36.テル-とマオのお話 ②
◆ジジの家 マオ(テル-)視点3
「リオン様!ありがとうございます。なんだか吹っ切れた感じがします。…あ!お昼だ!昼食作ったので、食べて下さいね!」
もうすっかり昼食の事を忘れてしまっていましたよ~。
そう言えば、おじいちゃんが『キャンプ仲間に魚を貰った』って言ってたのって、リオン様の事だったんだわ。
小説の通りハイスペックな人みたいだけど、ちょこちょこ違う部分があったりするのね。
趣味がソロキャンプっていうのも、何だかイメージにそぐわないし・・・そもそも、小説では魔犬を連れてなかったわよね?
もしかして、わたしが知ってる【精霊と天命の神子】とは違う話だったりして…。
リオン様に許可を貰って、一度カゲ丸と前世の話をしてみたいな。
「そういえば、おじいちゃん!ミノタリオ男爵家が没落したんだけど……何か…した?」
「ん~~儂は何もしとらんぞい」
「ぢゅ!(ウソれす!)ぢゅ~~~!(オジジ様の命令なのれす!)」
窓の外から複数のビーバー種の魔鼠がのぞき込んでいた。
「えっ!?魔獣!?なんで?」
リオン様が驚いています。ここには沢山の魔獣がやって来る事をおじいちゃんは話して無いみたい。
「やっぱりおじいちゃんが命令したんだ!この子達に危ない事させちゃダメって言ってたのに!」
「だってあやつ等が、マオをいぢめおったから…」
「だってじゃないの!魔獣が人間にやり過ぎちゃったら【魔王】のわたしが責任者として討伐されるかもしれないんだよ!それでも良いの?」
「駄目じゃ~~!マオすまんのじゃ~」
まったくもう!気持ちは嬉しいけど、命に係わる『ざまぁ』はやったらダメなのよ!
《カラン》 リオン様のフォークが床に落ちている・・・
「魔王?…テル-が?…えっ?」
「おお!言うのを忘れておったわい。今期の【魔王】はマオじゃぞい」
はい。四年前から、何故か魔王やらせてもらっています。
◆ジジの家 リオン視点30
「本来の魔獣の王が現れんもんじゃから、マオが仮で【魔王】に就任したんじゃ」
「名前が魔王に似てるから~って単純な理由で……」
「へ~~・・・そ~なんだ~」
ここに来てから次々繰り出される爆弾発言に、もう脳が考えるのを放棄しそうになってるよ!俺は!
魔王テル-の話によると、魔王としてやっている仕事は主に『魔獣族同士のトラブルの仲裁』愚痴を聞いたり慰めたりナデナデしたり・・・
「それ…魔王の仕事…なのか?」
「…わたしも、なんか違うような気がするんですけど…」
「ぢゅ!(大事れす!)ぢゅ~~~!(魔王様は我らの癒しなのれす!)」
「あら、ありがとう」ナデナデ
……やっぱり会話してるよな。そして、やっぱりナデナデが仕事なんだ……魔鼠が行列作って順番待ちしているじゃないか。
待っている巨大鼠達は、俺と目が合うと何故か『ペコリ』・・・ペコリ?
「ハッ‼ もしかして俺が森で魔獣に挨拶されたのって!テル-がらみなのか!?」
「そうじゃ。オヌシがマオを皇太子から救ったのは皆が知っておるからのう…ふぉふぉ」
う・・・そう言えば、何かキラキラした目で見られていたような…。あれって、感謝とか尊敬の意味だったのかぁ。
「魔獣と会話できるのは魔王だからか?」
「はい。就任した時から、魔獣の言いたい事が分かるようになったんです!」
そりゃ~そうだな、魔獣と会話出来なきゃ魔獣の王様なんてやれないもんな…。
ちょっと頭を整理しよう…
カゲ丸は異世界転生者で、この世界は小説のストーリーで作られていると言った。
ストーリーの内容は、ヒーローがヒロインと協力して【古代竜】や【魔王】それに【気象災害(だったか?)】からこの国を守るというもの…。そしてヒーローとヒロインは結婚してハッピーエンドを迎える…。
と・こ・ろ・が…だ。カゲ丸も薄々感づいているが、ストーリーは既に破綻していると思う。
①俺はヒーローをやる気がさらさら無い。(絶対に!)
②真ヒロインは神様と何処かにトンズラした。
③古代竜は人間の子を養育するほどの『親人間派』で『スローライフ命』な、おじいちゃん。
④偽ヒロイン(人間)が、現職の魔王に成り行きで就任。
⑤気象災害はこの国ではなく、隣国で起こっている。
逆に、ストーリーには無い流れが起きている。
ミスティは俺では無く、アレクの婚約者になったし、ヒーローと次期王の師匠が古代竜だったりする。
今日の【魔王】と【真ヒロイン】の話を、帰ってカゲ丸に教えたらどんな顔をするだろう……フフッ
「よし!奴に『ざまぁ』って言ってやろう!」
「キュ~ン(リオ…うれしそ…)」
「何か良いことあったのかしら?」
「ふぉふぉふぉふぉ」
[おまけ]~かっこわるいよ~
魔鼠A「ぢゅ~~~!(あの方れすよ。前に古代竜様をボコボコにしたのわ)」
マオ 「(コソッ)おじいちゃん…最強竜って言ってたのに?」
コカゲ「クウ~ン(かっこ…わるい…)」
古代竜「うっ!寝ておる竜にいきなり攻撃する方がどうかしておるぞ!」
マオ 「えっ!リオン様…サイテー」
コカゲ「キュ~ン(リオ…かっこわるい…)」
リオン「え!なんの話!? 何でそんな目で見てるのっ!?」
魔獣の会話はリオンにはわかりません。




