40.魔獣お悩み相談所 ②
◆ペリステラ伯爵邸 マオ(テル-)視点6
まずはシリウスに相談に行きましょう。
彼が元気が無かったのは、ルチアが言う事を聞かなくて困っていたからなのね。
《コンコンコン》
「シリウス…テル-です。今いいかしら?」
「義姉上?…どうされましたか?」
扉を開けて顔を出したシリウスは、やっぱり何処となく元気がありません。
「ルチアの事で困っているのではないですか?言う事を聞かない…とか」
「!…どうしてその事を…」
「ルチアから事情を聞きました。シリウスとも共有しようと思います」
わたしが魔獣と話せる事は既に周知されているので、シリウスも疑うことなく同意してくれました。
「竜騎士団の竜舎に出入りする人間で、ルチアに嫌がらせをする者がいます。そのせいで、ルチアは騎士団の竜舎に居たくないと思っているみたいです。何か心当たりはありますか?」
「誰がそんな・・・すみません。心当たりは…思い浮かばないです」
シリウスはかなりショックを受けたようですね。被害者のルチアを理不尽に怒ってしまった事も、きっと後悔しているでしょう。
「犯人の狙いがルチアなのか、それともシリウスなのか……難事件の予感です!必ずわたしが解き明かしてみせますよ!」
名探偵テル-の出番なのであ~る!(気分はシャーロックホームズ)
「あ…義姉上??」
◆竜騎士団 竜舎 カゲ丸視点20
名探偵・・・迷探偵の間違いじゃないのか?
オレは今、コカゲと一緒に竜舎で見張りをしているのだ。何でかと言うと、テル-に頼まれたからだ。
テル-が珍しくリオンに声を掛けてきたかと思ったら、本命はオレだった。同じ異世界転生者で、小説の知識を持ったオレに相談があるとやって来たのだ。
魔獣の言葉がわかる【魔王】のテル-は、魔獣の相談事を解決するのが仕事だと思っているが、小説の魔王はそんな事してなかったと思うぞ。…まぁ、こんだけ逸脱したら、も~どうでもいいけどさ。
で、テル-がオレに確認したかったのは『シリウスがらみのイベントが有ったかどうか』
答えは『有った』だ。それはたったの一行だったが、
『騎竜が暴れて怪我をしたシリウスの代わりに、リオンは魔獣討伐に向かうのであった』
というわけで、授業を抜けられないテル-に頼まれて、今ここにいる。
『カゲ丸もコカゲもいてくれるから安心ね!ルチア嬉しいなぁ♪』
そしてベロベロ舐められている……生臭い。テル-…後で覚えてろよ…。
『ルチア…あばれたら…シリウス…けがする…ダメ』
そうなんだよなぁ。今現在、魔獣討伐のマの字も無いのに【強制力】で怪我するとか、シリウスが不憫すぎるからな。それを阻止する為にこうやって見張っているんだ。
『来たわ…あの人間よ』
ルチアに言われて入口に目をやると、一人の男が入って来た。掃除人の作業着を着ていて、ルチアの水飲み場でなにやらゴソゴソしている。
『…ルチア…あのみず…のんじゃダメ…おかしく…なる』
興奮剤か何かを入れたのか?
男が出て行ったので、オレはその後を追う事にした。
『アイツを尾行してくる!コカゲはルチアの傍にいろ!』
『うん…ルチア…守る』
竜舎を出ると、竜騎士団の門外に一台の馬車が止まっているのが見えた。貴族の馬車だな。
男はそちらに向かって歩いて行く。尾行がバレるのマズいから、影移動で馬車の影に先回りした。
「光竜の飲み水に薬を入れました。飲めば暴れ出すでしょう。危険ですのでここは離れたほうがよろしいかと・・・」
男が馬車の中の誰かに報告している…。
「そう…。色々手こずったけれど、これでやっとあの邪魔な竜を排除出来るわね。フフフ」
犯人は貴族の女か!顔は拝めないけど、馬車の家紋は覚えた。リオンに聞けばわかるだろう。
馬車が動き出す前にオレは竜舎へ戻ったのだった。
◆ペリステラ伯爵邸 シリウス視点1
「マンティス伯爵令嬢?その方がルチアに嫌がらせを?」
「ああ、そうみたいだ。カゲ丸が見てきたのはマンティス伯爵家の家紋だった」
リオン様がテル-義姉上と一緒に、報告に来て下さいました。
マンティス伯爵家のシルビア嬢とは、婚約者探しの時に一度だけ顔合わせした事があった。
当然、ルチアが受け入れた人でなければ私の伴侶には成り得ない。と思っていたが、ご令嬢達の方がルチアを受け入れないのだ。皆一様に竜を恐れてしまっている。
マンティス伯爵令嬢もそういった事で破談になった筈なんだけど…。
「ルチアを暴れさせて、危険な竜として排除させるのが目的だろう」
「そうすれば、シリウスと結婚できると思っているのね」
「…そんな事を考えるご令嬢を伴侶にするのは御免です」
ふと、出来れば義姉上みたいな人がいい…と思っている自分がいる事に驚いた。
[おまけ]~マンティス伯爵家の家紋は~
リオン「しかし、貴族家の家紋をよく覚えられたな~」
カゲ丸「嫌いなモノは記憶に残るんだ。特に大嫌いなモノは!」
リオン「ああ、そう言えばお前【虫】が苦手だったな」
カゲ丸「あれはメスがオスを喰う虫なんだぞ!目に焼き付いたわ‼」ガクブル
マンティス伯爵家の家紋はカマキリでした。




