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59.マオとコカゲと魔王と…③

コメディ仕様の本作品にしては非常に珍しくセンシティブな部分がありますので、苦手な方は一番下の[おまけ]まで、読み飛ばしお願いいたします!


◆影空間  コカゲ視点2

 

  若い女の人とおじさんの悪意の籠った声・・・。

 テル-に何かあったんだ!…影空間から出て確認しなきゃいけないのに・・・体が動かない・・・

 怖い怖い怖い・・・


 どうしよう・・・だれか・・・タスケテ・・・



 …たすけて・・・わたしはあ(・)の(・)時(・)言えなかった・・・。

 もし言えていたら、あの時わたしは助かっていたのかな……でも怖くて怖くて・・・声が出なかった。

 

 コカゲに生まれ変わる前・・・わたしは【日本】という国で暮らす女子中学生だったの・・・。


 中学生になってから、何もしていないのに【いじめ】の標的になって・・・毎日毎日辛くて悲しくて、仲良かった子達も自分たちに被害が及ぶのを恐れて離れて行ったの・・・うちは父子家庭で、お父さんは私の事に無関心だったし、顔を合わせる時間も無くて・・・わたしが【不登校】になっても気付いてすらいなかった。いや…もしかしたら気付いていたのかもしれないけど、煩わしいから放置していたんだろう。


 ずっと引きこもってて、学校の先生とか訪ねてきたりしたけど・・・きっと『また学校に来い』って言われるんだと思ったら、怖くて窓すら開けられなくなってしまった・・・。

 食欲も無くて食べ物もあまり食べずにいたら、だんだん動くのも億劫になってきて・・・。

 

 そんなある日、家の一階からパチパチ音がしてるのに気付いたの!

 煙が二階のわたしの部屋に充満し始めて・・・息が苦しくなって・・・


 そしたら、外から『火事だ----っ!!』『消防車を呼べーーー‼』って聞こえて、うちが家事なんだ!って・・・でも、体も弱っていたから階段も無理で、窓に手を伸ばしても怖くて震えて開けられなくて・・・


『おい!誰か中にいるかっ⁉ いたら返事しろっ!!』って外から男の人の大声が聞こえたの・・・


 けれど、怖くてずっと誰とも喋ってなかったのと、煙のせいで声が出なかった・・・。


 苦しい・・・熱い・・・誰か・・・助ケテ・・・だれカ・・・

 タスケテ・・・ココに・・・イルよ・・・タスケ…テ・・・


 そうして、何も言えないまま意識が遠のいていった・・・。




『辛かったね。でももう大丈夫だよ』

 目を開けると、目の前に光の塊がフワフワしててわたしに話しかけているみたい・・・。


(だぁれ?・・・ここはどこ?)

 あれ?わたしも体が無いみたい・・・フワフワしてる。


『わたしは転生を司っているモノだよ。前世の君があまりにも不憫でね、本来ならパッパと送り出すんだけど・・・特別に希望を聞いてあげようかと思ってね』


(・・・希望?)


『そうだよ!何になりたいとか、こんな風に生きたいとか!言ってくれたら、それに見合う場所を教えてあげるよ!たどり着けるかどうかは君次第だけどね』

 

 次に生まれ変わるなら・・・強い…のがいい。いじめられても負けない・・・強さが欲しいな。


(強くなりたい!誰にもいじめられないくらい強く!)


『そっか~わかった!じゃあ、かなり遠い場所になるから頑張って行ってね。この道をず~っと行くんだよ!寄り道しないでね~』


 いつの間にか一本の道は出来ていて、先が見えないくらいずっと続いているみたいだった。


(ありがとう・・・)

 転生を司るモノさんにお礼を言って、道に沿って進んで行きます。


 気が付くと、わたしのようなフワフワしたモノが沢山いて、同じ様に道を進んでいました。

 道には時々テレビ画面のような物がポンポンと空中に現れて、テレビドラマみたいな映像を流しています・・・

 ふと見ると、猫の映像の前に留まっているフワフワがひとつ…『じーーーっ』と見ているようでしたが、スッとその画面に近づき画面に溶け込んでいったのです!

 画面は一瞬砂嵐になりましたが、次の映像では母猫が産まれたばかりの子猫達を舐めています・・・ああ、あのフワフワは猫に生まれたかったのか・・・と、理解できました。


 どのくらい進んだのかな?まだまだ道は続いています。途中一緒だったフワフワ達はもういません。

 みんな生まれ変わっていったみたいです。


 この体(?)は疲れませんが、ひとりはやはり心細いです。

 引きこもってはいましたが、一歩外に出れば人や生物がいましたからね。

 父親はわたしを構ってはくれず、煩わしいとさえ思っていたかもですが、それでも家に気配があると少し安心しましたし・・・。


 ここは映像は流れますが、生き物の気配が皆無です・・・。


 時間の感覚が無くなっているので、一体どのくらいこうしているのか・・・

 だんだんと不安に圧し潰されそうになって、心も冷え切ってしまって・・・サムイ・・・よぉ・・・



『えっ!?…リコスってば、もしかしてお婿さん!?お婿さん連れて来たの!?やった~~~!』


 ふいに声が聞こえてそちらを見ると、画面には白い犬と黒い犬が映っていました・・・。

 他の画面では音声は無かったのに、この画面からは声が聞こえてきます。


『ミリア~カゲローとリコスの仔が出来たら、エステルが一匹欲しいってさ。良いか?』

『アハハ!リカってば、それはカゲローとリコスに聞いてよ~』

『確かに、ちがいないな…ハハッ』


 …とても温かい空気が流れてきます。ぽかぽかで気持ちいいなぁ…

 大人の男の人と女の人は・・・とても優しそう。

 女の人のお腹には、すっごく小さいけどもう赤ちゃんがいるみたい。残念だけど、あそこには入れないなぁ・・・


『バウッ‼(こっちにおいで‼)』

 黒い犬が画面の向こうからわたしに向かって吠えました!見えて…る…の?

『ワンワン♪(おいでおいで♪)』

 白い犬も、わたしを見ています・・・。


(わたし・・・あそこに行きたい! あそこで生まれ変わるのっ‼)

 そう思った瞬間! 一気に画面に吸い込まれたのです。


『あ~あ・・・目的地(魔王転生)はまだ先だったのに~・・・でもまぁ、それも君にはいいかもね』

 遠くであの【転生を司るモノさん】の声が聞こえた気がしました・・・





[おまけ]~ご懐妊報告~


ミリア 「リカ!リカ!リコスが妊娠してる!」


リカルド「ほんとか?やったなカゲロー!でかした!」


ミリア 「ついでに、わたしも妊娠してるって‼ 嬉しい?」


リカルド「ハアアァッ⁉ いや嬉しいけど!普通そっちが先だろ⁉ 普通っ‼」


 相変わらずのミリア節に振り回されるリカルドであった・・・。 





~読み飛ばされた方へ~内容説明

コカゲはつらい前世の記憶があります。生まれ変わりで、本来希望した『強くなりたい(魔王転生)』が叶う場所には行かず、途中で見つけた『温かい優しい場所=リコスのお腹』に行ってしまった・・・という内容です。


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