26.籠城班と来客 マイside
久々マイ目線。あと4話ぐらいマイ視点で進みます。
あーテステス。こちら籠城班(?)のマイでーす。えー、現在順調にユウリが印持ちの生徒たちを連れてきてくれたおかげで、現在私たちの印の合計は10個。やったね!なかなかいい方なんじゃない?なんてお気楽に構えていたら、お客さんがいらっしゃいました。A組の4人チーム。…たしか、なかなかに脳筋の割合が高かったチームだと記憶していたんだけど…あ、脳筋って言ったら怒られるんだっけ?えと、友達曰く物理攻撃主体のチームなんだよね!
…って、あー!おやめくださいお客様~。そんなに力ずくで叩いても、10分かけて作った会心の出来の魔法陣の中には入れませんよ~。どうぞもっと魔法に精通した人を連れてくるか、諦めるかしてくださいね~。
と心の中で相手チームを煽っていると、一旦周囲を覆う膜を叩くのをやめたみたい。籠城用の魔法陣は、床にめいっぱい書くんだけど、その上に結界とよく似た魔法の膜が現れる。結界と大きく違うのは、こっちは大人数を守るのに向いてるってとこかな。
ここは、西側の中でも北寄りにあるちょっとした崖を利用して、魔法陣を敷いている。つまり入ってこられるのは南側からだけってこと。それに、魔法陣自体も割と本気出して作ったから魔法が得意な人相手でも、数分は持つようになってるはず。…多分。唯一の懸念点は、相手の中にユウリ並みの怪力馬鹿がいたとき。その時は、内側から補修をかけ続けないとさすがに持たなくなるんだよね〜。
因みにシロナは魔法陣の完成と同時に弓を片手にどこかへ行ってしまったよ……いやなんで?!
曰く、すぐに駆け付けられるところにはいるらしいから、ヤバい時は助けてーシロナ様ー!ってすればいいっぽいけど、ほんとにそろそろ帰ってきてくれてもいいと思うんだよね~?
陣の中にいる学園の生徒さんたちとは結構仲良くなったけど、さっきのA組の人たちのせいで、かなり不安がってる。だから安心させようと、テンションMAXで話しかけ続けて、ここの安全性を熱弁中。
なんとか空気はほぐれたけど、やっぱり根本的に、あの人たちどうにかしないといけないよね~。
そう思って、未だに目の前で立ちすくんでいる4人組に目を向ける。どうしようかと考えあぐねていると、バン!と一際大きな音が鳴る。嫌な予感がして恐る恐る音の発生源を見てみると、膜に向かって4人全員が集中攻撃を仕掛けてきていた。
しかも、膜にはうっすらとひびが入っている。
「あーーーーー。…ね?」
慌てて魔法陣に魔力を流す。一応自己補修の式も組み込んであるけど、あんなの何回も喰らったら、それだけじゃ間に合わないでしょ。
1人1人がそこそこの力を持ってるから、合わせたら膜を破れるだけの力を出せるっていう考え方なんだろうけど、脳筋過ぎるよ?!確かにさ、魔法陣とか結界とかの一番シンプルな壊し方は、高火力な物理攻撃の1撃って言われるけどね?それにしても力業すぎるよ!
バン!ガン!ドガン!!
「キャーーー!!!!」
「なあ、ほんとに壊れないんだよな?!?!」
…あのさ、「一発で壊れない?なら壊れるまで叩けば良いじゃない!」じゃないんだよな〜。この膜、決してサンドバッグじゃないよ?え、知ってるって?…知ってるならやめてほしい。今すぐに。見てよこのみんなの取り乱しよう。ちょっとは罪悪感が湧いたりしない?
「あ、あの。これ、大丈夫なんですか?」
「ん?今の所は大丈夫だよ〜。このスピード感ならよゆーよゆー。」
この中で1番懐いてきた男子が不安そうに聞いてきたから、安心させるように答えとく。嘘は言ってないよ。このスピードなら、ほんとに大丈夫。けど、これ以上スピード上げられるとちょっと苦しいかもなんだよな。
…え?そういうのフラグって言うって?まさかぁ〜。4人で同じタイミングに攻撃するのって結構難しいんだよ?まだまだ6月入ったばっかりだし、たとえもう少しスピードが上がったとしてもこっちの修復力の方が上でしょ。
ガ!ゴ!ドゴッ、ガ!ガリッ
「……え?人間辞めた???」
―――うん。相手を舐め腐ってた時期が私にもありました。もはや、あまりの速さにボケるべきか、ツッコむべきか一瞬悩んじゃったね!というか、破壊音が怖いよ?最後のガリって何?ガリッて。
現在の相手の破壊スピードとこちらの修復スピードは同じぐらい。ヒビが入っては直し、破片が飛んでは直し。延々とその応酬を続けている。
早く体力尽きろ!と思ってるけど、多分相手も、早く魔力尽きろ!って思ってるんだろうな。我慢比べたって苦手なんだよね〜。どうしても飽きてきちゃうし、集中力がね~。それに、結界内の不安感も最高潮だし…もういっか。
「シロナぁー!ヘルプッ!!一人でいいから落としてぇぇ!!!」
恥も外聞も投げ捨てて全力で叫び倒してみるテスト。届いたかな~って少しの恥ずかしさを濁すように考えてたら、森の奥から一瞬光が見えた。
トス。と軽い音とは裏腹に、4人組のうちの1人の胸に、深々と魔法の矢が突き刺さっている。背中から刺さったそれは腹の方まで貫通していて、見ているだけで痛そうなのが伝わってくる。
殺さないでねってオーダー出すべきだったかな?と思いつつ、相手の攻撃が止んだ瞬間に魔力回復ポーションを煽っておく。別に魔力がピンチだった訳では無いけど、念のため。
「ああっ?!」
「ん、え、なに?」
魔法陣内の誰かが悲鳴のような声を出したから慌てて周囲を見ると、シロナがハンマーを持った男に殴られ、思わずホームラーン!と言いたくなるような完璧な軌道で飛んでいった。シロナは軽いからか結構遠くまで飛んだみたいで、遠くの方で木か何かにぶつかった音が聞こえた。
あの図体でシロナの近くまで走っていけたんだ。思ったより俊敏な動きするんだろうな~。ぱっと見、受け身は取れてそうだったけどあれは痛いよね~。多分。
「わー。痛そ〜。」
「いや、心配しなくて良いんですか?」
「…いる?あの子に心配。」
「えぇ…。」
思わず感想をこぼしたら女の子にドン引きされたんだけど…。本当にシロナなら絶対ケロッとした顔で帰ってくるんだって。本人、痛みに対して反応薄いし、回復魔法使えるし心配する必要性を感じないだけなんだよ~。
個人的にはそこの胸に矢を貫通させた人。あの人の方が心配。もう魔法石早く使いな?って思う。
「あのー、そこの矢貫通してるおにーさん。魔法石使う予定とか無い〜?それ――」
「はっ、余計なお世話だ。」
うん。心配になって話しかけたは良いものの、敵意剥き出し。ハンマーの人はシロナを追いかけに行ったけど、残りの人たちも殺意むき出しでこっちを睨みつけてくる。…人の話は最後まで聞けって、小学校で習わなかったのかな?あぁいや、家庭教師が雇えるところは小中学校には行かなくても良いんだっけ。
「はーい。無いですね〜分かります。ただその矢、殺傷能力に優れた狩用の魔法矢なんだよね〜。」
「は?」
「なので早めに離脱して適切な手当を受けないと、普通に死ぬからね〜?」
「「えっ。」」
…おっと。今、私の後方からも疑問の声が聞こえたな。前方3人はフリーズして、しばらく復活しそうにもないので、とりあえず後ろを向く。想像通り、後ろには顔色を悪くした生徒が信じられないものを見たと言わんばかりの顔で、こちらを見てくる。めんどくさいことになったかも?
「し、死ぬんですか…?」
「うん。このまま放置してたらね?ちゃーんと、適切な処置を施したら大丈夫だよ〜。」
産まれたての子鹿並みに震えている彼らを安心させるように、努めて明るく、丁寧に説明する。学園生からしたら、安易に死ぬとか言ったらびっくりするのも当たり前だよね〜。まあ、それは学院生でも同じか。
「マイさんはその、処置はできるんですか?」
「え、もちろん出来るけど…。」
え、マイちゃんすっごく嫌な予感。
「じゃあ、助けてあげたら…」
はいやっぱりね〜。さぞ優しき世界で育ってきたんだろうなぁ。…いや、良いことなんだけどね?
「それはね〜無理かな。」
「え…、なんで…?」
「確かに、シロナを事前に止めれなかった私の落ち度でもあるけど、今私は彼らに、ちゃんと死ぬ可能性を提示してあげてる。それでも強行突破するつもりなら、それは自己責任。死んじゃっても文句言えないよね〜って話。」
これ以上にガーンという効果音が似合う顔はないだろうな。と思うぐらいショックを受けた顔をしている。私悪かった?…悪かったか。でもさぁ、よく考えて欲しいんだよね〜。
「……それに、見てよあれ。矢が刺さってるのにピンピンしてる。今招き入れたら、私どころか、君たちの安全だって危ないんだよ〜?」
そう。シロナの魔法矢を受けてもなお、立って会話できるレベルに元気なんだよな、あいつ。どう考えても今入れるのは危なすぎる。そう訴えると、すごくしょんぼりとして俯いてしまう。
え、ごめんじゃん。違う違う。意地悪したい訳じゃ無いんだよ?でもさ、これ試験なんだよ。みんな血眼になって競い合う危険なものなんだよ〜。なんて、言ったところで心の整理がつくまでは何を言っても無駄なんだろうな〜。
「…はぁ。で、おにーさん。どうするの〜?死ぬ?帰る?」
「俺は…。」
はい、こっちはこっちで長引きそう。
ん?なにか視界をよこぎっt…
…あ。
「ぎゃっ」
「クハッ」
「ゴフッ」
えー、突然目の前の人たちが悲鳴上げて全員倒れた件について。
「…ま、いいか。おかえり、ユウリ。」
「ただいま。」
――試験終了まで残り:1時間40分
いつもありがとうございます。
6月は比較的暇…だと思いたいので、書き溜めも書きながら投稿していこうと思います。
マイ視点で書くと全体の文字数がとっても増える不思議。
次回、「戦闘って見る方が楽しいよね!」(マイ談)です。




