4.ドキドキ?の学園生活がはじまります
◆聖バルゴ学園 リオン(15歳)視点4
昨日、入学式も無事に終わり今日から普通に学園生活が始まる。
『ちょいちょいウソつくな。全然無事じゃなかっただろ』
カゲ丸め。最近ミスティ張りに勘がするどいな…。
式自体は無事に終わったんだが、その後下位貴族や平民の女子に囲まれて身動きが取れなくなったんだ。
「王太子様!握手してください!」
「ちょっと図々しいわよ!わたしが先よ」
「このあと如何されるんですか?よかったら私たちとお茶でも」
「リオン公子様!手作りクッキーとかお好きですか?」
「おふたり揃うと絵になりますわぁ!」
「実際のところおふたりに婚約者がいないのは、やっぱりそういったご関係だったり…」
「「「「「きゃ~~~~~やだ~~~~」」」」」
……『そういったご関係』とは???
入学式だったから、アレクも護衛を付けていなかったし、高位貴族の令嬢と違ってパワフルだし遠慮も無いしで、どうしたものかと…困っていたら、
「きゃんきゃんきゃ~~~ん(もぉ!うるさいのぉ~~~!)」
『あっ!こらっミカゲ!』
10人程いた女子が一瞬で姿を消した…ミカゲが【影移動】を使ったのだ。
昔、母上がカゲローによく使わせていて、気に入らない令嬢を男子トイレに転移させたと聞いた時はぞっとした…
小用中にいきなり令嬢が現れたら、絶対に腰抜かすわ!なんなら一生モノのトラウマになるぞ!
ドキドキしながら聞いてみる。アレクも心なしか顔色が悪い…
「ミカゲ?まさか男子トイレに送ってないよな?」
「きゃんきゃん!(ちがうよ!学園長室なの!)」
『あ~学園長室だってさ。速攻で王様にチクられるヤツだな』
「アレク…セイ殿下。帰ったら説教っぽいですよ」(人前なので敬語)
あ~項垂れてるな。けどミカゲを叱れない。対処出来なかった俺らが悪いんだから。
と…まあそんなドキドキなハプニングもあった訳だが、今日から切り替えていこう。
飛ばされる事を恐れてか、声をかけてくる猛者もいないようだし、結果オーライだと思う事にする。
「おはようリオン」
Aクラスの教室に入ると、既にアレクとミカゲが待っていた。今日は護衛と一緒みたいだ。
学園のクラス分けは成績で決まる。Aクラスのメンバーは、ほぼ高位貴族だ。
Aから順に下がっていくのだが、高位貴族でこのクラスに入れないのはちょっと肩身が狭い。ミスティを頑張らせる様、ハロルドに言っておこう。
「おはようございます。殿下。昨日はお互い災難でした…」
二人して苦笑いである。
「リオン公子様…。少し…よろしいでしょうか?」
数人の令嬢が話したそうに寄って来た。昨日の悪夢が蘇る……
「あ…あぁ」
「皆さま!許可が下りましてよ!」
「ワ!?!?ワワ~~~ン(え!?うわぁ~~!なんで!?)」
「ええっ!?…そっち??」
ターゲットは俺では無かった…カゲ丸が、令嬢方にわしゃわしゃと撫でくり回されている。
そしてミカゲも狙われているところ、アレクが体を張って守っていた……逆じゃなかろうか…。
「「「はぁ~堪能しましたわ~」」」
「きゅぅ~~ん(お…おそまつ…さま…でした)」
どうやら彼女達は【魔犬を愛でる会】のメンバーらしい。
自分で魔犬を飼っている者や、飼えない者は街の【魔犬カフェ】で癒しを補給しているという、魔犬ファンの集まりだそうだ。
発起人はミリア伯母上……ミスティの母上だったりする。伯母上達が学園生の時代に【リコス&影ちゃん(カゲロー)】人気が爆発して、その人気は当時イケメンのツートップだった【ステファン殿下&レオンハルト公子】を凌ぐほどだったとか……父上、犬に負けるとは…ウケル。
『…お前らも今、オレとミカゲに負けてたけどな…』
「リオン公子様が羨ましいですわぁ」
「ご自分のカゲ丸ちゃんの他に、婚約者のミスティ様のお家にはクロミちゃんにマシロちゃんに…」
…おっと、
「ミスティはあくまでも『婚約者候補』であって、婚約者確定ではないから」
訂正しとかないと、後でミスティに文句言われてしまうからな。『恋情が無い』とハッキリ言われたし……
「あら!やはりそうですのね!よかったですわぁ」
「ええ本当に!」
妙に安心している令嬢達。でもどう見ても、実は俺がフリーって事で喜んでいる訳では無さそうな……
あれ?何か少し嫌な予感がする…
『これはアレだな。昨日の続きだ。BがLの…』
令嬢達は俺とアレクを交互に見てから、
「だって、ねぇ…おふたりの『そういったご関係』に割り込まなきゃだなんて、ミスティ様がお可哀想ですもの」
「そうですわ!ミスティ様は我々【魔犬を愛でる会】のアイドルですもの!」
「ええ!悲しい思いはさせません事よ~!」
「「「オホホホホ~~~」」」
「「俺たちはそんな『関係』じゃないからっ!」」
『アレク…焦り過ぎて対外仕様の【私】が【俺】になってるぞ~』
この機会にと、護衛の騎士からも証言してもらいシッカリ訂正しておいた。最悪【王家の影】にも証言してもらおうかと思ったが、令嬢達は一応納得してくれたようだ。…ちょっと残念そうなのは、アレクと共に見なかった事にした。
◆聖バルゴ学園 カゲ丸視点4
「ミスティ嬢は男女問わず人気者だな。婚約者として申し分無いだろう?」
ご令嬢方が去ってから、アレクがこっそりリオンに聞いてきた。確かに、ミスティは小説と違って明るい良い子だしな。
「ミスティに不満等は無いよ。公爵家と侯爵家の意向で、お互い虫除けの婚約者候補になっているだけだ。両親は出来たら恋愛感情を持って結婚してほしいと願ってるし…俺にしてもミスティにしても、小さい時から一緒に居すぎて、どう考えても【兄妹】なんだよなぁ」
そうなんだ、小説との相違点の一つ…小説ではあまり接点の無かった筈の二人なのに、しょっちゅう互いの家を行き来してミスティは『リオ兄様』って呼んでるし……
『何故こうなった??』
「きゅん。きゅ~~ん(ミカゲも!にぃ・ねぇみんなと遊べてたのし~の~)」
そう言えば、やたら兄弟姉妹の遊び相手をさせられたな。アレクもミカゲ連れて来ていたし…
…え…ちょっと待て!もしかしなくても…このバグも、
『やっぱり俺ら魔犬兄弟姉妹のせいなのか…』 チーン…
「リオンはミスティを【妹】…ミスティはリオンを【兄】としか思ってないって事か?」
「まぁそういう事」
「ふぅ~ん……じゃあ『そういう事』なら俺が貰うかな…」ボソッ
「ん?何か言った?」
「なんでもない。そろそろ授業の準備しないとね」
リオンは聞いてなかったけど、俺とミカゲはバッチリ聞こえたぞ!
「きゅううん(アレクさまはね~ミスティが好きなの~~)」
ちょっと?ミカゲちゃん?そこんとこ詳しくっ!
[おまけ]~黒歴史爆誕~
アレク「そう言えば私に婚約者がいないのは何故ですか?」
陛下 「…覚えてないのか?」
王妃 「貴方が7歳の時の候補者を呼んだお茶会で『ぼくはミカゲと結婚します』などと宣ったからですわね」
陛下 「辞退が相次いだな…ハハ」




