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辺境の錬金術師  作者: 木偶の坊
序章
27/65

不死の樹海と人間たち。その四

あと二週間しか今年がないですね。


今年もおわりか……。

「……ティアの方は、大丈夫だろう」


 青年は眼前の巨大生物を睨めつけながら、そんなことを思っていた。


「シエルハイム!!貴方って人は!」


 巨大生物もといドラゴンをどうしようか考えていると、ドラゴンを挟んで向かい側に見覚えのあるエルフが今にも爆発しそうなくらい顔を真っ赤に染めてこちらを見ていた。


「森の加護がないんですから、あまりうろうろしないでください。正直言って邪魔です!!」


「邪魔って……」


 遅れてエルフの隣に露出多めな服装をした女性がやってきた。


「やってるな、ケル。手助けはいるか?」


「……手助け要らないように見えるなら大概ですね」


「そうです、団長。シエルハイムが一人でやれるはずがないんです!」


 そんなはずはないんだけどと頭を掻きながら、露出狂の女性が自身の腕甲に魔力を込め、構える。


「ま、いい。秘蔵の酒でもごちそうしてくれれば!」


 ドラゴンの鋭い爪が、露出狂の女性・クローディアに襲い掛かるが、腕甲で受け止める。


「そんだけか?でかい蜥蜴がっ!!」


 破裂音にも似た轟音が森に響き渡り、ドラゴンはその巨体を揺らす。少し前に巨人相手にタイマンを挑んで無傷倒した女だ。その一撃は大地をも揺らす。


「ケル!時間は稼いでやる!だからでかいの決めろっ」


 ドラゴンは悲鳴にも似た咆哮を上げると、クローディアを警戒したのか空に逃げようとするが、エルフがそれを許すはずもなく。


「森はわたしのテリトリーです。ドラゴン風情が、森を荒らさないで下さい!!『連射弓・三式』」


 頭上高くに放たれた矢は勢いを殺すことなく、天高く。視認出来ない高さまで届くとそこから集中豪雨の如く、ドラゴンの背に降りかかる。


 流石に同じように弓を使う、ケルトでもここまでの芸当をやれるかと言われればおそらく出来ないというだろう。


 その芸当をまるで見せつけるかのようにエルフ・シンリーは笑う。


 これが自分の実力なのだと。


 ダークエルフなんかに劣るはずもないのだと。


「……次は俺の番だな」


 ケルトは背中に手を伸ばし、ポーチから手探りで小瓶を取り出す。その中身を地面に振りかけると小さく、それでもはっきりと呟く。


「拘束錬成、影牢!」


 小瓶の中身だったものを媒体にケルトの影から数百を超える鎖をドラゴンに向け放つ。


「縛り上げろっ!!」


 ケルトは鎖に魔力を込める。魔族とエルフのハーフであるケルトは魔力量だけで言えば他を圧倒する。


「……まずいな、ケル!!魔力を上げろ!」


 鎖に出来た亀裂をクローディアは見逃さなかった。


「これ以上は上げられない、やれば鎖が耐えられない!」


「シエルハイム、貴方はバカですか!何でもっといい素材を準備してないんですかっ!!」


 鎖が切れるのは時間の問題だとケルトはすぐに次の準備にかかる。


「速式、使えばいいじゃないですかっ!」

 

 確かに『速式錬成』を使えば、準備に掛ける時間は関係ない。あれはあらゆる過程を無視して事象だけを引き起こす錬成式だ。


「ケル、速式ならどれくらいいける?」


「速式なら強度は弱いですが、もって三分くらい」


「上等!!」


 愉しげに笑うとクローディアの魔力を一気に跳ね上がった。大気を震わす程の魔力の密度に酔いそうになるが、ケルトは錬成を行った。

読んで下さってありがとうございます。

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