18.ダイナモ・ブートキャンプ ②
◆ダイナモ霊山山麓キャンプ地 リオン視点14
ジジさんによるスパルタ式集中特訓=ブートキャンプが開始され、アレクは毎日疲労困憊だが音を上げる事も無く頑張っている。さすが【ヒーロー】だ!
『待て待て!勝手に『役』を明け渡すな!』
チッ!今のこの状況を見てみろ。【汗と涙と努力と根性】のアレク。【お玉と鍋とレシピ本】の俺。
どっちがヒーローに相応しいかは一目瞭然だろう?
「リオンよ。晩飯はできたかのう?」
ジジさんとヨレヨレのアレクが戻って来た。今日はもうお終いって事だな。
「出来てるよ。ふたりともお疲れ様。座って待っててくれ」
ジジさんがアレクを指導している間、俺は身の回りのことに徹している。主に食事の用意や洗濯だな。
最初は余計な邪魔が入らない様警戒していたが、ジジさんの気配のおかげで魔獣も野良竜も寄り付かないと気づいて、今は家事に専念している。
ソロキャンプのスキルも上がったに違いない!
「リオン。いつもありがとう。料理上手くなったな」
ヨレヨレなのに笑顔が眩しい。キラキラ度も上がっているな、光属性も特訓してるのか?
「さて、明日で四日目じゃ。そろそろ仕上げと参ろうかの」
魔法の発動スピードや操作技術は格段に進化したようで、アレクは自信を取り戻し始めている。良かったな!
「技術はもう申し分無いがパワー不足じゃから…明日は土の上位精霊と勝負じゃ!勝って認められれば、いつでもどこでも大きな魔法が使えるようになるからの。ファイトなのじゃ!」
あ~~あれか…俺もやったなぁ。懐かしい…思い出したくないけれど…
「ありがとうございます!頑張ります!」
ジジさんに認められて嬉しそうなアレク。明日に向けてもう寝た方がいいぞ!多分結構キツイ筈だからな。
そして次の日、
「ではこのダイナモ・ブートキャンプのメインイベントじゃ!先ずはこの山の頂上まで行くぞい!」
”ボフンッ!” と、ジジさんが人化を解く…
「はっ!?はあああぁぁーーーーーっ!?!?!?」
長い付き合いだが、見たことないくらい驚くアレク……。ジジさん…言ってなかったんだ。そりゃ驚くよな。
そんなアレクの肩に両手を置いて向き合う。
「ジジさんはお前が会いたがっていた【古代竜】だ。でもこの事は秘密にしてくれ」
「こ…古代…竜」
「ジジさんは【スローライフ】したいだけの温和な竜だと分かっただろう?周囲を騒がせたくないし、俺もキャンプ仲間が居なくなるのは嫌だ!だから陛下にも言わないでくれよ」
「…わかった!誰にも言わない!俺も師匠が大切だ!」
落ち着きを取り戻したアレクはしっかりと約束してくれた。良かった。俺の友情は守られたようだ…
それに、戦った俺だから分かる【古代竜】に手を出しちゃ駄目だ。俺はアレクも失いたくないんだよ。
『儂は先に頂上で待っておるからのう。ふたりとも気を付けて来るんじゃぞい』
あの巨体なのに、重力を無視する優雅な動きで飛び去る古代竜……。え?俺も行くの?
アレクは『カッコいいなぁ~』と見惚れているが、俺たちは自力であの山登るんだぞ。まぁ俺は風魔法使うけどな。
「アレク。なるべく体力は温存して、魔法を駆使して登った方がいい。頂上で待つ【試練】は恐らく体力勝負だから…」
「リオンも【試練】を受けたのか?」
「精霊に『俺』を認めさせるのが目的で、俺の場合は【風精霊】が相手でな。【24時間鬼ごっこ】をさせられた。魔法を使おうにも相殺されて…あいつら飛びやがるし…」
結局全員は捕まえられなかったけど『おもしろかった~~♪』『リオンのこと気に入ったよ♡』と、認めてもらえたのだった。死ぬかと思ったがな・・・
「認めてもらえればこんな風に大きな魔法が使えるようになる。先にいくぞ~」
風魔法で強風を纏い、自分の体を浮かせ…飛ぶのだ!コツを掴むまで随分と時間を要したが、最近やっと安定して使えるようになったのさ。
「!リオン!ズルいぞっ‼」
アレクも遥か下で走り出したのが見えた。
◆ダイナモ霊山山麓キャンプ地 アレクセイ視点4
「!リオン!ズルいぞっ‼」
飛んで行くリオンを追いかける。
リオンは体力を温存しろと言った。ダイナモ霊山は魔素が豊富で、修行の間も魔力切れを起こす事は無かった。なら・・・
俺は地面に意識を集中させる。まだ広範囲の魔術は使えないが……これなら!
《ボゴゴゴゴゴ・・・・》
自分の足元を中心に直径50センチの円柱を出現させ、一気に上昇して木々を超える辺りで止める。
「次!」
一歩踏み出す辺りに新たな柱を出現させる。山頂に向けてこれを繰り返すんだ!
後ろでは役目を終えた柱が消失していく。サラサラ消えていくところを見ると、柱の中は空洞なのだろう。ジジ師匠には繊細な魔力操作を教わったからな。
「おお~~!アレク凄いな!魔力操作は完璧だ!」
リオンが隣にやってきた。リオンの飛行も恐らく繊細な操作が必要な筈だ。きっと人知れず努力しているんだろうが、この親友はそんな素振りは一切見せないのだ。
「このまま一気に登りきるっ‼」
泥臭くて、皆が憧れる王太子像にはほど遠い姿だが、これが『俺なのだ』と強く実感できた。
[おまけ]~その頃の二匹~
ミカゲ「きゅう~ん(あ~いっちゃった~)」
カゲ丸「ワン(だな)」
ミカゲ「きゅうん?(おいかけないの?)」
カゲ丸「ワンワン(行ってもやる事無いしな~。一回おやつ食べに帰るかな?)」
ミカゲ「きゃん!きゃん!(いくいく!おやつおやつ!)」
カゲ丸「ワンワ~ン(ミカゲは母似だな~太るなよ~)」
母犬リコスはおやつが大好きで、コロコロしてた時期があった。




