13.5.試験後
今回はマイ視点です。
読んでも読まなくても多分大丈夫。
演習の結果と裏話が知りたければ読んでください。
昨日の演習が終わって、疲労困憊で寮に戻り、今日は朝から通常授業。…酷くない?私昨日、代表にならなかったのにヘトヘトだったんだけど。ユウリなんてとんでもない運動量をこなしてたのに今朝にはもうピンピンしてたのおかしいと思うんだよね。
そんなこんなでぐでーっと机に突っ伏してゔゔーっと唸っていると隣から声をかけられた。
「マーイ。あんた、獣じゃないんだから唸るのはやめな?私と違って仮にも貴族の令嬢でしょうに。」
「だってぇ。昨日は脳がオーバーヒートしそうなぐらい魔法使ったからぁ。」
あれは無理。と言うと彼女は怪訝な顔をしてくる。
「えー?浮遊魔法を連続10時間は飛べるっていうあんたが?」
「あれはコツを掴むのが大変なだけでできるようになったら長時間できるものだし。」
「無理。魔術が得意な訳じゃないけど、長くても精々30分が限界。そもそも上級魔法でも複数展開を平然とした顔でこなすでしょあんた。」
「基礎だけね〜?」
「上級って知ってる?普通の感覚なら上級は基礎ではないから。冗談も休み休み言いな。」
貶されているようなテンションなのに、なんかすっごい褒められるな?と思ってさすがに質問する。
「さっきからどうした?」
「いや、信じられないなと思って。あんた、運動は全くもってダメだけど、魔法においてはどこまでも際限なく使うでしょ?」
「まって、際限はあるよ?!」
「え、あったの?」
心からびっくりしてます!みたいな顔されてもびっくりしたのはこっちの方なんだけど。え、私化け物か何かだと思われてる?
「試験の時も高位魔法バンバン使ってるから、噂通り魔法に関しては無限なのかと思ってた。」
「あれは短時間だったからね?噂に踊らされないで?私人間だから。そんなエルフみたいなことできないから。しかも魔力は置いておいても集中力っていうのがあってね?」
「ほら魔力は楽勝なんじゃん。」
「例え話ってご存じ??」
わーわーと言い合うこの相手は私の元チームメンバーの1人。チームだったのはたった3日しか無かったけど、席が隣なこともあって今もかなり仲がいい。他のメンバーの2人は遠目に見てくるだけで仲は良くも悪くもない。クラスメイトとも仲良くできてると思う。多分。
そんな風に戯れるように話していると担任がやってきた。
「みなさん、お待たせしました〜。ホームルームを始めていきますね〜。」
そう言って先生はいくつかの連絡事項を話してから昨日のことについて触れる。
「ではでは昨日の結果についてですが〜。あくまでも演習でしたので、タイムは出しますが、特段順位は出ませんよ〜。ちなみにこの“測定不能”と言うのは、訓練が続行不可能と判断されて救出された人たちですね〜。例えばぁ、鉄球が頭にぶつかってしまったり、奈落へ落ちてしまったり。1番怪我が酷かった子は罠ゾーンで爆発罠を踏んでしまった子でしたね〜。」
もう保健室で回復は終わっていますよ〜。と軽く言っていたけれど、上から見た限りではかなり高威力の爆発だったように感じたような…。
ユウリが殺意が高いってぼやいていたけれど、本当に殺す気で作っているとしか思えないコースだったんだな。脱落内容に思わずにうわぁとなる。ちなみにタイムは1番乗りだっただけあって全体で見てもかなり好タイムだった。ユウリはスタートの時点で頭抜きんでて速かったし。ほとんどの障害物はユウリの異次元な身体能力とシロナのあの見づらい遠距離からとは思えない、適切で端的な指示でスイスイだったし。最後あれ多分ギミック的なのがあったんだろうけど、ごり押したのとで2位とはそこそこの差がついていた。
…あー、いや。最後ユウリが一太刀で足だけ切り落とした魔獣が後続の障害物と化してたのもタイム差に一役買ってるかも。
クラスの友達たちと話し合った結果、最後のあれは1度踏んだら致命傷になり得る罠の中に踏んでも大したことのないネタのような罠があって、それを見分けながら進むものだったのでは?という結論に落ち着いた。聞けば、バナナの皮が落ちてくる罠もあったらしい。どこの漫才ですか…?
ちなみに魔法でごり押した話をしたらドン引きされた。元メンバーにも「そりゃ疲れるわ」と哀れみの視線をいただいた。…解せない。
それから昼食どきに学食に向かっているとき。
「ねえ聞きまして?昨日のユウリ様について。」
ユウリ、という名前におもわず聞き耳を立ててみる。…というかこの学院、貴族らしい子もいるんだなぁ。…侯爵家の子かな?
「ええ!私はこの目でしかと見ていましたわ!」
「それは羨ましい、私ももっと注意してみていれば、ご雄姿を見られたというのに…。」
ご雄姿…。いや確かにアクロバティックに動き回るユウリはカッコよかったと思うけどね?
「やはり公爵の家の出ともなると溢れ出る高貴さが違いますわよね。」
「えぇ、本当に。…あぁ、本当に惜しいことをしましたわ。」
思わず吹き出しそうになった。ユウリ、確かにかっこいいとは思うけど、学院にあんなに熱烈なファンがいたとは。結構神聖化されてたなぁ。
…そのうちファンクラブでもできそうな勢いだったよなぁと怖い想像をしてしまった。
放課後、寮に帰ってユウリと部屋で会った時、思わずじーっと見つめてしまう。
髪は紺青色のそこそこ長い髪を毎朝ポニーテールの位置に結い上げている。瞳は切れ長で吸い込まれそうなほど綺麗な深い赤色。黙っていれば男性に見えないこともない恵まれた体格。さらに運動神経抜群でそこらの騎士よりも強く、かっこいい。家柄も公爵家で、さらに人望もある、、、うん。確かにファンがいてもおかしくないよなぁと眺める。
そういえばシロナも綺麗だよねーと思考が脱線気味になる。あまりの綺麗さと無表情さに初めて見たときはユウリの連れてる機械人形か何かだと思ったんだよね。
「…なんだよ。」
流石に眺めすぎたようで、ユウリから暗にやめろと言われてしまう。やめないけど。しれっと話を振って、眺め続けても問題ないようにする。
「いや、ユウリ。多分そのうちファンクラブできると思うよ?」
「ファンクラブ?いきなりなんだ?」
「…。……なんとなく?まあ気にしなくて大丈夫。害はないと思うよ。…多分。」
「多分って…。」
ユウリもたいへんだねーと他人事のように揶揄ったが、私はまだ知らなかった。やがてそのファンクラブがめちゃくちゃ大きくなって、私もそれに巻き込まれることになることを。
いつもありがとうございます。
マイ視点はもうしばらくは出て来ません。
次回からまたユウリ視点にてお送りいたします。




