61.マオとコカゲと魔王と…⑤
◆倉庫群 アレクセイ視点16
執務室にやって来たミスティから詳しい説明を受けて、倉庫群にやって来た。
案内は、コカゲから情報を聞いたミカゲとクロミのコンビだ。迷うことなく進み、奥まったところにある一棟にたどり着いた。
「だ!誰・・・」
倉庫入口に立っていた男達がこちらに気付いたので、騒ぐ前にミカゲが影移動で消してしまった。何処にやったかは、リオンと合流するまでわからないな・・・。
倉庫の扉は開いているので、近づいて中を窺う…。付いて来ている護衛騎士や衛兵達には、待機を促がした。
「お父様。あの女の事はあれでいいとして、この弱ったカーバンクルはどうするおつもりですの?」
「しまったな。先にあの小娘に回復魔法を使わせれば良かった。しかし・・・これではオークションに出せんなぁ。足が付く前に処分してしまうか」
中から娘と父親の会話が聞こえてくる・・・。聞き覚えがあるな、確か…カルブンコ子爵。【影】の報告にも挙がっていた。
どうやら子爵は魔獣を処分する気のようだな。
「よし!処分する!おい!誰かおらんかっ!」
「誰もいません事よ。そして『処分される』のは貴男方ですわ!おーーほっほっほ~♪」
広い倉庫内にミスティの高笑いが響き渡った・・・。うん、勇ましくて可愛い!
「な!何者だ⁉ おいっ護衛!何をしている!叩き出せ!」
入口を背にしているから、こちらは逆光でよく見えていないのだろうな。
「やぁ、カルブンコ子爵。護衛なら何処かに行ったぞ。何処かは私も知らないけどな」
「お・・・王太子…殿下…。何故?…こちらに?」
子爵と娘はやっと俺とミスティに気付いて、明らかに動揺している・・・。小者感満載だ。
娘はブルブル震えながらワンピースでカーテシーしているが……うん、どう頑張っても【檻】は隠せてないぞ。
「いやなに…通報があってね。この倉庫に違法取引用の魔獣がいると・・・確かこの倉庫はカルブンコ子爵が、経営を委託してる商会のモノだったな?」
「えぇっ⁉そ…そんなガセ情報…いったい何処から?ああ!きっとうちを良く思わない者の仕業でしょうな!まったく!王太子殿下の手まで煩わせるとは・・・ハハハ」
子爵はとぼけているが、この情報は【王家の影】からだ。一つの案件を常に4・5人で精査してるから、間違いは皆無と言っていい。
「ああ!それと、この倉庫でつい先ほど【テル-・ペリステラ伯爵令嬢】が拉致されたと知らせがあってね、確認に来たんだよ」
「「なっ⁉⁉」」
「もしかして魔獣と会話出来るのは、テル-だけだと思っていらっしゃるのかしら?残念ながら、他にもいましてよ!なので、あなた方の悪事など!まるっとお見通しですわ!」
《ババーン!》と決まったね。カッコいいよ!
まぁその『他』はテル-嬢の劣化版で、一人と一匹が揃って無いと駄目なんだけどね。
「・・・他にも…居る?」
「お…お父様…」
「そう、魔獣から知らせがきたんだよ。テル-嬢を排せば、悪事は洩れないと思ったのが間違いだったね。そのテル-嬢も助けが向かったから、じきに戻ってくるだろう。・・・さて、話は王宮の尋問室で聞こうかな。・・・衛兵!この二人を連れて行け!」
「「「はっ‼」」」
「「ヒイッ‼」」
入口から衛兵が雪崩れ込み、二人を拘束して連行していく・・・。何か必死に泣き喚いていたが、きっと父上が尋問に加わるだろう(こういうの好きだし)・・・ご愁傷さまだ。
二人が見えなくなって、ミスティが檻に向かった。
「カーバンクルですわね。今治療しますわ!」
弱っている魔獣に向けて、光の治癒魔法を発動させている。…よし!
「わたしも手伝うよ」
檻の反対側に立ち、同じ波長で一緒に魔法を展開する・・・光は檻全体を包み込み、中の魔獣が分からないほどに眩く、護衛の連中から『おお~~』と感嘆の声が漏れた。
「キュウ!」
檻の中から鳴き声がして、魔法を終わらせる・・・光が収まると、中には元気そうなカーバンクルがちょこんと座っていた。額の赤い宝石もキラキラ輝いている。
「アレク様!やりましたわ!元気そうです!」
「うん!ミスティもよく頑張った!」
ピーちゃんやミカゲとクロミに囲まれて、カーバンクルも安心しているみたいだ。
はやく出してあげたいけれど、鍵が手に入るまでしばらく我慢して貰おう。証拠も固めないとだしね。
さて・・・こっちは片付いたぞ。 ・・・何とか間に合わせろよ・・・リオン。
[おまけ]~命名カーくん~
ミカゲ 『カーくん?大丈夫?もう辛くない?』
カーバンクル『えっ?カーくんってボクの事?』
クロミ 『カーバンクルだから、カーくんね♪アタシはクロミ♪』
ピーちゃん『ピーはピーちゃんだよ♪グリフォンなの~』
カーくん『…え?グリフォンなら『グリちゃん』じゃないの?なんでピーなの???』
カーくんは、将来ピーちゃんに反抗期が来ない事を祈ったのだった。




