姫と三人の外界人。その三
今回は短め
勇者たちが覚醒する少し前まで時は遡る。
メルフィアは妹のいる離宮へと配膳カートを押しながら歩いている。歩いているとすれ違う人の少なさに警備面は大丈夫なのだろうかなんてことを考えながら、ゆったりと進む。
目につくような場所にいないだけであってかなりの手練れが王族の警護をしていることを知っている。
彼らは暗部だ。
人知れず王族を守り、名誉や名声を必要とせずただ任務だけを熟す影たち。時に王族の代わりに変装して他国へ行ったり、式典に参加している彼らの素顔は現国王以外誰も知らない。
人の気配に敏感なメルフィアは誰かに見られているという感覚はあるものの、それがどこから見られているまで判断することはできない。人並み外れた感覚を持つメルフィアですら彼らがどこにいるのか見つけることはできない。
王国にいる一流の探査系魔法の使い手でも彼らを見つけることはできないだろう。それだけ彼らの隠密は優れている。
「アギト」
彼らの中で、メルフィアの護衛をしている影。
メルフィアがアギトと呼んだ影は、呼べばどこでも現れる。寝室だろうが、遠征中だろうが、入浴中でもお構いなしだ。アギトの性別がどちらなのか分からない。それは呼ぶたびに姿が変わっているし、アギトはほとんど話すことをしない。一言二言話す以外長話はない。
「わたしの護衛はここまでで構いません。勇者様方がそろそろ目覚めると思います」
そう伝えるとメルフィアの意図を理解したのか、「御意」とだけ答えるとアギトの気配が消えた。
「目覚めていれば知らせにくるでしょう」
妹の待つ部屋の前まで来たメルフィアは小さくそうつぶやき、部屋をノックした。
「フィア?わたしだけど」
その声に反応するかのように部屋のドアが開く、内側にはドアノブに手をかけるルルリアと一人で寝るには大きすぎるベッドで横になっている妹のグレイフィアの姿があった。
「ルルリア、料理長かなり怒っていましたよ」
「やっぱりっすか。あとでちゃんと誤っておくっす」
「それで済めばいいですけど。それよりもフィア、体調はいいの?」
以前見たときよりも明らかに顔色のいいグレイフィアを見てメルフィアはそう尋ねた。
「ケルト様に治してもらったから……大丈夫だよ、お姉ちゃん。残りの治療はルルリアでもできるって言ってたし」
「そう。でも無理はしてはダメよ、わたしの大事な妹がせっかく元気な姿になるっていうんだから」
「わかってるよ、ケルト様にも散々言われたし」
妹の口から出る、妹を助けたであろう人物の名前。ことが終われば正式に調べさせようと思いながら、それでも今は妹の無事の姿に喜んだ。
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