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39.魔獣お悩み相談所 ①

◆ペリステラ伯爵邸 マオ(テル-)視点5


 リオン様が【マオと真正テル-】の話を、ヨハンお義父様と陛下に話してくれたそうです。

 

 パルセノス侯爵家ですこし勉強をした時に【貴族籍の詐称】について知ってから、ずっと心にわだかまりがあったのです。きっと罰せられる事になると、覚悟もしていたのに・・・


「結論から言うと『知らない事を罰するなんて出来ない』との事だよ」


 どうやら陛下は『聞かなかった事』にして下さったみたいです。


「私も知らなかった事にしたいけれど、君の父という立場上そうもいかないから、ふたりだけの秘密でどうだろう?ローズマリーとシリウスには内緒だよ。あのふたりは顔にでちゃうタイプだから、秘め事には向かないんだ」


 お義父様はそう言って、笑って下さいました。きっと優しいお二人がわたしの事で、心を痛めてしまうのを懸念されているのでしょう。


「わたしはこのままでも良いのでしょうか?」

「うん。今まで通りにしてくれたらいいよ。それに…実は、魔獣と話せる稀有な力を持つ君に優しくして、繋ぎとめようっていう魂胆なんだ。狡猾だろう?フフッ…」


 本当に狡猾な方は、そんな事バラしませんよ。クスクス


「では、お役に立てるよう頑張りますね」

「ああ、期待しているよ」

 そう言って、また王宮に戻って行かれました。




「クウ~ン(テル-…ルチア…こまってる)」

 コカゲが報告にやってきました。

 最近コカゲは率先して、わたしと魔獣の仲介をしてくれます。人間不信の魔獣でも、コカゲには相談出来るらしいのでとても助かっています。


「じゃあ魔王のお仕事(?)にいきますか」

「クウ~ン(おてつだい…する)」



 ルチアの竜舎へと足を伸ばすと、ちょうどシリウスが出てきたところでした。


「シリウス!お帰りなさい」

「…義姉上。ただいま戻りました」


 なにやら元気がありませんね。どうしたのでしょう・・・

 シリウスは、ハァ~っとため息をつきながら屋敷に向かって歩いて行きました。


 学校のある日は、わたしは馬車で、シリウスはルチアに乗って通学しています。授業の間は学園にほど近いところにある竜騎士団の竜舎にルチアを預け、放課後になったら竜騎士団で訓練や仕事もするそうです。


 竜騎士団は元々は辺境伯爵家にしか無かったのだけれど、隊長だったローズマリー様が嫁入りで王都に行くことになり『絶対ついて行きます‼』と無理くり付いて来た者達の為に、当時王太子だったステファン陛下が急遽、居場所として王都竜騎士団を作ったそうです。


 お義母様が笑って仰るには『わたくしの飛竜に懸想する竜(こ)たちが多くて、困った乗り手が泣きついて来たのよ』との事でした。きっとお義母様に懸想してた人も居たと思いますよ。


 今は魔導師団や騎士団と並ぶ重要な存在となっていて、当然シリウスも在籍しています。


 にしても…いつもはもっと遅くに帰ってくるのですが、今日はすこし早い帰宅ですね。


「ルチアに会いに行こうか」

「キュン(…うん)」


 シリウスが出てきた扉を押して…そ~~っと中を覗くと、白い竜体がこちらに背を向けて横になっています。

 ルチアです。なにか不貞腐れているようにも見えますね。


「クウ~ン(ルチア…げんきない)」

 コカゲの鳴き声に反応して、長い首を持ち上げました。


『…コカゲ? あ!テル-も!来てくれたの?ありがと…』

 いつもは元気な女の竜(こ)なのに、やっぱり様子が変ですね。


「ルチアは元気ないね。あとちょっと怒ってるのかな?」

 シリウスも元気無かったし、喧嘩でもしたのかしら?


 近くに行く為に、よいしょと柵を乗り越えます。マナー講師に見つかったらどやされますね。ふふ…


『あのね……竜騎士団の竜舎にね。…行きたくないの』

 しょんぼりとした様子です。何があったのでしょうか・・・


「今日はやく帰ってきたのは、ルチアが帰りたがったから?」

『…うん。シリウスが訓練しようとしたけど……言う事聞かないで帰ったの……シリウス怒ってる』


 魔獣たちは魔獣たちで色々事情があったりするが、会話が出来ないので人間はそれを汲み取る事が出来ないのだ。

 わたしは魔王に就任して言葉がわかるようになって、人と魔獣の関係をもどかしく思う事が増えた。特に従魔や騎馬・騎竜は人間と密に接しているから、関係が拗れれば大ごとになる・・・


「竜騎士団に行きたくないわけを教えてくれるかな?」


『……意地悪な人が来て…ルチアの嫌なモノ置いて行ったりするの…もう行きたくないの』

「⁉…竜騎士団でそんな事が‼」


 これは事件のニオイがしますね…。

「任せてルチア!わたしが何とかしてみせる!」

『テル-…ありがとうっ!』


「わわっ‼」

 竜舌でベロベロ舐められるとちょっと生臭い・・・


「きゅ~ん(テル-…かっこ…いい)」





[おまけ]~嫁入り前のあの日のひとコマ~


マリー 「では皆、達者でな!」


竜騎士A「我らも随行いたします!隊長!」


竜騎士B「一生ついて行きます!」


竜騎士C「お傍に置いてください!必ずお役にたちます!」


マリー 「お前達…わかった!共に王都へ行こう!」


前辺境伯「マリー‼ ワシも!ワシも行くぞ‼」


マリー 「お祖父様はダメです」《キッパリ》


前辺境伯『ガーーーーーン…』


 辺境のアイドル末っ子ローズマリーは皆から愛されておりました。




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