57.マオとコカゲと魔王と…①
◆王都市街地 マオ(テル-)視点14
「クウ~ン(テル-…ほんとに…だいじょ…ぶ?)」
わたしは今、コカゲと一緒に市街地の端にある倉庫地域に来ています。
市内に店舗を構える店が所有する倉庫群です。何故こんなところに来ているのかというと・・・
先日18歳になられたアレクセイ王太子殿下の生誕パーティーで、一人の令嬢に声を掛けられまして、なにやら相談事があるとかで・・・
『自分の家が取引している商会が、魔獣の違法売買をしているかも知れないの。でも確認してからじゃないと公には出来ないし、テル-様は魔獣と会話がお出来になるでしょう?倉庫に居る魔獣に違法なのか聞いて頂けないでしょうか?』
そう言われました。
魔獣は正規であれば売買は認められています。
例えば、魔馬や魔羊などの家畜タイプのものとか、ペット用に魔犬・魔猫は繁殖飼育していますし売買が認められています。ハンター資格を持つ者が依頼を受けて、野生の魔獣を捕らえる事もありますが、これは売買というよりギルドからの要請ですね。ギルドはスタンピードが起きないよう繁殖調査も担っているのです。
違法と呼ばれるものは、希少種の魔獣を無許可で捕まえて【闇オークション】にかける行為や、危険種に分類される飼育不可の魔獣を、貴族が道楽で購入する等があります。
わたしが倉庫に保管されているという魔獣から話を聞けば、すぐに確認はとれるでしょう。
「…多分?でもココ普通の家畜も沢山いて、魔獣が何処に居るかわからないなぁ」
因みにわたしは普通の動物の言葉はわかりません。魔犬とは意思疎通できますが、犬の気持ちはわからないです。
一応この辺りに居た魔鳥に、魔獣が倉庫群にいるか聞いてみたら『いる時あるし、多分違法なヤツ』と言っていました。・・・許すまじ!
「一応彼女とここで合流する予定なんだけど…まだみたいだね~」
「クゥ~(・・・)」
コカゲは凄い人見知りなので、恐らく彼女に会うのもコワイんだろうな・・・。よし!
「コカゲは影の中で待機してて!何かあったら呼ぶから!『助けて~!』って」
「キュウ~~ン・・・(たす…けて…わかっ…た…)」
そう呟いて、コカゲは影に沈んでいきました。いつかコカゲの抱えてる不安も取り除いてあげたいな・・・。
それからしばらくすると、ガラガラと音を立てて馬車がやってきて、中から令嬢が降りてきました。
「お待たせしました。ご案内いたしますわ」
彼女に付いて、まるで迷路のような倉庫群の道を進むと、やがて奥まった場所にあるひとつの倉庫にたどり着きました・・・。
「ここですわ…」
彼女は扉のかんぬきを外し、スッと中に入り込みます。
慌てて後に続くと、中は暗く既に彼女が何処にいるかさえわかりません。
「こちらです」
声を頼りにそちらに向かうと、布の掛かったゲージが置いてありました。
そ~っと布を外すと、中に黒い塊が見えます。魔獣でしょうか?
「ねぇ…あなた、大丈夫?……寝ているのかな」
すると、黒い塊は弱弱しく首を持ち上げてこちらを見たのです。…希少種!カーバンクルです!
「キュウゥゥ・・・(うし…ろ)」
「えっ?何っ⁉・・・ウグッ⁉」
突然後ろから羽交い絞めにされたかと思うと、口と鼻を布で塞がれ・・・意識が朦朧と…し…て……
「さぁ!目が覚めないうちにサッサと運ぶわよ!これで良いのよね、お父様」
「うむ・・・魔獣と会話出来る等、儂らの商売の邪魔にしかならん!しかし公子の婚約者で宰相の娘だ。直接殺すのは色々と不味い。森に捨てても、魔獣はこの娘は襲わんかもしれんしな・・・。計画通り、隣国まで運んで娼館にでも売り飛ばそう。急げ!」
気を失ったマオは幌馬車に放り込まれ、王都の外へと運ばれていくのであった・・・。
◆影空間 コカゲ視点1
『一応彼女とここで合流する予定なんだけど…まだみたいだね~』
『クゥ~(・・・)』
知らない人と会うのは、いつも怖い・・・。とくに、若い女の人・・・
カゲ丸にぃ達が近くにいてくれたら大丈夫なんだけど・・・
『コカゲは影の中で待機してて!何かあったら呼ぶから!『助けて~!』って』
テル-はわたしが怖がっているのが分かるのね・・・ありがとう。
…たすけて・・・わたしはあの時言えなかった・・・言えばよかったな。
『キュウ~~ン・・・(たす…けて…わかっ…た…)』
影空間の真っ暗な中でじっとして、テル-の『助けて』を聞き逃さないように耳を澄ませていたのに…
急にテル-の声が聞こえなくなった・・・。
『さぁ!目が覚めないうちにサッサと運ぶわよ!これで良いのよね、お父様』
『うむ・・・魔獣と会話出来る等、儂らの商売の邪魔にしかならん!しかし公子の婚約者で宰相の娘だ。直接殺すのは色々と不味い。森に捨てても、魔獣はこの娘は襲わんかもしれんしな・・・。計画通り、隣国まで運んで娼館にでも売り飛ばそう。急げ!』
若い女の人とおじさんの悪意の籠った声・・・。
テル-に何かあったんだ!…影空間から出て確認しなきゃいけないのに・・・体が動かない・・・
怖い怖い怖い・・・
どうしよう・・・だれか・・・タスケテ・・・
[おまけ]~息子には言えない父だった~
ステファン「アレク…そのブローチは【土の精霊石】ではないか⁉」
アレク 「はい!ミスティが贈ってくれたのです!でもどうやって手に入れたか、頑なに教えてくれなくて・・・」
ステファン「・・・知らない方が・・・ゴホンッ‼ いや、まぁロマンがあって良いではないか!」
アレク 「あ…はい??(父上にしては珍しい反応だな?)」
ステファンは【火の精霊石】が、火の上級精霊サラマンダー(デカいトカゲ風)の排出物である事を曾祖父から聞いていました・・・。




