新人冒険者と古参冒険者。その三
少しずつ読んで下さるかたが多くなってきて嬉しい限りです。
次話あたりから主人公が復活すると思います。
たぶん
「あれ?ここは」
意識がどこかへ飛んでいたアルが戻って来た。それを隣で見ていたメルはアルの肩こんこんと叩き、シンリーへと視線を誘導する。
「え、え、エルフ様!!」
「アル?おーい。ダメだね、うん。ダメダメだ」
「大丈夫か、そんなんで」
クローディアは呆れた視線をアルに送るが、当の本人は全く気付いてる様子がない。まだギルド内だからいいものの外で摩訶不思議なものに遭遇したときはどうするのだろうと目の前の新人の行く末が心配になる。
「外でも、こうなっちゃうことありますけどその時はメルが強制的に立ち直らせるので大丈夫です」
メルは爛々と目を光らせている。そんなことに真剣になってどうする。
「でも、クローディアさんの言う通り……もう一度会ってからでも遅くないと思います、この依頼」
「その依頼な、毎年出されるんだよ。知ってたか?」
「毎年?」
「大体、水浴びをしたくなるような今の時期が多いな。何故か分かるか?」
「……分かりません」
クローディアはメルを指差しながら、
「今は、季節で言えば『エテ』。お前らは『プランタン』には、どこで何をしてた?」
メルは『プランタン』と言えば季節的には動物たちが冬眠から覚め、活動を始める季節でもある。メル達の年齢とまだ新人の冒険者だということを考えると、
メルはおのずと自分がまだ養成学校にいたことを思い出す。
「ギルドの養成学校で卒業試験を受けてました」
「それにな、この時期はどうしても新人が増える時期なんだよ。うちらにとって見ればスカウトの時期ってわけさ」
「そしてそっちのアル坊みたいな、討伐系にばかり目がいって命を落とす冒険者も多いんだ、こればかりは伝統みたいだし」
クローディアはどこか懐かしむように遠くを見る。もしかしたら知り合いにそういうのがいたのかもしれない。メルはこれ以上このことに関しては触れないでおこうと心に決めた。
「団長も昔は大変でしたね。一言目には討伐だーなんて奇声を発して」
団長を弄るきっかけを待っていたかのようにシンリーがそう口にする。クスクスと笑う姿はとても妖艶で同性でありながらもメルは見とれそうになる。自分が女であることがこんなにも憎いことはないなんてことを思っていたりもする。
でも、いっそ百合でも……。
そんな危ない思考が頭の中をぐるぐると駆け巡っていると、掲示板の方から叫ぶ声が聞こえる。
「見てください、アルヴィン。ケル様のご依頼がありますわ!」
そう叫ぶのは小柄な少女。見た目からでは幼女と呼んだ方がいいのかもしれない。そして幼女がアルヴィンと呼んだ隣に立つ長身の男。如何わしい商人を思わせるその服装は、やや強面なのもあって裏の人間と言われても納得できそうだ。
「ケル坊の依頼かぁ。そういや~、そんな時期だな。お前さんはどうするよ」
「勿論、受けるに決まってますわ!」
アルヴィンは幼女の頭を撫でながら、それもいいかと呟いた。その呟きが聞こえたのか、それに反応する露出狂がいた。
「待て待て、そこはルーキーに譲りな」
「……酒くせぇぞ、ヴァルキリー」
アルヴィンはやれやれと言った仕草をすると反論する。
「お前さんもルーキーじゃねぇだろ。つうか、ルーキー限定ってどこに書いてるんだ?ボクちゃん目が悪いからわかりません~」
「てめぇ……いつもいつもそうやってうちらを馬鹿にしやがって!このロリコン!!」
「なっ!ヴァルキリー……言っちゃいけねぇ言葉もこの世にはあんだよ。知ってっか?痴女さんよ。それにお前さんは俺っちを怒らせっちまった」
「「決闘だ!!」」
どうしてこうなったと天を仰いだメルたちがいた。
読んで下さってありがとうございます。




