新人冒険者と見習い錬金術師。その三
勢いで書いていると時々、手が止まる。
手が止まると眠くなる。
そんな、今日この頃です。
雨上がりの空を見上げると、気持ちのいい日差しとは裏腹に寒気というよりも不安だろうか。そう言ったものが心を揺らす。
これはつい先ほどから感じていたことだ。
急いで放った影と視界をリンクさせるが、何かが足りない。そんなことをしていると不意に誰かに肩を叩かれる。
「よ、どうした?」
振り返ると、そこには親しくさせている者の顔があった。優し気な雰囲気を放つその顔は心配そうにこちら見ている。
「……リックさん。いえ、依頼に来た新人の子が近くにいないんです」
メルの片割れ、アルのことだ。川に行くと言ったきり戻ってくる様子がない。
「それは心配だ、君は魔力探知が使えたんじゃなかったかい?」
「それはそうなのですが、彼の魔力を間近でしっかりと見たわけではないので、探せないんです」
「成程ね、それにしても時期が悪い」
「はい。だからちょっと慌てているところです……この辺は【夜】が早い」
不死の樹海はこの地方特有の【夜】が訪れるのが最も早く、そして最も長い。【夜】の不死の樹海には地元の人間はまず入ることはない。それだけ危険だと分かっているからだ。普段大人しい魔獣ですら獰猛になり、草食系の生き物も肉を喰らうようになる唯一の期間だ。
ただでさえ、薄暗い森の中はより不気味になる。クローディアクラスの冒険者になれば【夜】だろうが関係ないと思うけど。あの人なら裸で放り出されても生きていけそうだ。
今回は違う。
あの森に迷い込んだ可能性があるのは、新米だ。半日も生きていれば奇跡に近いそんな場所だ。
「……ったく、手間掛けさせやがって」
「ケルト君?」
「……何でもありません。リックさんはギルドに行ってください、たぶんエルフの女性がいると思いますので」
リックはそう言われ、ケルトが誰のことを言っているのかすぐに連想する。
「森であれば彼女の出番ですので……」
「無茶はしてくれるなよ、娘が悲しむ」
それだけを告げるとギルドへ向かって駆け出した。ケルトは小瓶の入ったポーチから液体の入った小瓶を取り出しやすいように手前に寄せておく。
「…どうして目を離した。ここがどういう場所だか分かっているだろうがっ……ケルト・シエルハイム」
小声でしっかりと自分に言い聞かせる。何事もないことを祈りながら、不死の森に向かって走り出した。
読んで下さってありがとうございます。




