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辺境の錬金術師  作者: 木偶の坊
序章
28/65

不死の樹海と人間たち。その五

ちょっとストックが出来ました。

 ドラゴンとの戦闘から既に一月が経過していた。


 その様子をひたすら見ることしか出来なかった少年は悔しさを覚えたし、何より怖かった。一撃が死の危険性があるドラゴン相手にインファイトを仕掛ける露出多めの女性、その女性の攻撃も格闘メインだというのにドラゴンに負けていなかった。


 そして自分の相棒と同じ様に弓と魔法を併用して戦うエルフの姿は優雅で、そして圧巻の一言だった。森の中で戦うその姿はまさに森の妖精と言っても過言ではない美しさに我を忘れてしまいそうだった。


 もう一人はサポート重視の銀髪で紅の瞳を持つ褐色の男だ。金髪の揺らしながら戦うエルフを太陽と例えるなら、彼は月だろう。吸血鬼種を思わせるその容貌から繰り出される独特な攻撃は対処の仕方が分からないようなそんなものだった。


 自分は大切な仲間を殺すところだった。

 

 いつも言い争ってばかりいる相棒が目の前で自分を庇って冷たくなっていく。これほど、怖いと思ったことはない。誰からも必要としてくれない人生の中で唯一自分を自分として認めてくれた彼女を死なせてしまうところだった。


 それを見て、初めて自分が愚かしいことをしていることに気づいた。


 初めて認めれてくれた大切な相棒を自分の身勝手で殺してしまうところだった。


 だからここに誓う。


 彼女を守るためにもっと強くなろう。そのためにやることは一つだった。



「仕方ない……クローディア、下がれ!禁呪を使う」


「待て、ケル。お前死ぬ気か!!」


 ケルトは、静かに息を呑んだ。


 そして笑う。


「大丈夫、代償に命を使うようなやつじゃない」


 ケルトは懐から紙きれを何十枚も取り出すとそれを空中に向かって投げる。


「『戒めを破りて、夢想を喰らい、幻想を喰らい、森羅万象を喰らい尽し───』」


「どんな術か分からないですけど、勝ち逃げは許しませんよ!シエルハイム」


 ケルトを危険と判断したのかドラゴンはケルトに向かって鋼鉄をも溶かす灼熱の業火を浴びせようとするが、ケルトは地面に描いていた【陣】をつま先で軽くトントンと叩く。


 すると地面は隆起しケルトとドラゴンの間に壁を作った。業火が壁を完全に飲み込むまでさほど時間を必要とはしなかったが、壁の後ろにはケルトの姿がなかった。


「『七大罪を犯せしその力、解き放つ!!!【暴食巨顎グラトニー・アギト】」


 ドラゴンの背後に回っていたケルトが詠唱を終えるとケルトの腕が弾け飛んだ。夥しい量の血液はまるで意志でも持っているかように動き出すとドラゴンの頭部にも似た形を取り、ドラゴンを捕食し始めた。

読んで下さいってありがとうございます。

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