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猫獣人の元聖女、辺境で孤児を鍛えます。  作者: べちてん


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第30話 レネットとエルビア、魔法を使ってみる

「今日はいろいろ持ってきたニャ」


 翌日、聖魔法の適性があるということは念頭に置きつつも、とりあえず修道院に入れるという方向性は一度回避するということでリーリャの考えはまとまった。必要なら聖魔法は教える。しかし、それをメインにはさせない。ということだ。


「すごい荷物ですね」

「そうニャね。今日はみんなにいろいろ使ってもらうニャ」


 馬に付けられた荷車に乗せられていたのはとにかくたくさんの道具。それを引いてきた馬は馬小屋に入って牧草をもぐもぐしている。


「これはなんだ? かかしか?」

「違うニャ。それは藁人形ニャね。魔法の的にしてもらおうかなって思って持ってきたニャ」

「魔法……」

「あっ、ご、ごめんニャ。ちゃんとフィルマ用にもいろいろ持ってきたニャから」


 魔法という言葉を聞いてあからさまにしょんぼりした表情になってしまったフィルマに対して、リーリャは罪悪感を抱いてしまう。昨日ミレアさんの胸の中で涙を流す彼女の姿を見ていたからだろう。


「なにか、なにかニャいかニャあ……」


 フィルマを元気づけるために荷車の中をごそごそと探していると、刃の落とされた一振りの剣が入っていた。子供達でも触れるようにと、軽い素材で作られたシンプルな剣を持ってきていたのだ。


「フィルマ、これを使って後で勝負ニャ」

「剣っ!」


 ほわぁ~、と落ち込んでいた目をキラキラさせながら剣を見ているフィルマ。機嫌取りは成功したらしく、うれしそうに玄関側に建っていたミレアさんのところまで走って行った。

 その光景を呆れたように眺めるレネットと、お構いなしにキョロキョロと辺りを見渡すエルビア。

 今日も空は晴れていて、真っ白な雲がフワフワ浮かんでいる。地面には芝生が生えていて、花壇に植えられた色とりどりの花たちはそよ風に揺られてふらふらと。




 そんな庭で子供達を集めたリーリャは、長さが20センチほどの小さな杖を取り出し、芝生に座ってあぐらをかく3人にその杖を振って見せた。


「これは杖ニャ。さて、杖はどんなときに使うでしょう」

「魔法を使うときっ」

「そうニャ」


 ふんっ、と鼻息を立てるエルビア。この杖に興味津々らしい。


「後々しっかり説明するニャけど、魔法を使うには魔力が必要ニャ。そして、その魔力がどの性質を持っているかによって、使える魔法が変わるんだニャ。ウチは聖魔法。エルビアと一緒ニャね」

「うんっ」


 リーリャは軽く杖を振りながら、ライトと呟くと、その杖の先端に真っ白い光の球が現れた。


「これは聖魔法の一番初歩的な魔法ニャ。ただの明かりニャね」

「先生、それはエルにも使える?」

「練習すれば使えるニャ」


 やったー、と喜ぶエルビアを眺めると、一呼吸置いてリーリャは話を再開する。


「レネットも魔力を持っていたニャね? でも、レネットはこの魔法はいくら練習しても使えニャい。理由はレネットの魔力は火魔法だからニャ。ウチは聖魔法は使えるけど、火魔法は使えニャい。それが属性なんだニャ」


 持ってみて、とレネットに杖を手渡す。ありがとうございます。と呟いてその杖を受け取ると、レネットはヒラヒラと杖の先の方を動かした。


「今日は2人の魔力がどれくらいあるかを確認しながら、フィルマの剣の実力を見るニャ。先に魔法からニャ」


 リーリャはバッグの中からもう一本の杖を取り出すと、それをエルビアに渡す。フィルマはまっててね、というと、じゃあこっちで見てる、といって立ち上がり、リーリャの横へとやってきた。


「じゃあ2人とも、今から2人には魔法を使ってもらうニャ」

「早速ですか?」

「そうニャ。レネットはその杖の先からろうそくの火がフワフワと出るイメージでファイヤーと言ってみてニャ」

「……えっと、もうやっていいんですか?」

「うん。やってみてニャ」


 本当にいきなり魔法を使うとは思っていなかったようで、レネットは少し困惑したような表情を見せる。確かに通常魔法を習うときはまず自身の魔力を魔力としてそのまま放出する訓練をしたり、魔力を体内で循環する訓練をしたり、ということをするのだが、今回はそれは一度スキップする。目的が魔法を上手く使うことではないからだ。


「えっと、いきます。ファイヤー」


 レネットが恐る恐るそう呟くと、杖の先から小さな炎が現れた。


「え、できちゃいました」

「杖の根元の方に魔石があるでしょ? その魔石には使用者の魔力を吸収して魔法が発動するように魔方陣が刻まれているニャ。つまり今は魔法を使っているというよりは、魔道具を使っているという状況に近いニャね」

「なるほどです。ちなみに何のためにやっているのですか?」

「魔力の総量を計るためニャね。いまから魔力を使い果たすまで、ずっとその炎を維持しててニャ」

「使い果たす……、どれくらいでしょうか」

「わからないニャ。継続時間は魔力量によるんだニャ。そしていまやっているのはその魔力量を量る簡易的な手法ニャ。ウチは魔力総量を確認する魔道具をもっていないんだニャ」


 教会の本部や冒険者ギルドに行くと、魔力総量が確認できる専用の魔道具が設置されている。それに手をかざすと魔力の量が数値として表示されるのだが、それは高価であるので個人が所有することは難しい。

 そうなった場合に使うのがこの杖だ。この杖を使って初歩的な魔法を発動、そして魔力を使い切って魔法が発動できなくなるまでの時間を計る。


「じゃあレネットはそのまま発動しててニャ」


 わかりました、という返事をきいたリーリャは、そのままエルビアの方へ向く。エルビアは早く魔法を使いたそうにこちらを眺めていて、その姿を見てリーリャは頬がゆるくなる。


「じゃあエルビア、エルビアはさっきウチが出した光の球を出すんだニャ。詠唱はライトだニャ。わかっ――」

「ライトっ! ……でたっ!!」

「にゃはは……、でたならいいニャ。そのまま出しててニャ」

「わかったっ」


いつも作品を読んでくださりありがとうございます。

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これからもどうぞよろしくお願いします。


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