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12.古代竜とマオのスローライフ

◆ダイナモ霊山の麓の森  古代竜視点1


 儂は、古より人間が恐れ敬う存在であったのじゃ。

 遥か昔には儂を神の如く扱う民もおったが、人間という生き物は寿命が短いせいか移ろいも容易い。


 儂の住まう洞穴に出入りする者が居なくなって数十年は経ったじゃろうか、もしかしたらあの村はとうに無くなっておるのやも知れん。うとうとと眠りながらそう考えておった。


「うわぁぁ~~~ん‼」

『!!!! 何じゃ!?』

 突然、子供の泣き声に叩き起こされたのは、今から10年ほど前の事じゃ。


『おぬしは誰ぞ?なぜこんな所に居るのだ?』

 子供は泣きじゃくりながら、クシャクシャの紙を差し出してきたのじゃ。手紙のようだの。なになに…ふむふむ…

 どうやら、天候不良で不作に悩む村が【大昔の伝説】に縋って【生贄】としてこの子を放り込んだらしいぞ。…儂、今まで【生贄】なんて貰った事無いがのう。川でとれたぴちぴちの鱒とかが精々じゃったが……もしやあれが生贄と勘違いされておるのか?


『おぬし、女の子だのう。儂は人間は喰わんから安心せい。名前はあるのか?』

 久しぶりに会話の成り立つ存在に、なるべく優しく声を掛けると子供はホッしたようじゃ。

「…マオ、五歳。……お父さんとお母さんが死んじゃって…孤児なんて要らない子だから…お荷物だから…せめて役に立て…って」

『そうかそうか。辛かったのう。マオよ』

 儂に天候を操れる力でもあると思うておるのか?まさかのぉ? 

 まぁ恐らく食い扶持を減らす『大義名分』にされたのじゃろうが…


「おじいちゃんは何て呼べばいいの?」

『儂か?特に名前は無いのう。皆は【古代竜】と呼ぶがな』


「古…代……竜…?うう…」

 マオは突然、頭を抱えて蹲った。

『どうしたんじゃ!? 頭が痛いのか?どうすればいいのじゃ!』

 永くは生きて居るが、人間の病の事など分からんぞい!


「はぁ…はぁ…頭痛すぎ…気持ち悪すぎ…」

 ようやく持ち直したマオは、先ほどとは全く違う人間に思えた。

『おぬし?誰じゃ?』

 見た目は五歳のマオのままじゃが、中身はもっと上じゃなかろうか…


「…正真正銘マオだけど、前世を思い出したの。ここって【セイテン外伝・精霊と天命の神子】の世界でしょ?」

 聞いたことが無い文言をスラスラと話すマオ。どうやら【転生者】というものらしい。

 転生者の事は永い竜生の中で幾度か耳にした。しかし、目にしたのはマオが初めてじゃった。


 マオの話す【異世界話】が面白すぎて、儂はすっかり虜になってしまったのじゃ!

『よいのう。儂も【スローライフ】とやらがしてみたいのう』

「…じゃあ!洞穴(ここ)を出て、一緒にスローライフしよう!」



 こうして数百年住まいにしていた洞穴を出て、マオに言われるがまま霊山の麓のこの森に居を構えたのじゃ。


 スローライフは自分で畑を耕したり、魚を捕りに行ったりするから…竜の姿はとても不便なのじゃ!

 なので、儂は一念発起して【人化】を習得したんじゃ。勿論見た目はマオが決めた、白い長髪白いお鬚の『おじいちゃん』じゃ!(白いのは白髪じゃのうて儂が白竜だからじゃぞい)

 マオは『仙人みたい!』と喜んでおったな。


「おじいちゃん!マオの料理おいしいかな?」

 儂は物を食べなくても空気中に漂う【魔素】を取り込めばよいのじゃが、マオはそうはいかん。美味しいものを食べるために毎日試行錯誤しておった。

 そんな努力を無駄にはさせまい!と、儂も『美味しいを理解する』修行中じゃ。


 因みに【魔素】とは人間が使う魔力の素で、精霊どもが空中に垂れ流した【余剰な分泌物】じゃ。人間は知らんがのう。知ったら精霊に悪さする輩が出んとも限らん。ナイショじゃわい。


 そんな風にマオと毎日スローライフを楽しんでおったら、ある日魔獣の長どもがやってきたのじゃ。

『古代竜様。お初にお目にかかります。実は折り入ってお願いが…』

 

 魔獣たちは各々の種族間で諍いを起こす事が度々あるのじゃが、それを束ね仲裁する役目の者を、魔獣の王【魔王】と呼んでおる。(長いと知能の弱い種族に伝わらんからの)

 その魔王が、近年現れておらんというのじゃ。このままでは種族間は勿論、人間とのあいだでも戦争が起きそうだ……と、儂に【魔王】を頼みにきたのじゃな。


「いやじゃ!わしはスローライフが忙しいのじゃ!」

 そんな~~と嘆く獣ども。ふむ、確かに戦争は不味いんじゃが…どうしたものか…


「おじいちゃん?賑やかだね。わぁモフモフがいっぱい!スベスベもいるね!」

 マオめ…気になったのか家から出てきおった。この子は獣が好きなのじゃ。この辺りの獣もマオが好きでよく懐いておる。


『古代竜様?この女児は?』

 獣どもは、マオに興味津々で纏わりついておるのう。マオも『くすぐったい~』と満更でもなさそうじゃ……マオの言う【かめら】なる物があれば良かったのにのう。


「この子は【マオ】じゃ!人間の…今は12歳か?儂の家族じゃ!」


『『『『『マオ・・・魔王様‼‼』』』』』

「ええっ!? なになに~~!?どういう事ーーーーーっ‼」


 どうやら今期の【魔王】はマオが就任したようじゃの。めでたしめでたし…じゃ。

 




[おまけ]~魔王様のお仕事~


魔犬 「わんわん!(魔王様~撫でて~!)」

マオ 「はいはい、ナデナデ・・・」


魔鳥 「ぴ~ぴ~(魔王様~ツガイが浮気した~)」

マオ 「可哀想に、ナデナデ・・・」


魔猪 「フゴ…フゴ…(魔王様…おなかいたい…)」

マオ 「食べ過ぎだね~ナデナデ・・・」


古代竜『ズルい!儂もナデるのじゃ!』

マオ 「コレ絶対【魔王の仕事】じゃない気がする・・・」





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