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辺境の錬金術師  作者: 木偶の坊
序章
22/65

新人冒険者と見習い錬金術師。その四

本日は二話目の投稿です。



「あれ?お父さんだ」


 雨上がりに出来た七色に輝る橋を二人で眺めている。視線をやや下へ下げるとそこには常闇にある唯一の光を思わせるような白銀髪の男と手振り身振りと忙しない男。


「ティアちゃんのお父さん?」


「うん。あれどっかいっちゃった」


 家の中にいる二人には外での会話が聞こえない。忙しない男、いやティアの父は少し会話をしたのち来た道を引き返した。いつもであれば家に上がってきて愛娘であるティアを溺愛するのに珍しいことがあったものだとティアは思う。


 その直後にティアは白銀髪の男。ティアの師匠であり兄と慕うケルトが不死の樹海の方角へと走り出した。


 走る前にケルトがいつも身に付けている小瓶用のポーチを整理する仕草が目に入った。


(ケルトお兄ちゃん……何かと戦うの?)


 あれはケルトが戦闘をする前の仕草に似ている。奥の手を使うつもりはないのだろうけど、それでもその仕草を見ると不安になる。


「どうしたの?顔色悪いけど」


「何でもないよ、メルお姉ちゃん」


「なら、いいけど。それにしてもアルの奴遅い……ティアちゃんはちょっとここに居て、メルは一緒に来た男の子探しに行くから」


 メルはアルがどこへ行くと言ったか整理して考える。メルは急いで必要なものを確認する。もしものことがあれば少しばかり回復薬と解毒剤の数が足りない。


「なら、これあげる」


 横で見ていたティアは球体状の物体を二つメルに手渡した。


「これは?」


「お兄ちゃんがいうには、囮玉っていうらしい。投げると投げた本人と同じ姿の囮ができるって」


「ありがとう、ティアちゃん」


 荷物をまとめ上げると、メルは川へと向かった。



 一人残されたティアは鞄から正方形の紙を束で取り出すと、外にばらまく。


「『はしれ!雷光』」


 そう言葉にすると指先から青白い光が、宙に舞う紙の中心をそれぞれ正確に撃ち抜く。


「うん、大丈夫戦える」


 撃ち抜かれた紙は燃えることなく、地面に紙が落ちる。落ちた紙は偶然にも撃ち抜かれた中心点同士が繋がり一つの円が出来る。


 これは【陣】だ。魔法陣や錬成陣をまとめて陣と呼ぶが、これら二つとは異なったもの。


 偶然出来上がったそれは、淡く光るとどこからか声が聞こえるようになった。


『こっち、こっち』


『あっちは危ないよ、あっちは危ないよ』


『そっちも危ないよ、そっちも危ないよ』


 複数の声が聞こえる。けれど姿はない。


「だれ?」


『だれ?だれ?』


『きゃははは』


『にんげんさん、おもいろい~』


 そんな声のあとちょこんと肩に重さが加わる。僅かな重さ。注意しなければ気が付かない程の僅かな重さ。


「ようせいさん?」


『そうだよ、そうだよ』


『にんげんさん、たすけてあげるよ』


 小さな隣人たちは、楽しそうにティアの周りを飛んでいた。

読んで下さってありがとうございます。

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