第51話 リーリャとひまわりの種
リーリャとフィリーは、昼食までの間に敷地内を散策し、施設を回ってみることにした。
業務として日頃から敷地を回ることは大切ではあるが、こうして休日に足を運ぶことも大切なのかも知れない。業務として回るのではなく、純粋に見学として休日に回るときの方が、より客観視できることもある。
「これは何を挽いているのですか?」
「これはこれは、王女殿下。これは挽いているのではなく、絞っているのですよ」
湖から少し林に入ったところ。小川のすぐ側にある水車小屋の中では腰の曲がったおじいさんが何やら作業をしていた。
すぐ横の麻布の中を覗くと、あふれんばかりのひまわりの種。夏が終わり秋に入って収穫されたものだ。
「これは、油ですか?」
「そうです。ひまわりの種を水車を使って圧搾して、油を採っているのですよ。オリーブなんかもいいですが、せっかくたくさんありますから」
ひまわりは観賞用として人気が高いが、ハチミツの蜜源や、油の原料として栽培されているらしい。この地域では麦の生産が盛んだが、少し行ったところには平野一面にひまわりが広がっていて、それはきれいだそうな。
敷地内にもひまわりはたくさん植えられていて、元々観賞用として花壇に植えられていたものと、もとより食料用として畑やミツバチの巣の近くに植えられていたものをまとめて圧搾している。
「そのまま食べてもいいんですが、油にすれば料理に使えますし、古くなればランプに使えます」
水車小屋の中は雑然としていて、様々なものが適当な位置に置かれている。狭い空間ではあるが、水車によって持ち上げられた水の音、圧搾機が軋む音、カタカタと回る水車の音。静かな林の中にふさわしい空間である。
その中で作られた油はフィリー達の食事に使われているのだろう。こうして歩かなければ知りもしなかったことだ。自分たちが食べているものがどこから来たものなのか、どのような経緯で作られたものなのか、それが人々の生活にどのように関わっていくものなのか。
そういったところを知っていくこと。領主として大切なのかもしれない。そうフィリーは感じたのだった。
ちなみにリーリャは従者として後ろから2人のやりとりを見守っていたが、麻袋に入っていたひまわりの種が気になるらしい。というのも、ひまわりの種はリーリャの大好きなおやつの一つだ。
子供達は、庭の花壇でひまわりの種を大切に育てている。花壇には種類豊富な草木が植えられていて、ひまわりはその中のメイン。
大事に育て上げたひまわりの種は、来年用に一部を残しておいて、そのほかはすべて子供達のおやつとなる。油分を豊富に含んだ種は、栄養満点で育ち盛りの子供達にとってちょうどいいおやつだ。
リーリャは昔から代謝がいい。代謝が良すぎる。本人曰く「燃費が悪い」そうで、しょっちゅうおやつを食べている。100%自然物のひまわりの種は、食べた後その殻を地面に捨てておけば勝手に土に帰ってくれる。
いろいろと便利なものだ。




