24.宝と取引
生徒の保護と印をふたりに任し、僕は一人で北側に走り出す。
北に向かった理由は単純で、事前に調べたときに他のライバルチームの数が少なかったからだ。生徒——だと混ざるな。便宜上宝と呼ぶか――北にいる宝の数はそこまで多くないようだが、だからこその狙い目だということでこちらにやってきた。
現場について周囲を見渡してみるが、学院生以外の気配を感じない。軽く周辺を見て回ったりもしたが宝は簡単には見つからない。他チームを遠目に見た時も印を持っている様子がなかったので、ここにいる宝はうまいこと隠れているようだ。
ということで、少し探し方を変えてみる。
自身の気配を極限まで薄くし、周囲の微弱な違和感を探す。そもそもここは風が強く、気配を探すことが難しい地形のため物陰に身を潜めるのにはうってつけの場所だ。普通に探したのでは簡単に見つかりはしないだろう。しかし、案外こういった場所は隠れられる場所が限られていて……。
「こういうとこに…いたりするんだよな。」
「うわぁ?!」
「だ、誰だ!!」
このように死角となる横穴に溜まっていることが多い。ここにいたのは2人。気配を消して近づいたせいでかなり驚かしてしまったが、気配を悟られると逃げられる可能性が高かったので許してほしい。
「やあ。お二人さん。どうか僕の話を聞いてくれないかな?」
これ以上警戒心を与えないように微笑み、極めて柔らかい声音で話しかける。イメージは御伽噺のに出てくるような王子様で。しかしなぜか余計に相手の警戒心が強まったような気がする。いったい何がいけなかったのか。
「は、話ってなんだ…、ですか。」
「僕は単に、君たちと取引をしたいだけなんだ。」
「とりひき?」
警戒しつつも、敬語を使わなければならないと思い直したのか、付け足したような敬語で言い直している。
先ほどの3人もそうだったが、この2人も僕が貴族であることは分かるがどこの家の人間か分からないようだ。まぁ分からないように小細工をしているし、僕が公爵家の人間だと分かると更に緊張させてしまうだろうからちょうどいい。
「そう、取引。僕たちは君たちの安全を保障する代わりに、君たちの持つ印を僕らに渡してほしい。」
「そう言われて、はいそうですかと言えるほど俺たちは間抜けじゃないです。」
ここまでは想定内。簡単に渡されてもそれはそれで困る。
「…それもそうだね。なら、こうしよう。ここから僕の仲間が作った安全地まで印を持ったままでいい。道中、君たちを認識できなくなる魔法もかけよう。けれど、無事にそこにたどり着くことができたら僕らに印を渡してもらう。なかなかの好条件だと思わないかい?」
今回の取引内容は、事前に3人で考えていた話だ。これで頷かれなければ、試験終了まで寝ていてもらわないといけない。そのうえ、一度この2人を安全地まで自らの手で連れて行かなければならない手間がかかる。なので、できることならこれで頷いてもらいたい。…もし駄目だったとしてもすぐに制圧できるけどな。
2人はじっくり数秒悩んだ後、ふたりでコソコソと話し合ったのちにこちらを向きなおる。答えが出たようだ。
「取引に応じます。」
「よろしく、お願いします?」
「よし。取引成立だね。2人にこれを渡そう。」
それぞれの手にマイお手製、認識阻害の魔法を施した紙を渡す。これ1枚で大体30分は周囲から認識されなくなるらしい。唯一魔法を掛けたマイ本人には普通に見えるらしいので、30分以内に目的地にたどり着けば良いだけの簡単なお仕事だ。
さらに道案内は、認識阻害のとは別に、人型の紙がある。それに魔力を込めればマイのもとにたどり着けるようになっているらしい。一体取り出して、渡しておく。
今回、出発前にこのセットを大量に持たされている。紙なので大してかさばらないが「絶対に折るな」と厳命されているので、実はかなり気を使って行動していたりする。
こんな感じで、こちら側はかなり順調な滑り出しを迎えた。
――試験終了まで残り:2時間30分
いつもありがとうございます。
最近投稿ペースが遅くなりがちですが、純粋にリアルが忙しいだけなんでゆっくりお待ちください。
次回はユウリが無双する…かも?




