依頼と新人冒険者もどき。その六
雪だー。
今年も積もったね。
残りのボアを狩り終えた二人がケルトのところへ近寄ってくると、アルがこんなことを言った。
「錬金術ってすごいっすね」
先ほどの解体を戦闘の最中に見ていたようで、きらきらと目を光らせている。
「そんなに期待してもこれは教えられないな。錬金術って事象に干渉するちょっとしたズルなんだから。しっかりとした手順や儀礼をしないとリバウンドするから、気をつけないと」
「リバウンドって……」
「俺らは実際に存在している物体、物質に干渉する力を持ってる。空間系統の魔法と相性がいいから出来てるんだけど。リバウンドっていうのは、例えば生物を俺がさっきやったように解体しようとすれば、同じことが自分に起こる可能性があるってところだね」
さらりとケルトはとんでもないことを言ったが、二人はその光景を想像してぞっとした。
「死体は手順さえしっかりとしていれば、まったく問題がないんだけど。一応生きている人間にも使える技術だからね。ただ生きている相手に使う場合は手順通りに出来ないほうがほとんどだから。失敗して死ぬ可能性のほうが高いね」
二人がもってきたボアを今度は普通に解体しながら、錬金術について少しだけ講義をすることにした。
「錬金術師って傍から見たら何でも出来そうだけど、普通の魔法使い同様に訓練をしないといけないし、誰よりも物質について詳しくなる必要があるんだよ。それに過程を飛ばす分だけイメージを固めないといけない。完成形のイメージが弱いと失敗するから」
「アル、牙あまり傷つけないでね。……でもケルトさん、ティアちゃんの錬金術はそんな感じがしませんよ」
「錬金術とは言っても魔法同様に種類があるからね。イメージを物質に還元させるのが創造錬金術、ティアがよく使うのは構築錬金術だね。俺が好んで使う錬金術は戦闘向けと言ってもいいね、けれどティアが使う錬金術はただの石から金を作るなんて芸当は出来ないし、こんなに綺麗に解体なんて出来ないんだよ。こっちが本来正しいといわれる錬金術なんだけど」
「───皮の剥ぎ取りって難しい。先生、血抜きって必要なんっすか?」
ケルトはまったく話を聞いていない様子を見て苦笑しながら、
「血抜きは必要だね。血は薬になるし、肉から臭みを取るって意味でも大切なことだね。野営するときとか出来ればおいしいものが食べたいと思うし。それに綺麗に処理してあると、ギルドで多少は色をつけてもらえるとおもうよ」
「それにしても」
メルが何かを言いかけ、空を見る。
「今が昼っていうのも変な話ですよね。【夜】なのに」
太陽の代わりに月が三人を照らしながら、月明かりの元昼食を取ることにしたのだった。
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