16.ダイナモ・ブートキャンプ ①
◆ダイナモ霊山山麓キャンプ地 リオン視点13
三国会議の開催まであと一か月となった今日、俺たちは『あのキャンプ地』に立っていた。
父のアエトース公爵とリカルド伯父上の助言もあって、陛下の許可は割とスムーズに降りたのだが、アレクが抱えている公務の処理に一か月を費やしてしまったのだ。
俺も多少手伝ったが、まさか王太子の公務があんなに大変だとは……そりゃあ、個人的な訓練の時間なんてとれないよな~。それでも腐らず前向きな幼馴染を俺は誇らしく思う。
「なんじゃ?珍しいのう。リオンが他の人間を連れてくるとは…」
◆ダイナモ霊山山麓キャンプ地 アレクセイ視点3
今から一か月前の事・・・
「リオン・アエトースから、お前に【魔法の特訓】を受けさせるからと許可を願う申請があった…」
学園で弱音を吐いて数日後、王の執務室に呼び出され事の次第を聞かされる。
「お前はこの国唯一の王子であるし、あまり危険には晒したくないのだがなぁ……エキシビジョンの事を気に病んでいると聞いたが、別に【国の威信】とか気にしなくて良いんだぞ。あんなものの評判ひとつで我が国の権威が揺らぐものか…」
父上はため息をつきながら、執務机の上の書類を見るよう“トントン”と促す。
書類は許可申請書のようで、大筋は【魔法特訓参加の許可申請】に関する内容なのだが、別途約束事項があり、
①この特訓に関して他言は無きようお願いいたします。
②場所は秘匿とさせて頂きますので【護衛及び王家の影】の随行は認めません。
③期間は5日。この間、アレクセイ殿下とリオン・アエトースは学園を欠席いたしますので、適当な理由をお願いいたします。
俺はいったい何処に連れていかれるのだろうか……不安しかない。けれど、
「父上!リオンが私を危険に晒す事はありません!どうか許可をお願い致します!」
と、頭を下げる。リオンの好意を無にはしない!
「ふむ。レオンやリカルドからもお墨付きを貰ったリオンからの申請だ。無下には出来まいな」
と、父上は許可申請書に王の確認印を押してくれたのだった。
「だが、今ある公務で急を要するモノを片付けてからだ。言い出しっぺのリオンも使ってサッサと終わらせる事だな」
フフフ…と笑う父上はやっぱり何処となく【黒い】…。すべてが終わったらきっと色々聞かれるのだろうな…覚悟しておこう…。
そして現在、リオンがよく来るというキャンプ地に立っていた。
「ミカゲ、お疲れ様。よくやってくれたね」
リオンがミカゲの頭をよしよしと撫でている。
俺はつい先ほどまで荷物を持って自分の部屋にいたのだが、
「きゃう~ん(行くね~)」 ”とぷん”
気が付けばミカゲと城外の路地裏に居て…目の前には黒い魔犬…
「カゲロー?」
「きゃんきゃん!(ととさまお願い!)」
「バウッ(いってらっしゃい)」”とぷん”
次に目にしたは、鬱蒼とした森の木々と腕を組んで立つリオン…そしてカゲ丸。
「移動時間も惜しいからさ。それにこれなら、さすがの【王家の影】も追って来れないだろ?」
こっちだ…と言うリオンに付いて行くと渓谷に出た。崖を慎重に降りると少し開けた河原があり、そこが目的地だと言う。キャンプをしに来たのか??
「なんじゃ?珍しいのう。リオンが他の人間を連れてくるとは…」
誰も居ないと思っていたのに、白髪で白髭のご老人がいつの間にか傍に立っていた…。
「ジジさん、久しぶり!今日はお願いがあってね。俺の友人に魔法の修行をつけて欲しいんだ」
どうやらリオンの馴染みのようだ。趣味のキャンプ仲間だろうか?
おや?…ふと気付くと、ミカゲの姿が無い。…ずいぶん離れたところでカゲ丸と蹲っているのを見つけた。きっと疲れたんだな…休ませてやろう。
「ほほう!土属性に光属性か!久々に腕が鳴るのう!」
「ジジさん、今回5日しか時間が無いんだ。土属性優先で頼む。光は後回し」
あのご老人は『ジジさん』と言うのか、では…
「ジジ師匠!よろしくお願いいたします!」
王族はめったやたらと頭を下げないと教えられているが、ココは修行の場…そしてジジさんは師匠なのだから問題は無い筈だ!
◆ダイナモ霊山山麓キャンプ地 カゲ丸視点15
「ジジ師匠!よろしくお願いいたします!」
アレクが勢いよく頭を下げている。 オレとミカゲは現在距離を取って避難中だ。
「きゅうう~~~ん(にぃにぃ…アレ、古代竜様?)」
「ワン(そうだよ)」
「きゅんきゅん!(アレクさまが食べられちゃう!」
「ワンワン(人や魔獣は食べないから、安心しろ)」
そう言うとミカゲは安心したようで、その場に蹲った。
食べやしないけど……リオンの話によると、恐らく修業は厳しいだろう。安心の要素は欠片も無いんだが・・・
さあ、古代竜様監修【ダイナモ・ブートキャンプ】の開始だぞ。
[おまけ]~噂は拡がるよ♪どこまでも♪~
担任教師「今週、アレクセイ殿下とリオン公子は遠方に公務があるとの事でお休みとなります」
授業後・・・
女生徒A「…おふたり揃って…遠方に…」
女生徒B「公務?…本当でしょうか?」
女生徒C「前に抱き合っていらしたわよね…」(抱きつかれただけ)
女生徒D「公務とは名ばかりの…ふたりきりでご旅行」(ふたりきりでも旅行でも無い)
女生徒達「「「「「いや~~~~~~ん♡」」」」」
噂の拡散阻止に多数の【影】が駆り出される事態となった。




