新人冒険者と見習い錬金術師。その二
さて、本日まず一話。
「ティア、ちゃんは錬金術師ってこと?」
「いや、この子はまだ見習いだよ。このまま錬金術師を名乗っても普通の人には区別は付かないだろうね。本物を見た人でもたぶんそれは分からない」
本物は本物にしか分からない。
要約すればケルトはこう言いたかったのだろう。
偽物が本物に勝ることもあると昔聞いたことがあるけれど、それはあくまで第三者の観点から見た場合のことに過ぎない。
仮に偽物が本物に戦いを挑めば気付いてしまう。そこには埋められないさがあることを。
第三者から見たらどうでもいいような些細な差かもしれないけれど、やっぱりそれは存在の定義。詰まる所、根っこの部分が違う。
劣る者が悪いというわけではない、回復薬で例えるなら等級の低い回復薬は等級の分だけ、安く数が揃う。数が多いということはそれだけ沢山傷を治せる。
生活で負ってしまったちょっとした怪我であればそれでことが足りる。
錬金術師の偽物と言えば、聞こえは悪いかもしれないがそれでも師がいてそれなりには学んでいることだろう。これをなしには偽物と名乗ることは出来ない。
証明することが出来ないからだ。錬金術師の力を。
「俺たち錬金術師の定義は実際、人それぞれなんだ。錬金術師には『テーマ』と呼ばれる研究課題がある。因みに、ティアの『テーマ』は【人体】だったか?」
「はい!」
メルは黙ってケルトの話を聞き入っている。
「で、話は戻るけど偽物と本物の違いは本当に些細なことなんだ。『テーマ』を陣として身体に刻んでいるかそうでないか、ただそれだけ」
「お兄ちゃんは危険だからまだダメだって」
「危険、何ですか?」
「死にはしない程度かな」
「……」
「剣だって使い方が分からなければ、自分を傷付けてしまうだろう。それと同じさ」
「大いなる力には大いなる責任を……ってことですよね」
養成学校で一番最初に習う言葉だ。それについて本気で考えている冒険者は数少ないだろう。メルの会ったベテランの冒険者はその心得がしっかりと出来そうだったが。
ケルトが言った死なない程度がどれくらいなのか分からなかったが、それでも今までと違うトーンの低さに驚いた。息が止まったと思った。
「ふぅ……。こんなにも長く話すことはあまりないから疲れたね、昼食は俺の方で用意しておくから少し二人ともゆっくりしているといいよ」
メルはそれを聞いて視線を外に向けると雨があがり、日が差し込んでいる。
どうやら、通り雨だったようだ。
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