依頼と新人冒険者もどき。その三
孤独なクリスマスも終わったか。
「薬草って結構種類があるんですね」
少女はケルトに訊ねる。
「作りたい薬だったり、もしくは用途だったりで種類は変わってくるよ。俺が知っているだけでも三十種類近くは薬草があるね。薬師だったらもっと他にも知っているかもしれないけど」
「【夜】の間、薬草の種類って変化するんっすか?」
「確かに、他では取れない貴重なものがあるけど効果は大したことがないというか用途に困るというか、俺ら錬金術師には必要なものだけどそれ以外では大したことがないっていう薬草があるね。ギルドに持っていても大したお金にならないかな。状態がよくても銀貨まではいかないだろうね。もしかしたら銅貨すらいかないかもしれない」
銅貨に届かないといえば銅板と呼ばれる鉛筆のような細い銅で出来た棒があるのだが、それを銅板と呼んでいる。通過の価値としては最低価値だ。
因みに通貨の基準としては銅板が庶民の子供が駄菓子を買う程度のお小遣い。銅貨であれば、一週間程度食費なら困らないだろう。銀貨一枚でもあれば三月は生活に困らない。あくまで一般的な庶民の家庭ならということだ。
冒険者であればどうしても武器や防具、そういった道具にお金を消費してしまって銀貨一枚では正直一週間と持たない。
「商人やギルドの役員じゃないとほとんど知らないことだけど、通貨はガルって単位が使われているんだよ。一般的には硬貨で判断しているようだけど。普通の子供にガルなんていっても伝わらないし、どれくらいなのか判断できないからね。それなら銅貨何枚だとか銅板何枚だとかそう言った方が伝わりやすい」
「確か……養成学校って学びました」
「っす」
今どきの養成学校では細かい常識なんかも教えているようだとケルトは感心した。
ちょっとした雑談で時間をつぶしていると、予定よりも多めに薬草採取が出来たようで二人に渡していた籠には溢れんばかりの薬草が入っていた。少女、メルの籠は中央で区切られ、毒草と薬草に分けられている。どちらもこの辺で取れる一般的な薬草と毒草だ。
一方、少年、アルの方の籠を除くと丁寧に積み上げられているものの、メルのような区切るという発想はなかったようで毒草と薬草が混じっている。このあたりを見ると二人の性格が出ていて面白いと感じるのもこの依頼の醍醐味だとケルトは内心楽しんでいた。
「ちょっと、アル。ちゃんと分けないとケルトさんに迷惑でしょ!」
「考えてなかった……」
「それは、気にしなくていいよ。見分けるのはそんなに苦じゃないしね。メルのようにきれいに分けてくれるのはそれでありがたいのは事実だけどね」
「うっ……」
ケルトに言われ、アルは言葉に詰まる。アルなりに丁寧に作業した様子が籠を見ればわかるのだからそれほど責めてはいないのだが、アル的にはダメージを受けているようだ。
それにしてもこのアルという少年はこの一月でだいぶ変わったとケルトは感じている。わんぱく小僧というか無鉄砲小僧という感じは残っているものの、相手に対して配慮だったり、物事を多少は考えるようになってきている。
冒険者にとって大切なのはどんなときでも冷静でいること。取り乱せば、味方だけでなく自分を殺すということを身をもって経験したアルは多少成長したように見える。少なくとも無謀なことはもうしないだろう。
「さて、二人とも薬草の採取はその辺でいいよ。おかけで【夜】の期間中は薬に困ることはないだろうし。ほんと助かってるよ」
ケルトはそういって若い二人の頭を撫でた。
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