19.ダイナモ・ブートキャンプ ③
◆ダイナモ霊山頂上 リオン視点15
「無事到着したのう。お疲れさまじゃ」
山頂の少し平坦に開けた場所で、人化したジジさんが待っていた。あの巨体じゃ狭いからな。
纏う魔力を解いて地面に降り立つ。う……キタ陸酔い…飛行魔術はコレだからあまり使いたくないんだよ…。
「大丈夫か?リオン、酔ったのか?」
と、アレクが光魔法をあてて回復してくれた。
ありがたい…本当に君がヒーローで間違いないと思うよ。と、カゲ丸を見ようとしてハタと気付く…置いてきてしまったな……ま、いっか。ミカゲも一緒だし…。
「では総仕上げじゃ!アレクには土の上位精霊と【相撲】を取ってもらうのじゃ!」
「「スモウ?????」」
アレクと首を傾げる。知らない単語に困惑していると、ジジさんが『すまんすまん(マオ情報じゃったわい)』と【相撲】について説明してくれた。
「この円は土俵と言ってのう。この中から出たら負けじゃ。本来なら足の裏以外が地に着いても負けなんじゃが、術の都合もあるでのう。今回は無しじゃ」
なるほど…円の直径は5・6m程か?相手を外に出せば良いんだな。意外と簡単なんじゃないか?
「では対戦相手じゃ。『ゲイブ』出番じゃよ!」
ジジさんの呼び掛けで、地面が《ゴゴゴ・・・》と揺れ、中央が盛り上がる。高さ3m近いゴーレムがそこに現れた…。デカいな。これ押し出せるのか?
アレクが土俵の中に入る。そしてゴーレムを見上げ、
「土の精霊ゲイブ殿!お手合わせ、お願い致します!」
礼儀正しく頭を下げた。ゴーレムもほんの少し頭を動かした。どうやら素早くは動け無さそうだな。
「では、はじめ!じゃ」
アレクは様子見の姿勢で構えているが……
しーーーーん・・・ゴーレムは微動だにしない。あちらも様子見なのか?
「早うせんと日が暮れてしまうぞい」
「ジジさん…。ゴーレムはこのまま動かない…とか?」
隣に行ってこそっと聞いてみる。
「そうじゃ。【王家の子】にケガはさせられんからのう。ゲイブには攻撃せんように言うてある」
なるほど…正真正銘押し出すだけでOKなんだな。けれど…
アレクは渾身のストーンバレット(石の散弾)を放つが、ゴーレムはびくともしない。それなら…と、
「うおおおおおーーーーっ‼」
力いっぱい押してみるが、一ミリも動かなかった。
「だあああああ‼」
「はぁ…はぁ…」
「ぬおぉぉぉぉーーーーーっ‼」
「はぁ……はぁ……」
「こしょこしょこしょ」
シーーーーン・・・
方向を変えて押したり、ゴーレムに登って体重かけたり、くすぐってみたり??
何かゴーレム目を閉じてないか?飽きて寝てしまったんじゃないのか??
◆ダイナモ霊山頂上 アレクセイ視点5
「はぁ……はぁ……」
だんだん日が落ちてきた。引いても押しても動かない…。ゴーレムは立っている状態で土俵の真ん中にいるから、倒せれば頭が外に出る!と考え首にぶら下がってみたが、微動だにしない……。
魔法攻撃も通じないし、いったいどうすればいいんだ。
八方ふさがり状態の思考に、ふと過去の映像が過ぎる。
『アレクしゃまのえっちぃぃ~!』と、プンスコのミスティ・・・
あれは…俺が8歳でミスティが6歳だった。
王宮にパルセノス家の面々が来ていて、ミスティの遊び相手を頼まれた時のことだ。
女の子相手に何をして遊べば良いのか分からなかった俺は、御祖父様の見よう見まねで魔法を披露したんだ。
「ええい!」
《ボコッ》花壇や芝生の土が盛り上がる。
「わあ!モグラしゃん?」
喜んでくれたので、調子に乗って更に、えい!とボコボコを増やす!
《ボコッ》《ボコッ》《ボコッ》《ボコッ》・・・
「きゃああ!」
どうやらミスティの足元で発動したみたいだ!
すっころんで、下着が丸見えのミスティ。
「アレクしゃまのえっちぃぃ~!」
・・・回想終了・・・
ハハッ!……ミスティありがとう!
「これで!どうだっ‼」
ゴーレムの足元の【土】に魔力を込める!《ボコッ》《ボコッ》
すると、ゴーレムは簡単にバランスを崩し、
《ズズーーーーーーーンッ‼》
やっ…た…倒れた‼ 頭はっ!?……出てる‼‼
「お見事じゃ。よう気が付いたのう」
「やったな!アレク!」
「ああ、ありがとう…」
ふと倒れたゴーレムを見る。倒れた拍子に出来たのかボディにキズが付いていた。
「ゲイブ殿。お手合わせ、ありがとうございました」
光魔法を当てるとキズは消えていった。良かった精霊にも通用したみたいだ。
”ボフンッ!”
「やだ~~♪ナニこの子!可愛いっ!」
ゴーレムは消え、替わりにムキムキ褐色肌のマッチョ男にぎゅうぎゅう抱きしめられるアレク…。
「これゲイブ!アレクを絞め殺す気か!やめい!」
「王太子の死因が【マッチョ】は困る…」
後世に残るじゃないか。
ようやくゲイブ殿に開放されてひと息つく。
「優しい王子様ねぇ。アタシ達【土の精霊】は何時でも協力するわ。頑張ってね♡」
こうして古代竜による、ダイナモ・ブートキャンプは幕を閉じたのだった。
[おまけ]~キャンプ地に戻ってみると~
アレク「はっ‼そう言えばミカゲは!? ミカゲッ‼ どこだ!?」
アレクの影から出てくる2匹
ミカゲ「きゃんきゃん(ただいま~アレクさま)」
アレク「置いて行ってゴメンよ」とミカゲを抱きしめる…
アレク「ん??なんか太った?か…」
公爵家のおやつは美味し過ぎたようです。




