5.校外学習は平穏に済ませたい!
◆校外学習地にて リオン視点5
クラスメイトとの親睦を兼ねたキャンプ活動という名の校外学習…来たくなかった…
『きたきた!やっと本編が始まるぞ!頑張れよヒーロー!』
朝から元気なカゲ丸。校外学習の話を聞いてから指折り(肉球は折れないが)数えて待っていたからな。
なんでも、このキャンプ中に精霊と出会って色々な情報を得るらしいのだが、
「正直、メンドクサイし会いたくない」
『そんなこと言ってないで!ほら【湖】に行くぞ!』
なるほど…【湖】に精霊がいるわけか。行かないに決まってるだろう…
「リオン!魚を捕まえに行ってくれと女性達に言われたが……どうした?嫌そうだな」
どうやら顔に出ていたみたいだ。リカルド伯父上が言っていた【強制力】というヤツだなこれは!
仕方ない…と俺・アレク・護衛騎士の三人と魔犬2匹で、鬱蒼とした森を進む。水属性を持つ俺は水の気配が読めるから、湖の場所など簡単にわかるのだ…
故に……
「ついたぞ」
あえて湖とは反対方向に来てやった!目の前には豊かに流れる川…きっと魚も居るだろう。
良い川だな!とアレクと騎士が釣り竿の準備をし始める。
『リオン‼なんで湖に行かないんだっ‼精霊に会えないじゃないか!』
「会いたくないからこっちに来たんだ。会ったらどうせメンドクサイ事が始まるんだろう?」
『会わないと何も始まらないだろ!国の危機を放置するのかっ!?それでもヒーローか‼』
いや…そもそも【ヒーロー役】なんて了承した覚えないし…出来れば平穏に暮らしたいから、誰かに譲りたい。
「ひいてる!殿下引いてますよ!」
「わかった!」
そんな俺たちとは無関係なところで、アレク達はのん気に魚釣りに興じていたようだ。
「……うおりゃーーーっ!」
「おおっ‼」
アレクが勢いよく竿を引く!その糸の先には…
「はぁ…はぁ…たすけてくれて…ありがとう…です」
手のひらサイズの小人が引っ掛かっていた。
『あ!精霊じゃん』
「すみません。いつもはこんな事無いのに、急に魔鳥に攫われて上流で落とされたみたいで…」
緑の葉っぱ柄の服を着た精霊は、きっと森の中では保護色だろう。それなのに、鳥に捕まるとは…
『強制力が良い仕事してるな~』
アレクが釣らなかったら命に係わる【強制力】だったな…。
精霊は【風の精霊】だったので、少し風の魔力を分けてやると見る見るうちに元気を取り戻す。
その間に追い付いてきていた仲間の精霊たちの話を、アレクが聞いていた。
「仲間を助けてくれてありがとう!お礼に『この国の危機』について情報を提供します!」
「それは聞き捨てならないな!」
…もう【ヒーロー役】はアレクでいいのでは?と思っていたら、カゲ丸にジト目で見られていた。
「ワンワワン!(古代竜と魔王の情報を教えてくれ!)」
「はい!古代竜様と…魔王?ですか?」
精霊にはカゲ丸の声が届くようだな。
「え~~と魔王?の事はよくわからないのですが、【古代竜様】なら10年ほど前に隠遁なさっていた洞穴を出て、あのお山の麓でお暮しの筈ですよ」
と精霊が尖った山を指す…意外と近いのでは…。アレクと騎士は『おお~~近い!』とテンション高めだ。
「ワワン!?(復活してるなら何で襲って来ないんだ!?)」
前にカゲ丸に聞いたストーリーだと、古代竜は長きに亘る眠りから覚めて、魔獣の世界を脅かす人間を排除しようとするそうだ。
「さぁ?復活…というか眠っていたところ誰かに無理矢理起こされたとかで、その方と【スローライフ】すると仰っていたのが10年前。今はどうされているか分りませんが、あの地にいらっしゃる気配は変わりませんね」
『【スローライフ】だ…と……』
◆校外学習地にて カゲ丸視点5
【スローライフ】この言葉を古代竜が言った…となると、十中八九【転生者】が俺以外にもいるという訳だ!しかも、古代竜を無理矢理起こしても報復を受けない【圧倒的な強者】
「ワンワン?(起こしたのは人間か?)」
「はい。そう聞いてます。詳しい事はわかりません。10年も前だし…」
キャストの性格の破綻には俺たち【魔犬兄弟姉妹】が絡んでいるのだろうが、ストーリー自体も他の転生者のせいで変化が起こっているのかもしれないぞ。
いや…考えたくないけど…もしかして、この世界自体オレが思っているスピンオフじゃないのかも…?
「よし!古代竜に会いに行くか!リオン」
「頼むから意思疎通できるかどうか、確認とってからにしてくれ…」
「きゃんきゃん(リオンよりアレクさまが乗り気だね~~)」
オレの記憶のストーリーだと、
『古代竜と魔王の事は俺に任せろ!必ず平和をもたらしてみせる!』と片腕を上げて宣言するリオン…
その周囲にオレ達やアレクも居ない…。そう言えばヒロインが出てくるまで、リオンは一人で戦う孤独なヒーローだった。それ故、ヒロインとも強く結びつき【ミスティの断罪】に繋がるんだったな。
「確認とれたら一緒に行こう!楽しみだ!」
「はいはい。その前に陛下にも要確認だから…」
「「ゲッ!」」(何故か護衛も一緒におののく)
今リオンの周りには沢山の人やオレ達魔犬がいる。全然孤独じゃないな……。
[おまけ]~実は趣味:ソロキャンプ~
アレク「あ~魚釣れないな。釣果が精霊一匹とは…」
リオン「ちょっと待ってて」
と、風魔法で竜巻を作り川の水を吸い上げる。空中から魚がボタボタ落ちてきて、魔犬達は大はしゃぎで集めだした。
アレク「さすがリオン…でも水も降ってきてびしょびしょなんだが…」
リオン「ちょっと待ってて」
と、風魔法であっという間に乾かした。
アレク「……万能か」
孤独になりたい時は→【ソロキャンプ】の人だった。




