
「王都を案内したのは山々っすけど、グレイフィア様がお待ちっすね」
「ということは王宮へ?」
「そうなるっす。王宮へは歩いて向かうことになるっすけど、その辺の説明いるっすか?」
剣舞祭のせいか王都にはいつも以上に人がいることは見ればわかる。普段王都へくることのないケルトから見ても街には人がごった返しになっていることが見て取れた。
仮に馬車を用意したところでこの人だかりではむしろ歩いて向かった方が早いだろうという判断だ。
ただ馬車等が使えないとなると暗殺なんかを気にするのが貴族やお偉いさんの考えそうなことだが、生憎とケルトは暗殺に怯えるほど弱くはないし、貴族や偉い人物というわけでもない。
王族からすれば命の恩人であるため国賓にあたる人物であるため、いってしまえば偉い人にあたる。
ただ本人にはまったく自覚がないうえに、隠匿された国賓のため民衆からしてみればケルトはただの一般人。個人的な恨みがない限りは暗殺する意味がない。
そういった理由も含めてルルリアは徒歩で王宮へ向かうことを薦める。
ケルトならそのあたりを察してくれるだろうと期待のもと、ルルリアは説明を省くことにした。誰が三人の会話を聞いているとも限らないし、何よりルルリアは説明するのが面倒だった。
それに気付いているのかケルトは肩をすくめるだけで特に何か言うわけでもなく、遠くに見えるおそらく王宮であろう建物に向かって歩き出す。
「ご理解いただけて何よりっす。グレイフィア様の体調は良好、あとで直接診察してくれるとありがいっす」
「それは一応俺がやりますが、ティアにも少し経験を積ませたいので」
「治癒術使えるっすか?」
「ちゃんとした治癒術は少しだけ。でもお兄ちゃんから教わった錬金術を応用した治癒術を使うから」
ティアはやや自慢げに答える。
「それは頼もしいっす。あ、ちょっと待ててくださいっす」
ルルリアは少し前から視界に入っていた屋台に駆け寄ると店主から串に刺さった肉のようなものを受け取るとそれを二人のところへ持ってきた。
「これ、食べてみてくださいっす」
渡された串に刺さった肉を口に持っていくとなんともいえない風味が口いっぱいに広がる。
「お兄ちゃん、これおいしいよ!!」
ティアは満面の笑みでケルトを見、ケルトはそうだねと空いた手でティアの頭を撫でる。傍から見れば怪しい男のケルトではあるがこの光景を見ていると、少女に対して害をなそうとしている人間には見えず、遠くで見ていた見回りの騎士は頭を抱える。
その隣に近衛の一人であるルルリアがいるのでさらに扱いに困るため、遠くで様子を見ていた騎士たちは無視することにした。
「この料理、珍しいですね」
「勇者の国の料理らしいっすよ。巫女様が料理が得意みたいでこうして普及してるんすよ。どれもうまいっすから人気になるのも頷けるっすね」
三人は勇者風に言えば”やきとり”なるものを頬張りながら王宮へと向かった。
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