不死の樹海と人間たち。その二
爆発音。
それは唐突に森の中にいた人間たちの鼓膜を攻撃した。どこからともなく聞こえるそれは次第に大きくなっていることに気づいた二人のベテラン冒険者がいた。
「団長……これは…」
「間違いない。うちらも少し急いだ方がよさそうだ」
二人は爆発音が聞こえた方角に確信を持っているかのように一目散に走り出した。
☆
同時刻。
こちらでも地鳴りにも似た爆発音が聞こえていた。
「ティアちゃん……これは?」
「まずいよ!!急がないと!」
「何が?」
二人の少女は木々に印を付け迷わないように慎重に進んでいたのを止め、音の方角に走り出す。
☆
「……これは、ドラゴン種の咆哮だな」
一人の青年は小瓶を一つ取り出し、それを地面に叩き付ける。
「速式、錬成!」
その言霊とともに小瓶に入っていた液体は眩い光を放つ。
「直線上のみを薙ぎ払え!!」
呼応するかのように光は業火へと姿を変え、青年が指定した直線上の木々のみを焼き払う。焼け焦げた一筋の道を青年は駆け抜けた。
「間に合うか?」
青年はもう一つ小瓶を取り出すとそれを呑み干した。
「速式、強化錬成」
青年の両脚が淡い光を放ち、一気に加速した。
☆
頭を鈍器で殴打されたかのような、脳を直接揺らされたかのような、そんな現象が身体を駆け巡っている。苦しいなんてものじゃない、気を抜いてしまえば一瞬で死んでしまうということが実感出来てしまいそうで自分は頭がおかしくなってしまったのではと感じてしまう。
振り返るとそこには、大きな影。いや影なんかではない。大き過ぎて全体が見えない。
けれど、少年は知っていた。目の前にいるのが何なのか。
「……うそだ、ろ」
この森に入って戦った低級な魔獣よりもずっと高みにいるそれが目の前にいる。低級な奴らさえ遊ばれた少年が逆立ちしたところで一瞬でケリが付いてしまうことは明白だ。それにもう武器がない。
拳では鋼鉄のような鱗に傷をつけることすら叶わないだろう。
「……あ、は、ははは」
気が狂ってしまえばどんなに楽だろう。怖いなんてものじゃない。そんな感情は既に壊れている。
「まだ、死ぬわけにはいかないんだ!!!」
少年はありったけの魔力を身体強化に使う。そして盾に力を込めた。盾に当てて攻撃を弾くことはおそらく出来ない。質量差がまるで違う。
腕にいくら強化を施したところで一撃喰らえば、腕は消し飛ぶかもしれない。万が一にも腕が残っていたとしても骨が砕けるだろう。
少年が視界にとらえたのは、風を切り裂き、迫りくる巨大な尻尾。当たることを覚悟して構える。
……。
……。
けれど、痛みはなかった。痛みが感じない程一瞬で殺されたのかもしれないが、少年は恐る恐る、目を開ける。
「………ご、めん。……遅く、……な」
襲い掛かる巨大な尻尾が謝る少女の目の前で止まっているように見えた。けれどよく見るとそこには何重もの、魔法陣が形成されておりいくら魔法が苦手だとはいえ少年にはそれが防御結界の一種だと分かった。
一枚だと破られるから、幾重にも重ね重ね。一点に集中させたその魔法はぎりぎりのところで攻撃を食い止めていた。
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