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無敵の三姫  作者: 猫化猫
26/27

25.3対1

そうしてふたりを見送り、次の宝を探しに出る。

手順自体は対して差もなく他に5人ほど見つけ、そろそろ一旦戻るかと思い始めたころ。


「こんにちは。とても風が強いですね。」

「でた!ルーの分かりにくいボケ!」

「…そこは月が綺麗というべきだろ。」


正面から3人組が声をかけてきた。よく見れば同じクラスのメンバーで、先ほどからも何度か視界の端にいた。ただ、見かけるたびに避けられていたため、正面切って話しかけてくるのは予想外だった。

通訳(?)によれば僕は今、真顔でボケられたらしい。申し訳ないがツッコミの正解がわからないので一旦スルーさせてもらおう。


「…いったい何の用かな。」

「失礼。コーガリー様は先ほどから宝をいくつも見つけているように見えますが、あなた様が去った後の場所にはなぜか人のいた痕跡がありませんでした。ですので、いったいどのようにして、宝を隠しているのか気になりお話を伺いに参ったしだいです。」


よく考えれば現状、僕が行く先々で人が忽然と消えているように見えるのか。しかしこちらも簡単に答えてやる義理はない。適当に返そう。


「それが、僕もさっきから目星をつけて探しているんだが、なぜか一人も見つからなくて困っていたんだ。そのせいで今のところ、1つも印を手に入れられてない。疑うなら、身体検査してくれたってかまわない。」


試しに両手を横に広げ、何も持っていませんアピールをしてしらばっくれてみる。これでうまく言い逃れて、さっさと2人のところへ帰れると嬉しいんだが。


「…嘘ですね。」


残念ながら、現実はそう甘くなかったようだ。


「なぜそう思ったのか聞いても?」

「いやぁーはは、詳しくは言えないっすけど、ルーの特技っす。ってことでー、申し訳ないっすけど、ユウリサン。とっとと俺らに宝を渡しやがれくださいっ!」


言い終わると同時に、一人が目にも止まらぬスピードで突っ込んでくる。殆ど見えなかったが、なんとか勘でタイミングをつかみ、接触してきた相手を素早く片手で捕まえる。そのまま離さず、片腕を持ち上げ宙づり状態に。多少暴れられるが、無防備になった所へ鳩尾に膝蹴りを食らわせる。かなり強めに入ったが、念のためもう一発入れようとしたところ、横から魔法が飛んでくるのが見えた。かなりの威力がありそうだ。さすがにあれは喰らいたくないなと思い、持っていた男を右横に全力で投げ捨ててから回避する。

回避の着地を狙って槍が突き上げられ、あわや串刺しになりかける。思わず右手で槍をつかみ、押し返すことで勢いを殺す。槍をつかんだことにより空中でバランスが取れたのもあり、そのまま相手の顔面にドロップキックを入れておく。


よく見れば、先ほど投げ捨てた男は今にも崖から落ちそうな位置に落ちたようだ。意識が無いのか起きる気配も無く、いつ突風にあおられて落ちてしまってもおかしくない状態だ。

相手の命の危機を感じて、流石にやりすぎたかなと反省していると、視界ギリギリから連続で魔法が飛んでくる。そのどれもが高威力でさすがに走って避けるが、かなり邪魔くさい。それに加え、先ほどから詠唱が全く聞こえないので、完全に無詠唱で魔法を使っているようだ。しかも先ほどドロップキックを入れたはずの槍使いがもう復活しており、魔法使いを庇うように攻撃を入れてくる。


この状況、一見打つ手なしの膠着状態に見えるが、実はそうでもない。


突破口は魔法使いにある。マイも無詠唱で魔法は使えるそうだが、無詠唱の良いところは早く魔法が打てることと相手に攻撃を予測させないこと。しかし、時に悪いところとして、仲間との連携が取りにくくなる。なのでマイは基本、チーム戦の時は簡単にでも詠唱をするのだそうだ。


つまり。


「—―がっ?!」


魔法の軌道を予測して、もう一人の槍使いに当ててしまえばいい。完全に当たったわけではないが、予想外のダメージに隙を見せた槍使いの腹めがけて、鞘に納めた状態の剣でフルスイングする。…一応、今度は崖とは反対側に飛ばしてある。

そのまま素早く方向転換し、味方を攻撃(フレンドリーファイア)して動揺している魔法使いに素早く近づき、首の後ろをトンと叩いて気絶させる。


「よし。こんなものか。」


一応、倒したメンバーが印を持っていないかチェックしてから戻るか。今倒したばかりの魔法使いの女性の荷物を探り、次は最初に攻撃を仕掛けてきた斥候らしき男を見に行こう。と振り向くと、そこにいたはずの斥候役がいなくなっていた。


いったいどこに…?


「どこへ、——っ?!」


背後からわずかに揺らぎを感じ、即座に前方へ大きく跳ぶ。跳びつつ後ろを見れば、確実に意識を落としたはずの斥候役が、短剣を振り抜いていた。


「ははっ!今の避けるんすね。さっすがユウリサン。噂に違わぬバケモノっぷりっすねー。」


どっちが、と言いたくなる。かなり強めに膝蹴りを入れておいたつもりなんだが、あの細身でどうしてピンピンしているのか不思議でならない。…それに、槍使いも起きてきたな。向こうに関しては、気絶したかどうかの確認をしていうえ、体格もいいので起きてきても驚きはしないが。どちらにせよ、問題はこっちだな。


「よっ、と。これも当たんないんすかー。ちょっと勘弁してもらっても?」

「勘弁してほしいのはこっちも同じだなっ!」


先ほどから、攻撃し、避けのお互いの攻撃が当たらない攻防を繰り広げている。そのうえ、視界の端では魔法使いを起こそうとしている槍使いが見え、時折斬撃をとばしたりして、妨害を入れている。無駄なように見える彼の行動だが、実は最適解をとっている。基本的に僕ら前衛は魔法による攻撃、妨害に弱い。なので今、僕からしたら彼女に起きられることはできるだけ避けたい。


…もうこれ以上真面目に相手しても不毛なだけか。あまり使いたくは無かったが、仕方がない。いい加減、マイとシロナの様子も気になるしな。

攻防の中に、一瞬の隙を見つけ、相手と充分な距離をとる。相手は、訝しんだ顔をして、攻撃を仕掛けるか否か悩んでいる。


―――それが命取りになるとも知らずに。


「魔力よ集え、我の速さとなれ。〖強化魔法・速度強化〗」

「やべ!強化魔っ――!」


魔法がかかったと同時に、相手に再接近する。体感だが、これでようやく相手と同じ速度になった。素でその速さとか、どれだけ速いんだよとつっこみたくなる。ただ、先ほどまで、強化魔法なしでも実力が拮抗していた。…ということは。


「ちょ、タンマタンm?!——ちょと!————まじで!——むrっ?!」


連続で何度も攻撃をいれ、仕上げに鳩尾にめり込ませるように深く深くこぶしを入れる。今度こそ気絶させるように、強く。

しかし、それでも相手は倒れなかった。あまりのしぶとさにいっそのこと崖に落とした方が楽なのでは?とも思ったが、流石にそれは危険すぎるかと思いなおす。

なぜなのか、その後も相手は何度殴られても、なかなか意識を落とさない。仕方がないので、とりあえずいい加減起きてきそうな魔法使いと槍使いを巻き添えにする形で攻撃を仕掛け、先にあちらをダウンさせておく。

いい加減、ここに時間を割くのはもったいないと思い始めたため、今まで収めていた剣を抜くことを決心する。ついでに一瞬で終わらせるように、居合を仕掛ける。


「こっ!降参するっす!!降参!だからちょっと止まってくださ…ヒュッ。」

「…少しでも動いたら、斬るぞ。」


居合をするために踏み出したと同時に相手が降参してきた。何とかぎりぎりで剣を止めることに成功したが、口先だけの降参を信じられるほど単純ではない。よって剣はそのまま首筋に添えておく。強化魔法はとっくの昔に切れている。魔法は得意ではないのであまり連発できないし、詠唱も必要となる。もし、ここで逃げ出しでもされたら目も当てられない。


「いや、ほんと、もう蹴ったり殴られたりしすぎて立てないんすよ!」

「にしては元気だな。」


立てないという割には、大声で叫ぶ相手に怪訝な顔をして見せると、慌てたように弁明してくる。


「ち、ちが、あーもう!俺、痛覚を感じなくする能力持ちなんですよ。なんで、どんな攻撃食らっても、体の限界を迎えるまでは戦っていられるんす。」

「…その限界が来たと?」

「そう!そうなんです!!信じてくださいよー。今能力切ったらあまりの痛さに気絶する自信があるんで、できたら信じてほしいっす。…痛いのは嫌なんで。」


もう少しごまかしても良かったのではと思うほど、潔く今回のトリックについて教えてくれた。相手の表情見るに、嘘ではないんだろうが、だからと言って放置するのは危険だろう。この手の広いフィールドで斥候を野放しにするのは自殺行為と同じだ。だが、既に攻撃の意思を持っていない相手に、能力を解け…つまり気絶しろと言うのは、いかんせん可哀そうではある。


「あー、じゃあしょうがないんで、離脱用の魔法石使うのでどうっすか?」

「…いや、僕は嬉しいけど、後でチームメイトに怒られないかそれ。」

「怒られるっすねー。特にルーには後でフルボッコにされるなぁ。」


ただ、現状それ以外に解決策も妥協案も無いわけで、そうしてもらわざるを得ない。多少の申し訳なさはあるが、結局、彼に魔法石を使ってもらうことにした。他二人はそのまま置いていくのかと思ったが、彼は二人の魔法石を先に起動して、広場に送っている。


「なぜその二人も送ってるか聞いても?」

「…あんた絶対、後で二人を担いで広場に投げ捨てるっすよね?ならもう、今のうちに安全に、魔法で運んどいたほうがいいかと思っただけなんで。」

「…よく分かったな。」

「へへっ。これでもそこそこ優等生だったんで。」


完全に行動を予測されていた。戦闘中も思ったが、彼は相手の考えを読むのが得意なようだ。…考え、というよりは次来そうな攻撃の予測が高確率で当たるのだろうな。

無事に3人とも魔法で移動したのを見届け、僕は急いで西エリアに向けて走り出した。


「…流石に時間を使いすぎたな。」


2人が無事だと良いんだが…。



――試験終了まで残り:1時間48分

いつもありがとうございます。

投稿が大きく空いてしまい申し訳ない…。来週か再来週ぐらいにはまた更新頻度が上がると思いますのでのんびりとお付き合いいただければ幸いです。


3対1でも勝ててしまったユウリおそるべし。

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