依頼と新人冒険者もどき。その一
クリスマスイブってやつですよ。
世間では。
「甘ぇよ……そんな攻撃じゃあ赤ん坊だって止められるぜ」
男勝りの口調をする露出多めの女は目の前の少年に対してそんなことを言っていた。
「次!!お願いします!!」
元気だけは一丁前だなと発しながら女性は構えた。二人が何をしているかというと訓練とは名ばかりの一方的な打ち合いだ。打ち合いとはいえ、一合も持たないところを見ると力の差は明らかだ。
少年は傷が癒えてから一月ひたすらに剣を振った。それに見兼ねた女性、もといクローディアは少年を鍛え上げることにしたのだが、どうもまだまだのようだ。
その近くで少年に負けず、指導を乞う少女の姿がある。手には弓が握られており、何度も弦を引いて手が擦れてしまったのか手はボロボロだった。
その様子を何とも言えない表情で見ている銀髪で紅眼の青年。隣で稽古の様子を見る、小柄な少女は楽しそうだ。
「ケルトお兄ちゃんは教えて上げないの?」
「俺のは我流だし、ティアは知ってると思うけど俺の使ってる弓はある程度錬金術が使えないとだめだし」
「すごいよね、矢筒に矢が切れることなく補充されるだから」
「そのうちティアには教えてあげるよ」
「わーい」
きゃっきゃと笑うその姿に癒されながらケルトは若き冒険者に依頼中どう教えていこうかと計画を立てていた。
初めての依頼の前にドラゴンと戦うことになったんだ……これ以上何を教えろと、そんなことを思いながら。
☆
「ケル、うちらも一緒でいいのか?」
「構いませんよ、というかさっきから目をキラキラさせながらこっちを見ないでください」
修行から数日の経った昼頃。ケルトが切り出した依頼の話に若き冒険者よりも目の前の女が喰いついた。
「ケル、ドラゴンの素材で脚甲作ってくれよ!」
「それよりも、後ろのお二人に依頼の話をしたいんですが……」
森の精霊であるエルフ、シンリーにクローディアは拉致され、ようやく本題を始めることにした。
「以前、説明したよう感じだから。俺が二人に同行して依頼を見届ける」
「……前は気付かなかったんですが、ケルトさんって指導官の一人だったんですね」
「主に新人担当だけどね。ランク1の君らがランク5くらいになるときにまた試験監督やるんだけど。今回はその話はいいね……二人とも俺は同行することに異論はないね?」
「大丈夫っす。ケルト先生の実力はよくわかったっすから」
一応とはいえ剣術の手ほどきをしているためアルはケルトを先生と呼ぶことにしている。ただ少しばかり体育会系のノリなのが暑苦しくもあるがケルトは気にしていないようだ。
「メルの調子が完全に良くなったら、俺の依頼を始めようか」
そう言ってケルトは昼食の準備に向かった。
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