60.マオとコカゲと魔王と…④
◆影空間 コカゲ視点3
パルセノス家の魔犬夫婦の末の仔犬【コカゲ】として生まれ、みんなに愛されて育った。
カゲ丸にぃやミカゲねぇはよその子になってしまった。でも時々会えるし寂しくない。
わたしを欲しいと言うお家もあったけど、みんなと離れたくなかったから、いっぱいかくれんぼして諦めてもらったの。
そんなある日、お家に【テル-】がやってきて、わたしに話しかけてきたの!リオと顔を合わせるのがコワイから、力を貸してって・・・
リオは全然怖くないのに変だな~って思った。それにテル-はわたしと会話が出来たから不思議に思って聞いてみたら『本当の魔王(魔獣の王)が見つからないから代わりに任命されたのよ』だから、魔獣とは交流できるのだと・・・
魔王・・・転生を司るモノさんが言ってた・・・
『あ~あ・・・目的地はまだ先だったのに~・・・』
わたしが・・・強いのを希望したから・・・本当は魔王になる予定だったのに・・・温かい家族が欲しくて寄り道して・・・知らないうちに魔王を放棄しちゃってたんだ。
だけど今更『自分が悪いのだ』と言い出せなくて・・・わたしは何て狡いんだろう・・・。
『強くなりたい』って言ったくせに・・・他人に押し付けて・・・
そうだ!テル-はわたしの代わりに、魔王を押し付けられただけなんだ!
なのに今とても危険な目にあってるんだ!
怖いなんて言ってちゃ駄目なんだ!わたしが何とかしなくっちゃ!
でも…テル-の意識が無いから、居場所も分からなくなってしまった・・・。どうすれば・・・
ハッ!そうだっ‼ あそこに行けばっ‼
「そうか。じゃあ、テル-に相談して…」
「キャインッ‼‼‼(リオ!たすけて‼‼)」
「なっ⁉」
わたしはリオとカゲ丸にぃに助けを求めたのだった・・・
◆王宮 王太子の執務室 リオン視点40
「なっ⁉」
突然俺の影から何かが飛び出した‼
それは、今まで見た事無いくらい動揺しているコカゲだった・・・。
「キャン!キャン!キャン!(テル-が!さらわれた!たすけて‼)」
「ワン!(なんだって!)ワンワン!(詳しく話せ!)」
カゲ丸も驚いているようだが、一体どうしたんだ・・・
『リオン!大変だ!テル-が倉庫群で、貴族に攫われたらしい!恐らく馬車で移動中だ!』
「テル-がっ⁉⁉」
今日はコカゲと街に出掛けると言っていたな・・・【倉庫群】また魔獣関連の相談でも受けていたんだな。クソッ!てっきり買い物にでも行くのかと思っていたのに・・・油断した。
「アレク!テル-が【闇取引】の件に巻き込まれみたいだ!今攫われて移動中だ!助けに行って来る!」
アレクはいきなりの展開に驚いていたが
「救出を優先しろ!後の事は俺に丸投げでいい!」
多少無茶しても王太子権限で処理してくれるという事だな…有り難い!
「行って来る!カゲ丸、コカゲ!カゲローの所へ!」
『了解!』
俺は一旦パルセノス家に飛ぶ事にした。
「まぁ!リオ兄様!そんなに慌ててどうなさったの?」
「テル-が攫われた!」
館に居たミスティにざっくり事情を話し、伯父上を呼んでもらう・・・。
伯父上はすぐにやってきてくれて、カゲローと【剣】を貸してくださった。
「魔法で事足りるかもしれんが、持ってるだけで相手がプレッシャーを感じるぞ」
『そうだな!ヒーローに剣は必需品だ!』
・・・そういうモノなのか??
「リオ兄様!わたくしはアレク様と倉庫へ向かいますわ!衰弱している魔獣が気になります!クロミ!ピーちゃん!行きますわよっ!」
そう言ってミスティは二匹を連れて、影に沈んでいった・・・頼もしい。さすが未来の王妃様だな。
「カゲロー!テル-の場所まで行けるか⁉」
『・・・テル-が意識を失ってるから、直接は無理みたいだ!ちょっと待ってって言ってる』
カゲローは一瞬で姿を消し、ものの二分程度で戻ってきた。そしてカゲ丸と話している・・・
『古代竜様のトコに行って頼んで来たって!精霊に居場所を探らせて古代竜様が追ってくれるらしい!』
⁉ちょっと待て!ジジさんが動いたらパニックになるじゃないか!
『古代竜様だって分かってるさ。隠蔽魔法使って追うってさ。で見つけたら、オヤジが古代竜様のところまで、俺たちを飛ばすって言ってるぞ!』
・・・なるほど。それなら大丈夫か……精霊達が協力してくれるなら、きっとすぐに見つかるだろうが…頼む!早く見つけてくれ!
◆倉庫にて
「お父様。あの女の事はあれでいいとして、この弱ったカーバンクルはどうするおつもりですの?」
檻の中小さな魔獣はすっかり衰弱している。もう頭を持ち上げる事も無く、息も細い・・・
「しまったな。先にあの小娘に回復魔法を使わせれば良かった。しかし・・・これではオークションに出せんなぁ。足が付く前に処分してしまうか」
父親が棒切れを檻に突っ込んで、カーバンクルの頭をつつくが反応は無い。
「よし!処分する!おい!誰かおらんかっ!」
「誰もいません事よ。そして『処分される』のは貴男方ですわ!おーーほっほっほ~♪」
広い倉庫内に【自称悪役令嬢】の高笑いが響き渡ったのだった・・・。
[おまけ]~謎犬の正体~
古代竜「なんじゃと⁉マオの大ピンチじゃ!こうしてはおれん!・・・こりゃ謎犬!止めるな!」
家から飛び出そうとするジジの服を咥えて止めるカゲロー。じーっと古竜を見つめる・・・
古代竜「はぁ・・・わかったのじゃ…。マオ達が困るような事はせん」
カゲロー「バウバウッ!(わかってくれたらいい。リオンに任せよう…ではよろしく!)」
そう言って去って行くカゲロー・・・
古代竜「…そもそもオヌシが【魔王】やらんから、ややこしくなったんじゃぞい・・・まったく。お~い!精霊たちよ。マオを探しに行くのじゃ~」
カゲローは20年前、アダンの森で【次期魔王(予定)】として生まれましたが、リコスに再会して諸々放棄したという『一連の元凶』でありました。【転生を司るモノさん】もため息をついていますよ!
転生司さん『一度ならず二度までも・・・』
※一度目:自身が魔王転生するも放棄。 二度目:魔王転生予定者を途中で放棄させる。




