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辺境の錬金術師  作者: 木偶の坊
勇者降臨編
41/65

ミヤビという少女

0時更新のはずだったのに。


 勇者たちが目を覚めして既に一週間経過している。


 何か変わったことといえば、勇者、巫女、そしてその他に分かれたことだ。勇者には勇者たらしめる刻印が体のどこかにあり、勇者は聖剣の担い手になる。


 どこにでもあるような話。


「やっぱ、京ちゃんが勇者だったね」


 聖職者から渡された巫女服に袖を通し、神社でアルバイトをしていたためかそれなりに似合っているというか着慣れている感がある。


 巫女服としか表現出来ないこの服には幾重にも魔法陣が織り込まれており、一般的な魔導士が戦術級規模の魔法を使っても防いでくれる優れものだとお城の人はいう。


 彼らからしてみれば分かりやすく説明したつもりなのだろうが。


 この少女、何一つ理解していなかった。


「テンプレだね~」


 少女は浮かれていて何一つ話をまともに聞いていなかったのだ。昔からこの手の話は大好物だった。コミュ症までいかないがそれに届きそう程度には人が嫌いで、団体行動というのに若干の抵抗がある、リアルなんてクソゲーだ程度には現実に飽き飽きしていた。


 だからこそ。


 姫様の言葉を聞いたとき、心が躍った。不安や恐怖心よりも好奇心のほうが上をいった。


『元いた世界に戻ることはできません』


 少女が読んできた小説のヒーローやヒロインたちは現実世界に帰ることを目標に異世界を生きていく。


 けど、疑問に思うのだ。


 彼らは本心から帰りたいと願っているのかと。


 ボクはそうは思わないし、思えない。


 確かに元いた世界は、見せかけの平和で世の中が回っている。一つ年上の竜胆さんの話では、そうでもなかったらしいけど表面上は平和だ。


 人は売られないし、歩いていて殺されることはないし、


 いきなり爆発温とか聞こえないし、人がそこらへんに死んでいることなんてまずない。


 ここでは、それが当たり前のようにある。


 無秩序に近い世界。


 それでも人は生きているし、世界は回っている。


 好奇心を持つなという方が難しい。


 ボクは秩序に守られた世界を知っている。隣人という彼らの顔裏は思惑でいっぱいなのを知っている。


 だけど。


 だけどさ。


 ボクは知らない。平和を望む人たちが命がけでそれを目指す姿を。人々の思惑が隠れることなく蠢くことを。


 権力の強さを。


 ボクは知らない。


「うにゃ~。さて、と」


 背筋を伸ばす。

 

 知らない世界を知ろうとして。帰れないことを嘆くのではなく、むしろ喜ぶべきことだと前向きに。


 主人公ってやつにはなれないかもだけど、裏主人公ってやつを目指して。


 ボクはこの世界で生きている。

いつも読んでくださってありがとうございます

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