62.マオとコカゲと魔王と…⑥
◆隣国へ向けて走る幌馬車にて
カルブンコ子爵に雇われた三人の男達は所謂【破落戸】で、倉庫で攫った女を隣国の娼館に送り届ければ金が貰える手筈になっていた。
勿論テル-の素性など知る由もない。
「なぁなぁ、この娘は娼館に入っちまうんだよなぁ~。だったら、ちょっとくらい俺らが味見しても問題ねぇよなぁ・・・へへ」
荷台に乗る二人のうちの一人がそんな事を言い出した。
「・・・そういやそうだな!ここでやっちまっても構わないんじゃないか?ヒヒ」
「おい!おまえ等ズリぃぞ!オレもまぜろ‼」
馭者の男も喚きだす。
「わかった!わかった! ちょっとこの辺りで止まって、休憩がてらって事でよぉ~」
荷台の男の提案に馭者は機嫌を良くして、馬を止めに掛かった・・・と、その時
「何だ?」「どうした?」
前方に老人が立っていた・・・。白い長髪に白い髭の老人は、迫る幌馬車を避けようともせず。まったく微動だにしない。
減速に入っていたので、老人の手前で止める事はできたのだが、
「おい!ジジイ!なに突っ立ってるんだ!邪魔だろうが!」
破落戸の怒声に怯む様子もなく、無表情で見つめ返していた。
そして・・・
「ふぉふぉふぉ・・・」
◆パルセノス侯爵邸 リオン視点41
『古代竜様のトコに行って頼んで来たって!精霊に居場所を探らせて古代竜様が追ってくれるらしい!』
⁉ちょっと待て!ジジさんが動いたらパニックになるじゃないか!
『古代竜様だって分かってるさ。隠蔽魔法使って追うってさ。で見つけたら、オヤジが古代竜様のところまで、俺たちを飛ばすって言ってるぞ!』
・・・なるほど。それなら大丈夫か……精霊達が協力してくれるなら、きっとすぐに見つかるだろうが…頼む!早く見つけてくれ!
一日千秋の思いで連絡を待っていると、
『お待たせしました!たった今オジジ様が馬車と接触しました!』
突然、目の前に風の精霊が現れる! (よし‼行ける!)
『オヤジ!よろしくっ!行くぞリオン!コカゲ!』
「ああ!カゲロー!頼むっ‼」
ジジさんところまで飛ばしてくれ!
「バウッ(ガンバレよ~)」
「ふぉふぉふぉ・・・遅いぞリオン」
次に目を開けた時はジジさんの隣に立っていた・・・。カゲ丸も隣にいて、幌馬車に向かって『グルルル』と唸っている。
あの馬車の荷台にマオが居るんだな・・・。
「おいっ!あの男と犬!どっから現れた!」
「知らねぇ!いつの間に⁉」
「お…おい!やべぇアイツ、剣持ってるぞ‼」
破落戸どもは俺とカゲ丸が突然現れた事に怯んでいるな。なら、こっから畳み掛ける!
「行くぞ!カゲ丸‼」
『おうよ!』
カゲ丸の影移動で、一瞬にして間合いを詰めて、剣先を男たちの眼前に突き付けた!
「うわぁ‼金なんか持ってねぇぞ!」
「そうだ!荷台の女を売るまで無一文なんだ!」
「兄さんにこの女やるから!見逃してくれ~~ひっ⁉」
荷台のマオの方を見た男の前には、歯をむき出して唸るコカゲがいた・・・
「グルルルル・・・」
コカゲが唸る姿は初めて見たな。・・・てか、こいつらマオを売ろうとしてたのか。許せんな。どうせ破落戸だ…居なくなっても誰も困らんだろうし…いっそ…
「リオ~ン!黒いのが漏れておるぞ~闇に呑まれるでないわ。ふぉふぉふぉ」
あ~しまった。またやらかすトコだったな。ジジさんありがとう。ここで暴れたらマオもコカゲも怪我させちゃうし、ふぅ~あぶないあぶない。
『オイ!オレの事はいいのかっ⁉』
「…やるもなにも、元々この女性は俺の婚約者だ!俺はおまえ等を捕まえにきたんだよ!強盗呼ばわりするな!」
「なに!追っ手か⁉」「クソッ!あの貴族!裏切ったのか⁉」破落戸どもがギャーギャーと煩い…。
《ピキンッ‼》 静かになったな・・・よし!
『…お~い?……リオンさ~ん。コレ凍ってます…けど?』
カゲ丸が凍った男達を前足でツンツンしている。
「煩いし拘束するのも面倒だから凍らせた。氷魔法と闇魔法の複合技だ。氷が解ければ意識も戻る」
『ホ~ント規格外なトコはさすが【ヒーロー】だなぁ』
「まぁ、凍傷で四肢とか諸々が無事かどうかは知らんがな・・・フフフ」
『やべぇ・・・【ダークヒーロー】にジョブチェンしてるわ・・・』
「キュウ~~ン…キュウ~~ン」
拘束されたマオの手足のロープを解く。コカゲはマオの頭に鼻先を付けて鳴いていた。
俺は光魔法が使えないから、マオを回復する事が出来ない・・・。
「ふぉふぉふぉ…どれどれ、ふむ…光の精霊よ!マオを起こせ!」
ジジさんがそう言うと、周囲に”ポポポポポッ”と小さな光が集まり出した!
よく見ると光を発する小指サイズの人型だった。各々に個性は無く、かろうじて目のような窪みがある方が正面なのかな?という感じの精霊だ。時々隣とくっ付いて大きくなったり、分離して小さくなったりしている。
そいつらがマオの顔に集まって来て・・・
《ペチペチ!……ペチペチペチペチペチペチ・・・・》
「ワッ!ワンワン⁉(おまえ等!なにペチペチしてんだ⁉)」
「ふぉふぉふぉふぉふぉ~」
・・・魔法で回復するんじゃないのか~・・・光の精霊ってこういう感じなんだぁ。←無表情
「…こ……こしょば~~いっ‼‼」
突然の叫びと共にガバッと起き上がるマオ・・・。その拍子に光が霧散していく。
「キャン!キャンキャン(テル-!よかった!)」
「へ?コカゲ…リオン様?おじいちゃん…も?何で??」
状況が分からず困惑気味のマオ。ケガも無さそうで良かった。
「ワン!ワワン!(おい!オレもいるんだぞ!)」
[おまけ]~幌馬車で帰るよ~
マオ 「うわぁ、この人達凍ってるんだ~」
カゲ丸『この闇氷魔法って、どのくらい持つんだ?』
リオン「俺が解くまでこのまま・・・かな」
カゲ丸『……じゃあ凍傷云々ってオマエの匙加減って事じゃん』
リオン「・・・・・・だな。フフッ」
マオ 「うわぁ…ラノベの魔王降臨・・・」




