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6.悪役令嬢は一日にして成らず!

◆パルセノス邸  リオン視点6


 校外学習の日からもう一か月以上は経ったが、その後【古代竜】の件について進展は無い。

 アレクは乗り気だったが、唯一の後継者をホイホイ危険に晒す程、この国の王様は軽率な方じゃないんだよ。

 それに、あの山の麓って言っても詳しい場所も分からないのに、どうやって行くつもりなのか…。

 取り敢えず、陛下が【影】を使って調べると仰っていたからお任せ状態だ。


 そもそも、古代竜自身が【スローライフ】したがってるなら、そっとしておこうよ。(少なくとも俺ならそっとしておいて欲しい…)


 コカゲを撫でながらそんな事を考えてる俺を、カゲ丸がいつものジト目で見てくる……。

 今日はミスティに呼び出されてパルセノス邸に来ているのだ。


「リオ兄様!ご無沙汰ですわ!」

 淑女にあるまじき勢いで部屋にやってくる、自称【悪役令嬢(役?)】の娘…。


「侍女頭のアリサさんに言い付けるぞ。淑女の猫はどこ行った?」

「ア…アリサは忙しいのですっ!煩わせてはダメですのよ!」

 お小言がコワイんだろうなぁ。母上も『アリサには逆らえなかった…』と言ってたし。


 アリサさんは母上が幼少の時からの侍女で、3歳時に前世を思い出したリカルド伯父上と母上の育児で共闘したらしい。昨年、前任の侍女頭が引退しアリサさんが任される事になり、今はミスティに専任侍女がいない状態になっている。


「ミスティお嬢様。お気遣いいただきありがとうございます。ですが『煩わせる事』を為さらなければよろしいのではないでしょうか?…ねぇ」

「「‼」」


 いつの間にかミスティの後ろに立っている侍女頭。全然気配が無かった…。そして…黒い…コワイ…。


「確かにわたくしも業務が増えておりますし、ミスティ様専属の侍女を旦那様にお願いしようかと考えているところでございます」

 早い話が【お目付け役】だな。ハロルドならともかく、ミスティの専属は難儀だろうなぁ…


「アリサ。リオ兄様と大事なお話がありますの。長くなるのでお茶を用意して頂戴」

「かしこまりました。『カゲロー様!』」

 と、一瞬で姿を消すアリサ。

「‼」

「ワンワ…(オヤジはアリサの専属になったのか…)」

 カゲローはカゲ丸達の父親で【訳アリ】の黒い魔犬だ。影移動の能力はカゲローの遺伝で、母犬のリコスには出来ない。

 因みに【影移動】の能力には2種類あって、自分が移動する際は『自分の知っている場所かつ知っている人(物)の影限定』 この前の女子を移動させたほうの能力は『開始点から200m以内』の制約があるようだが、これはカゲ丸の話で各々個体差があるそうだ。全容は解明されていない。


「で、今日は何の用事で呼ばれたのかな?」

「わたくし、あれからずっと待っておりましたのに…。何のご連絡もありませんし…」

 しょんぼりと項垂れるミスティ。はて?何のことだろう?


「ずっと悪役令嬢になる為の練習もしておりますのよ!もうそろそろ本番を迎えても、きっと大丈夫ですわ!」

 ちょっと待って…『悪役令嬢になる練習』って何……?? おい!カゲ丸!目線をそらすな!


「こう!扇子を持って『オーホッホッホ~~わたくしに楯突くとは無礼者めっ!』って!どうです?上出来でしょう?本で勉強いたしましたの!」

 …きっと前に流行ってた娯楽小説を読んだんだね。いまどきそんなベタベタの悪役いないよ…。



 

◆パルセノス邸  ミスティ視点2


 リオ兄様がご入学前にいらした時にカゲ丸ちゃんの予言で、わたくしは【悪役令嬢】になる運命だとわかったのです!

 こうしてはいられない!と、メイドにお願いして街で流行っている『ざまぁ小説』なるものを買ってきてもらいましたの。


「…すごい…すごいですわ!【魔犬を愛でる会】の皆さまから教えて頂いた通りですわ!」

 かっこいいですわ~~~!扇子を《ビシッ‼》こうっ!こうですわね!

「……姉上…。また可笑しな事を始められたのですね…」


 呆れ顔のハルが、机の上に置いてある小説をパラパラとめくっています。

「遊んでばかりいないで、少しは勉強なさらないと……先日リオ兄様から頂いたお手紙に『高位貴族でAクラスに入れないと恥ずかしいから、ミスティに勉強するように伝えてくれ』と書かれていましたよ。僕はちゃんと伝えましたからね!知りませんよ…」

 …うう…お勉強…。

「あと、この小説の【悪役令嬢】現実ではすこし時代遅れですよ。高位貴族の淑女としては時流も学んだほうがいいですね」

 と、去って行きました…。何故あの速さで内容が頭に入っているのか…我が弟ながら不思議でなりませんわ。




 という訳で、リオ兄様を呼び出して練習の成果をお披露目ですわ!

 「こう!扇子を持って『オーホッホッホ~~わたくしに楯突くとは無礼者めっ!』って!どうです?上出来でしょう?本で勉強いたしましたの!」


「ミスティにしては頑張った…と言いたいところだけどね。きっとソレ…母上時代の悪役令嬢じゃないかな?」

 ガーーーン‼ ハルと似たような事を言われてしまいましたわ……時代…遅れ…そういえば先日、お父様から『マジ卍』はもう死語だから使っちゃ恥ずかしいよと言われました。流行りって難しすぎますわ~。





[おまけ]~まわるぅまわるよぉ時代はまわるぅ~


リオン「ミスティ凹んでたな…」


カゲ丸『この世界の印刷技術じゃどうしても遅れがちだしな~』


クロミ「きゃんきゃん!(ミスティの孫世代には一周回って『エモく』なるかも!)」





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